日本の税金は高く、サラリーマンなど給与所得者の場合、ほとんど天引きされ、節税の余地はありません。また自営業の方も、本業でいくら稼いでも高い税金を持っていかれることになります。
もし、経費だけ使って赤字を計上できる「ペーパーカンパニー」を設立できれば、そちらと本業を合わせて黒字幅、所得を減らして節税、税金を減らすことができます。
そうしたペーパーカンパニーの作り方、設立方法はあるのでしょうか?
今回はペーパーカンパニーの設立法、作り方に加えて、その合法性や妥当性についても検討します。
ペーパードライバーならば単に運転しない人で何の実害もありませんが(運転しなければ)、ペーパーカンパニーは日本国民の義務である「納税の義務」と密接に関係します。
ペーパーカンパニーの作り方を知っても、ペーパーカンパニー設立の可否については、安易な実行は避けてください。
相当なリスクを伴う行為になります。
ペーパーカンパニーの定義
ペーパーカンパニーとは「法人設立登記されているものの、事業活動、営業活動の実態がない会社」を指します。
つまり「〇〇株式会社」という設立された会社はあるものの、事業活動を行っていないため、売上ゼロなどまったく動いていない会社となります。
狭義の「ペーパーカンパニー」は以上ですが、そのほかにも、会社ではなく個人事業主として「開業届を税務署に出しているものの、事業活動、営業活動を行っていない」ケースを含むことがあります。
「設立登記された会社」ではないものの、事業主体としてこの場合も届け出ていて、やはり何もしていないケースになります。
ペーパーカンパニーにはいくつかの類型があり、設立が完全に違法なもの、そうではなく設立がグレーゾーンなものがあります。
設立するペーパーカンパニーの類型 |
内容 |
ダミー会社 |
悪徳商法や詐欺の温床になっている営業実態のないペーパーカンパニーの設立です |
休眠会社 |
設立登記後、存在しながら事実上放置されている会社です。 |
反社会的組織 |
暴力団等反社会組織が表向き健全であることを示すためペーパーカンパニーを設立することがあります。 |
特別目的会社 |
タックスヘイブン(後述)などでの金融取引目的や資産保有のためだけに設立されたペーパーカンパニーです |
一般的に引き合いに出されるペーパーカンパニーは「ダミー会社」と「特別目的会社」ですが、それ以外も設立されれば、広義のペーパーカンパニーとされます。
休眠会社は休眠したまま何もしなければ、特段問題になることはありません。
ペーパーカンパニーを設立するメリット
ペーパーカンパニーを設立するメリットは大きく分けて「利益の分散」と「経費の計上による損益合算」があります。
それぞれについて説明します。
利益や仕入の分散
ペーパーカンパニーに本業の利益を分散させることで、節税につながります。
法人税率は一定税率だと思われがちですが
- 中小企業かつ年間利益800万円以下:15%
- それ以外:23.2%
です。
つまり、中小企業規模のペーパーカンパニーを複数設立し、それぞれが利益800万円以下になるよう、本業の利益を移転させれば、低い法人税で申告することができます。
利益の分散は法人税だけではなく消費税も減らすことができます。
原料や商品の仕入れを免税事業者(売上が年間1000万円未満で消費税納付義務がない)のペーパーカンパニーが行い、それを課税事業者の本社に顧客への販売価格よりも高い値段で販売します。
本社はその商品を通常価格で外部に販売すれば、支払った消費税>外部より預かった消費税となり、消費税が還付されます。
- ペーパーカンパニー 商品を 30で仕入れ(消費税は3)
- 本社 商品をペーパーカンパニーから70で購入(消費税は7)
- 本社 商品を顧客に50で販売(消費税は5)
- 仕入れの消費税>販売の消費税となり 本社の消費税納税が必要なくなるどころか還付を受けられる
- ペーパーカンパニーの(本社への)売上も1000万円以内(免税事業者)ラインに押さえれば、ペーパーカンパニーの消費税の納付義務もなくなる
このような建付けになります。
本社(本業)とペーパーカンパニーで原料や仕入れの流れを迂回させることで、「ロンダリング」が成功し、支払うべき消費税がどこかに消えてしまいます。
複数のペーパーカンパニーに迂回させることで、商品やサービスの流れをロンダリング(洗浄)することができます。
経費(交際費)の計上、増額
もう1つが、売上がないペーパーカンパニーに経費を計上させることです。
中小企業や個人事業主の場合、年間800万円以下の交際費全額が経費として認められます。
つまり、飲食代(「取引先」とのものも、実質友人や家族?)や旅行代(「視察費」)を経費で計上し、設立したペーパーカンパニーを赤字にして、税金の支出も免れる方法です。
個人事業主の場合、ペーパーカンパニーの開業届を税務署に出して(個人事業主として営業)、家賃や光熱費を経費計上し、給与所得と損益合算して所得税や住民税を減らす方法もあります。
ペーパーカンパニーをいくつも設立することで、飲み食いや遊ぶお金を経費として落とせるようにし、その金額も増やせるという方法です。
合法的に交際費を経費にでき、節税にもつながります。
このようにペーパーカンパニーを設立することで、経営者にとってはメリットがあり、己の欲望を補完する役割を果たします。
ペーパーカンパニーの作り方、設立法
そのようなペーパーカンパニーの作り方、設立の方法については、以下のようになっています。
