資本金は会社設立後でも、新株の発行や準備金の組み入れによって増やすことができ、増えた日から2週間以内に変更登記をします。
資本金は設立時に決めますが、事業の成長に合わせて、あとから増やす「増資」も行えます。
増資は、新たな資金調達の手段になるだけでなく、会社の信用力を高めることにもつながるでしょう。
この記事では、増資の方法と手続き、メリット・デメリットを解説します。
あわせて、資本金が1,000万円・1億円を超えるときの税金の注意点や、資本金を減らす減資も紹介します。
1. 資本金を増やす目的
資本金をあとから増やすことには、いくつかの重要な目的があります。
これらを明確にすることで、適切なタイミングと方法を選ぶことができます。
1-1. 資金調達のため
増資は、会社が成長するための資金を調達する手段の一つです。
特に、新たなプロジェクトを開始したり、大規模な設備投資を行ったりする際に、増資によって資金を確保することが一般的です。
1-2. 会社の信用力向上
資本金の額は、取引先や金融機関からの信用を得るための重要な指標となります。
資本金を増やすことで、会社の信用力が向上し、より大規模な取引や融資を受けやすくなります。
1-3. 資本構成の調整
会社の株主構成や資本構成を見直すためにも増資が行われます。
新たな投資家を迎え入れる際や、既存株主との比率を調整する際に増資が活用されます。
2. 資本金を増やす方法
資本金をあとから増やすには、いくつかの方法があります。
それぞれの方法には特徴があり、会社の状況や目的に応じて最適な方法を選択することが重要です。
2-1. 株式の発行による増資
新たに株式を発行し、その代金を資本金に充てる方法です。
これは最も一般的な増資方法であり、以下の2つのタイプに分かれます。
2-1-1. 公募増資
不特定多数の投資家に対して新株を発行する方法です。
株式市場に上場している企業が主に利用します。
2-1-2. 第三者割当増資
特定の第三者(投資家や取引先など)に対して株式を発行する方法です。
新たな資本提携や業務提携の一環として行われることが多いです。
2-2. 株主割当増資
既存の株主に対して、持ち株比率に応じて新たな株式を割り当てる方法です。
既存株主の全員が持ち株比率どおりに引き受けて払い込めば、持ち株比率は変わりません。
2-3. 資本準備金からの資本金への振替
資本準備金を資本金に振り替えて、資本金を増やす方法です。
外部からの払込みはなく、帳簿上の振替だけで行います。
株主総会の普通決議で行えます。
2-4. 剰余金を資本金に組み入れる
会社にたまった利益などの剰余金を、資本金に組み入れて増やす方法もあります(会社法第450条)。
株主総会の普通決議で、組み入れる額と効力が生じる日を決めます。
新たな払込みはないため、会社の手元のお金は増えない点に注意しましょう。
3. 増資の手続き
増資を行うには、会社法に基づいた手続きを進める必要があります。
以下は、一般的な増資手続きの流れです。
3-1. 株主総会での決議
非公開会社の増資は、原則として株主総会の特別決議で決めます。
公開会社は、原則として取締役会の決議で決めます。
ただし、特に有利な価格で発行する(有利発行)場合は、株主総会の特別決議が必要です。
株主割当なら、定款の定めで取締役などが決めることも可能です。
議案として増資の目的や方法、発行する株式数などを説明し、株主の承認を得ます。
(出典:e-Gov法令検索「会社法」第199条・第201条)
3-2. 新株の発行と払込
新株を発行し、株式引受人が代金を払い込みます。
払い込まれた金額は、原則として全額を資本金に計上します。
ただし、2分の1までは資本準備金にすることも可能です。
3-3. 法務局への登記申請
増資の効力が生じてから2週間以内に、法務局で変更登記を申請します。
登録免許税は、増えた資本金の0.7%(最低3万円)です。
増資の効力は登記の日ではなく、払込期日(期間を定めた場合は払込みの日)に生じます。
3-4. 関係機関への届出
税務署や市区町村役場などの関係機関に対して、増資後の資本金額を届け出ます。
4. 資本金を増やすメリット
増資を行うことで、会社の経営基盤や事業展開において以下のようなメリットがあります。
4-1. 資金調達の多様化
増資により、新たな資金を調達できるため、事業拡大や新規プロジェクトに必要な資金を確保できます。
4-2. 信用力の向上
資本金が増えることで、取引先や金融機関からの信用が高まり、事業のスケールアップがしやすくなります。
4-3. 株主構成の多様化
新たな株主を迎え入れることで、経営資源の強化やパートナーシップの構築が可能になります。
5. 資本金を増やすデメリットと注意点
増資にはデメリットやリスクも伴います。
これらを事前に把握し、慎重に進めることが重要です。
5-1. 株主の持ち株比率が変動する
新たな株式を発行すると、既存株主の持ち株比率が低下する可能性があります。
これにより、経営権の変化や株主間の対立が生じるリスクがあります。
5-2. コストがかかる
増資には、株主総会の開催や法務局への申請手続きなど、コストが発生します。
これらの費用を事前に見積もり、適切に管理することが必要です。
5-3. 信用力向上の効果が限定的な場合もある
資本金が増えることで信用力が向上する場合もありますが、業種や取引先によっては、その効果が限定的であることがあります。
6. 増資を成功させるポイント
増資を成功させるためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
6-1. 明確な目的を設定する
