資本金は会社設立のために必要な資金であり、かつてはこの資本金が一定額ないと会社設立が認められませんでした。資本金が少ないとそもそも設立できる会社形態が限定され、デメリットも多かったのです。
しかし、現在では資本金が少ない場合にも会社設立ができるようになりました。かつて、会社設立の際の資本金が少ないことで制限されていたのはデメリットがあったからです。
そのデメリットは現在解消されているのでしょうか?
今回は会社設立にあたり資本金が少ないことのデメリットについて解説します。デメリットが少ないことが分かれば、資本金を少ない状態で会社設立ができるはずです。
会社設立に必須な資本金は少ない?現在の資本金制度をチェック
まず、現在、会社設立する際の最低資本金をチェックしてみます。少ないのか、多いのか。会社は株式会社、合同会社、合名会社、合資会社の4種類があり、かつて存在した「有限会社」は現在新規設立ができなくなっています。
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株式会社 |
合同会社 |
合名会社 |
合資会社 |
現在の最低資本金 |
1円以上 |
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新会社法施行前の最低資本金 |
1000万円以上 |
合同会社制度なし |
制限なし |
制限なし |
「新会社法」が施行されたのは2006年であり、それまでは会社の種類に応じて最低資本金額が決まっていました。株式会社は1000万円、有限会社は300万円、それより少ない資本金で会社設立ができなかったため、最低資本金額の多さが大きなデメリットになっていました。家族経営の会社の多くが有限会社だったのも、株式会社設立のためには必要な資本金額が大きすぎて、相対的に少ない有限会社を選ばざるを得なかったのです。
しかし、2006年の「新会社法」以降は、すべての会社が資本金1円以上、事実上資本金による制限がなくなり、少ない金額で会社設立ができるようになりました。株式会社も1000万円から1円という激変です。
これで資本金の多さによるデメリットはなくなりましたが、逆に1円会社が可能になったことによるデメリットも指摘されるようになりました。資本金が少ないことのデメリットについて次項で考えていきます。
資本金が少ないことのデメリットをチェック
まず、資本金が少ないことのデメリットを紹介します。会社自体は資本金1円から設立できますが、やはり資本金が少ないことで被るデメリットというものを意識しないといけません。
デメリット1 取引先や金融機関の評価が低くなりがち
資本金が少ないと、「この会社は余剰資金が少ないのか」「しっかり準備して事業開始していないのか」「経営が厳しいから減資(資本金を減らす)したのか」と疑われやすくなります。
実際そうでない場合でも、資本金が少ないと、あまり会社にお金がない、利益が上がっていないと思われてしまいます。
金融機関の融資判断の際にも、資本金が少ない=借入によらない余剰資金が少ないということで、審査は厳しくなります。最悪の場合、資本金から返済に充ててもらうわけですが、その余力は資本金が少ない場合、ないことになってしまいます。これはデメリットになります。
デメリット2 債務超過に陥りやすい
資本金が少ないと、債務超過になりやすいデメリットがあります。
債務超過とは「負債>資産+資本(総資産)」の状態です。資本金は「資本(総資産)」に含まれるので、資本金が少ないと、「資産+資本(総資産)」の絶対値が小さくなり、貸借対照表で債務超過状態に陥りやすくなります。
債務超過は会社の倒産の危険があるサインで、経営をするうえで、とてつもないデメリットになります。金融機関から融資を受ける際、債務超過だと判断されれば審査はおりません(だって返済する余力がないのですから)。
それ以外にも各種補助金の申請時にも不利になりますし、クライアントが決算公告を見れば、債務超過状態にある、近いことがわかり、取引を打ち切られるかもしれません。取引先との関係を維持する中で、債務超過は大きなデメリットであり、資本金が少ないと、そのデメリットに遭遇してしまう可能性が上がります。
緊急時の余剰資金がない
資本金は、借入金など他人資本ではなく「自己資本」と呼ばれます。借入をすると、申請→審査→許可→実行まで時間がかかりますが、資本金など自己資本はすぐに資金応需できます。
急な資金需要、取引先の倒産、事業拡大のチャンスでお金が必要、そうした緊急時に使える「遊び」として資本金が役に立ちます。資本金からそれらの資金に充当すればいいわけで、資本金が少ないとその充当資金がなく、経営上のデメリットになります。
1円会社の場合、実質資本金なし、自己資本なしですから、何かあった時に融通できる資金が存在しません。その場合、自己資金(会社ではなく自分の預金)から充当する(事業主借)しかなくなります。
会社の資金として資本金を積み立てておくことはリスクヘッジの観点からの意味があり、それが少ないとデメリットになるでしょう。
許認可業によってはある程度の資本金が必要なケースがある(少ないと許可されない)
開業する業種によっては資本金の額について最低金額が決められているケースがあります。それよりも少ない資本金では開業が認められず、許認可がおりません。
例えば、一般建設業許可には資本金500万円が必要です。それよりも少ない資本金では、建設業を開業できないことになります。
また、
また、一般労働者派遣業の開業許可際には、基準資産額(≒資本金)が2000万円以上という条件があります。基準資産額とは「資産-負債」で計算されるため、負債が0であっても資本金=資産が必要になります。
そのほか、資本金が少ないと開業できないデメリットのある許認可業は以下になります。
許認可業 | 最低資本金(これより少ない場合不許可) |
---|---|
建設業 | 500万円 |
有料職業紹介業 | 500万円 |
一般労働者派遣事業 | 2000万円 |
旅行業 | 3000万円 |
一方資本金が少ないことでメリットもある?
