会社設立の際に作成する定款の中でも、「事業目的」は最も重要な項目の一つです。事業目的は会社がどのような活動を行うかを示すものであり、適切に記載しなければ、銀行口座開設や融資、取引先との契約など、設立後の運営に支障をきたす可能性があります。この記事では、事業目的の基本的な書き方、記載時の注意点、よくある例文や失敗事例を含めて詳しく解説します。これから会社設立を考えている方や、定款の見直しを検討している方に役立つ情報を提供します。
1. 事業目的とは?
事業目的とは、会社が営む具体的な事業内容を示す項目で、会社の活動範囲や方向性を定めるものです。定款に記載された事業目的は、会社の設立時に法務局へ提出され、公的に承認される必要があります。
1-1. 事業目的の重要性
法律的な効力として、事業目的は会社の活動範囲を法律的に制約する役割があります。記載されていない事業活動を行った場合、その活動が無効とされるリスクがあります。取引や契約の基盤として、銀行口座の開設や融資、取引先との契約の際に事業目的が参照されます。適切に記載されていないと、取引や融資が拒否される場合があります。
1-2. 事業目的の審査基準
事業目的は、会社法やその他の法令に基づき、明確性、適法性、営利性を満たしている必要があります。具体的で明確に表現され、法令に違反しない内容で、会社の利益追求を目的としていることが求められます。
2. 事業目的を書く際の基本ルール
事業目的を記載する際には、以下の基本ルールに従うことが重要です。
2-1. 明確かつ具体的に記載する
事業目的は、曖昧な表現ではなく、具体的な事業内容を示す必要があります。たとえば、「情報サービス業」ではなく、「ソフトウェアの企画、開発および販売」など、具体的な活動内容を記載します。
2-2. 将来的な事業展開を考慮する
現在行っている事業だけでなく、将来的に拡大する可能性のある事業分野も含めて記載します。これにより、後から事業目的を変更する手間やコストを減らすことができます。
2-3. 業界の専門用語を使用する
事業目的には、業界で一般的に使用される専門用語を用いることで、取引先や金融機関が事業内容を理解しやすくなります。
2-4. 順序は関連性を意識する
複数の事業目的を記載する場合、関連性の高いものをグループ化して記載することで、分かりやすい構成にします。
3. よくある事業目的の例文
以下は、業種ごとに代表的な事業目的の例文です。自社の事業内容に応じて適宜修正してください。
3-1. IT業界
ソフトウェアの企画、開発、販売および保守管理
インターネットを利用した各種情報提供サービスの運営
クラウドサービスの企画および提供
3-2. 小売業
日用品、食料品、雑貨の仕入れおよび販売
ECサイトの企画、運営および管理
商品販売のための広告宣伝およびマーケティング業務
3-3. 建設業
建築工事および内装工事の設計、施工、監理
不動産の売買、賃貸および管理
建築資材の輸出入および販売
3-4. サービス業
コンサルティング業務全般
教育および研修サービスの企画、運営
イベント企画および運営
4. 事業目的を書く際の注意点
4-1. 曖昧な表現を避ける
事業目的は、具体的かつ明確に記載する必要があります。「その他の事業」などの曖昧な表現は避けましょう。
4-2. 適法性を確認する
事業目的が法令に違反しないことを確認します。特に、許認可が必要な業種(例えば、金融業や建設業など)では、適法性に注意が必要です。
4-3. 必要な許認可を考慮する
特定の事業には、行政機関からの許認可が必要な場合があります。事業目的を書く際に、許認可取得の要件を満たしているかを確認しましょう。
4-4. 変更に伴うコストを最小限に抑える
事業目的の変更には、株主総会での特別決議や登記変更が必要です。この手続きには費用がかかるため、将来的な事業展開を考慮して初期段階で幅広く設定することが望ましいです。
5. 失敗事例と改善ポイント
5-1. 曖昧すぎて審査が通らない
「総合ビジネスサービスの提供」と記載した場合、具体性がないため審査に通らない可能性があります。「経営コンサルティング業務およびマーケティング業務」と記載することで、具体性が向上します。
5-2. 許認可が取得できない
「金融サービス業務」と記載しても、具体的な活動内容がないと許認可が得られない場合があります。「貸金業務および金融商品仲介業務」など、詳細を明記することが必要です。
6. まとめ
事業目的は、会社の方向性を定め、運営の基盤を築くための重要な要素です。明確性、適法性、営利性を満たしながら、現在の事業内容だけでなく、将来的な展望を考慮して記載することが求められます。事業目的を正確に記載することで、法務局での審査や取引先との契約がスムーズに進みます。必要に応じて専門家のアドバイスを受けながら、自社の事業内容を適切に反映した定款を作成しましょう。会社設立を成功させるための第一歩として、正確で充実した事業目的を記載することを忘れないでください。