増資の目的を明確にし、その目的が達成された際の効果を具体的に説明できるように準備します。
6-2. 適切な方法を選択する
会社の状況や目標に応じて、最適な増資方法を選択します。
必要に応じて専門家のアドバイスを受けることも有効です。
6-3. コミュニケーションを重視する
株主や関係者との十分なコミュニケーションを図り、増資の意図やメリットを共有します。
これにより、円滑な手続きが進められます。
7. 資本金が1,000万円・1億円を超えるときの税金の注意点
増資で資本金が一定の額を超えると、かかる税金や使える特例が変わります。
特に大きな境目は、1,000万円と1億円の2つです。
| 資本金の額 | 主な影響 |
|---|---|
| 1,000万円以上(事業年度開始の日) | 設立1期目・2期目でも消費税の免除を受けられない |
| 1,000万円超 | 法人住民税の均等割が年7万円から年18万円に上がる(従業者50人以下・標準税率) |
| 1億円超 | 法人事業税の外形標準課税の対象になり、法人税の軽減税率などの中小企業の特例が使えない |
7-1. 消費税の免除を受けられなくなる(1,000万円以上)
設立1期目と2期目は基準期間がないため、原則として消費税の納税が免除されます。
ただし、事業年度開始の日の資本金が1,000万円以上の会社は、この免除を受けられません。
設立1期目の途中で1,000万円以上に増資すると、2期目は免除の対象外になります。
なお、インボイス発行事業者に登録している会社は、資本金の額にかかわらず消費税を納めます。
(出典:国税庁「No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき」)
7-2. 法人住民税の均等割が上がる(1,000万円超)
法人住民税の均等割は、赤字の会社にもかかる税金です。
資本金等の額が1,000万円以下なら年7万円、1,000万円超1億円以下なら年18万円です。
金額は従業者50人以下・標準税率の場合で、資本金等の額には資本準備金なども含まれます。
(出典:総務省「法人住民税」)
7-3. 資本金1億円超は外形標準課税の対象になる
資本金が1億円を超えると、法人事業税に付加価値割と資本割を加える外形標準課税の対象になります。
赤字でも税負担が生じるうえ、法人税の軽減税率(年800万円以下の所得に15%)なども使えなくなります。
1億円を超える増資は、税負担の増加も含めて慎重に判断しましょう。
(出典:総務省「法人事業税」/国税庁「No.5759 法人税の税率」)
8. 資本金を減らす「減資」の方法と注意点
資本金は、増やすだけでなく減らすこともできます。
資本金を減らすことを「減資」といい、増資より手続きに時間がかかります。
8-1. 減資の手続き
減資は、原則として株主総会の特別決議で決めます(会社法第447条・第309条)。
あわせて、官報で公告し、知れている債権者には個別に知らせて、異議を述べる機会を与えます(会社法第449条)。
異議を述べられる期間は1か月以上とする必要があるため、手続きには1か月以上かかります。
効力が生じたら2週間以内に変更登記をし、登録免許税は1件3万円です。
(出典:e-Gov法令検索「会社法」/国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」)
8-2. 減資をする目的と注意点
減資は、たまった赤字(欠損)を解消したり、資本金を1億円以下にして中小企業の扱いを受けたりする目的で行われます。
ただし、外形標準課税は2025年度から対象が広がりました。
前年度に対象だった会社は、資本金を1億円以下に減らしても対象に残る場合があります。
2026年4月以後に始まる事業年度からは、大企業の100%子会社なども資本金1億円以下で対象になる場合があります。
一方で、資本金が減ると、取引先や金融機関からの見え方が変わることもあるでしょう。
税負担への影響も含めて、減資の前に税理士へ相談すると安心です。
9. よくある質問(FAQ)
Q. 資本金は会社設立後に増やせますか?
増やせます。
新株を発行して払込みを受ける方法や、準備金・剰余金を資本金に組み入れる方法があります。
資本金が増えたら、2週間以内に法務局で変更登記を申請しなければなりません。
Q. 増資にかかる費用はいくらですか?
変更登記の登録免許税は、増えた資本金の0.7%で、3万円に満たない場合は3万円です。
司法書士に依頼する場合は、別に報酬がかかります。
Q. 資本金を1,000万円以上に増やすと消費税はどうなりますか?
設立1期目・2期目でも、事業年度開始の日の資本金が1,000万円以上なら消費税の免除を受けられません。
期中の増資は次の事業年度の判定に影響するため、時期に注意が必要です。
Q. 増資には株主総会の決議が必要ですか?
株式の譲渡を制限している会社では、原則として株主総会の特別決議で決めます。
公開会社では、取締役会の決議で決めるのが原則です。
Q. 資本金を減らすことはできますか?
減資によって資本金を減らせます。
原則として株主総会の特別決議と債権者への公告などが必要で、手続きには1か月以上かかります。
10. まとめ
資本金をあとから増やす「増資」は、会社の成長や事業拡大において非常に有効な手段です。
ただし、増資にはコストやリスクも伴うため、慎重な計画と適切な手続きが必要です。
増資を検討する際には、目的を明確にし、最適な方法を選択することが成功の鍵となります。
専門家のアドバイスを受けながら、会社の成長を支える効果的な資本構成を目指しましょう。