一方で資本金が少ないことで、デメリットではなくメリットがあるケースもあります。
税金関係が安くなる
資本金が少ないと、税金関係でメリットがあります。
簡潔に書きますが、資本金が少ないことで
消費税 |
資本金1000万円未満の場合、会社設立1期目~2期目については消費税免除になることがあります。 |
法人税 |
資本金の額が少ない(1億円以下の)場合:15%or19% |
法人住民税 |
均等割の金額が資本金(&従業員数)によって決定。資本金が少ないと安い |
登録免許税 |
法人登記の際の手数料的税。資本金が少ないと、合同会社は6万円、株式会社は15万円で一律固定。 |
資本金が少ないと、特に税制面でデメリットよりもメリットがあります。資本金が少ない=中小零細企業が多いので、彼らを国が救済する色彩が強くなっています。
会社を設立しやすく、ある程度信頼感が増す
当たり前ですが、資本金が少ないということは、会社を設立するにあたり出資を募るためのハードルが下がります。
1円会社であれば、誰からも出資を受けずに設立できますし、100万円くらいまでなら預貯金でなんとかなるでしょう。会社設立の金銭的負担を下げたのが新会社法ですので、その恩恵は何よりも設立しやすさに表れています。
個人事業主と比べて、たとえ1円会社でも「〇〇会社~」という肩書が使えれば、対外的な信用度向上にもつながります。融資などを受けにくいデメリットもありますが、一般消費者を考えると、資本金が少ない場合も、ある程度の信頼を得られそうです。
資本金が少ないのはアリ!だが適切な金額を設定しないとデメリットも多い
資本金が少ない=デメリットではありません。自宅の部屋、パソコン1台で行えるクラウドソーシング的な仕事ならば、資本金が少ない場合も、デメリットはほとんどないでしょう。
デメリットと資本金の少ない状態が関連しているかどうか、それは事業内容を精査する必要があります。適切な金額が少ない資本金ということもあります。その場合、資本金が少ないデメリットはなくなります。
ともかくご自身の事業において、適切な資本金額を算出し、それと比較して多いか少ないかを見極めてください。デメリットはそれによって多くもなり少なくもなります。
資本金が少ないのは「アリ」ですが、その金額は事業内容によって異なることを意識してください。
適切な資本金を設定しデメリットが少ない状態にするためには「経営サポートプラスアルファ」に相談しよう
資本金が少ない場合でも、2006年以降会社設立が可能になりました。以前と比べてはるかに会社設立の難易度が下がっているのは事実です。
しかし、以前の最低資本金額(300万円~1000万円)は、ある程度会社の「質」や「格」を担保する意味もありました。
1円会社ならば出資を募らなくても誰でも設立が可能です。資本金が少ないことで、対外的に、特に金融機関やクライアントから評価が下がる可能性はデメリットとして抑えておかなければなりません。
一方、一般消費者の場合、「〇〇会社」という事実が信頼感を与えます。1円会社でも個人事業主よりもましなのです。
その両者の天秤をどう考え、また経営を順調に進めるための自己資本として、資本金をどう定め、少ないか多いか、メリットとデメリットを考える必要があります。そのためには専門家のアドバイスが不可欠です。
「経営サポートプラスアルファ」には、資本金の多い少ないによるメリットとデメリットについて詳しいプロフェッショナルが揃っています。みなさんの会社の事業内容や予想する事業計画、顧客層などを総合的に考慮して、適切な資本金額を算出します。
それが少ない場合も、経営に対するデメリットはなく、機動的に事業を行うための武器にできるようアドバイスします。
「経営サポートプラスアルファ」は土日祝日、夜間も含めて対応します。
遠隔地の方は、LINEやZoomで大丈夫です。資本金の多い少ない、しれによるメリットとデメリットについて、自分だけで考えずにぜひ「経営サポートプラスアルファ」までお問い合わせください。
その方が圧倒的にデメリットを減らすことができます。