通常の(本気の)会社設立と同じです。
ペーパーカンパニーの作り方、設立方法 |
会社設立 |
個人事業主 |
ステップ1 |
商号(社名)や事業目的、資本金、社員(役員)等を決める |
開業届を税務署に提出する |
ステップ2 |
定款を作成する |
(可能なら「青色申告特別控除」も税務署に出す) |
ステップ3 |
社印を作成する |
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ステップ4 |
資本金を振り込む |
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ステップ5 |
法務局へ行き会社設立登記をする |
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ステップ6 |
設立登記後社会保険や年金の手続きをする |
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法人として会社設立をする場合、作り方のステップは多く時間がかかります。
ただし、一回以上、会社設立をしているのでその流れはわかりやすいはずです。
法人設立代行業者を使っていただいても構いませんが、明らかなペーパーカンパニーとわかる場合、彼らもリスクを取りたくないので、設立代行を断るかもしれません。
サラリーマンの節税手段として、個人事業主の「ペーパーカンパニー」を設立する場合は、税務署に「開業届」を出すだけで完了です。
より節税したい場合は「青色申告の承認申請書」も合わせて提出し「青色申告特別控除」を受けられる準備もできます。
ただし、青色申告は本気の事業への意志表示であり、ペーパーカンパニーとして何も売り上げていないことを税務署が把握すれば、税務調査が入りやすくなるかもしれません。
当然、設立しても実体のないペーパーカンパニーだとバレやすくなります。
ペーパーカンパニーの合法性、ペーパーカンパニーは「脱法的な存在」で違法の指摘アリ
日本国内ではペーパーカンパニー設立は極めて黒に近いグレーゾーン
ペーパーカンパニーは、その存在自体が違法なものではありません。
休眠会社を塩漬けにしている個人事業主や法人はありますが、それだけで摘発はされません(経費を申告したり架空の売上を計上したりしないのであれば放置も可能)。
しかし、ペーパーカンパニー設立で経費を計上したり、本社と消費税を減らす取り引きをしたりするのは、法律の抜け穴、グレーゾーンに当たり、あまりひどい場合、積極的な脱税行為とみなされます。
各法人の売上や申告内容は税務署がすべて把握しています。
脱税とみなされれば、すなわち「違法」となり重大な税制への挑戦、国民の義務の履行拒否という重大な事案になります。
ペーパーカンパニー設立を積極的に取り締まる法律はありませんが、休眠会社で何もしないようなケース以外、何かお金の動きがあれば、脱税の指摘を受けかねないグレーゾーンな存在だとご認識ください。
ペーパーカンパニー設立のデメリットも理解する
積極的に脱税や節税(グレーゾーン)を行わなくても、設立したペーパーカンパニーは法人、個人事業主を問わす確定申告が必要です。
当然、帳簿の作成や会計処理が必要になります。
法人会計の場合、複雑さが増すので、節税額よりもコストがかかるのであればペーパーカンパニーを設立する意味はないでしょう。
また、法人のペーパーカンパニーを設立する場合、何もしなくても、法人住民税の均等割り(数万円)がかかります。
法人の「維持費」なのかもしれませんが、これを支払うだけのメリットはあるのでしょうか?
ペーパードライバーは5年に1回、警察で更新講習を受ければいいのですが、ペーパーカンパニーを設立している場合、その何倍ものコストがかかることを知ってください。
それでもペーパーカンパニーを設立しますか?
ペーパーカンパニーは国内では違法だが、脱法的に海外の「タックスヘイブン」なら・・
ペーパーカンパニーの設立が脱法的であり、時には違法になることはわかりましたが、海外にタックスヘイブン(租税回避地)というものがあります。
「パナマ文書」などで騒がれたように、世界の中には、(日本と比べて)著しく法人税が低い、あるいは法人税そのものがない国、地域が存在します。
そこにペーパーカンパニーを設立し、売上の移転を行えば、本来払うべき法人税等を大幅に減らすことができます。
海外にあるので、従来の日本の法律では取り締まれず、脱法的に利用されていました。
かなり有名な実業家などもペーパーカンパニーをタックスヘイブンに設立していました。
タックスヘイブン対策として、タックスヘイブン対策税制が改正され、実体のない海外子会社を利用しての租税回避や給与、配当の受け取りなどについて、規制がかなり厳しくなりました。
タックスヘイブン狙いでペーパーカンパニーを設立するのはリスクが高くなりました。
安易にペーパーカンパニーを設立するのはリスクでしかない
ペーパーカンパニーの作り方、設立方法はそれほど難しいものではありませんが、結局、安易にペーパーカンパニーを設立することは「違法」「脱税」と指摘されるリスクがあります。
脱税となれば、追徴課税が重くのしかかり節税どころではなくなります。
最悪の場合、刑事事件になる可能性もあります。
ペーパーカンパニー設立を安易に行うと、取り返しのつかないことになります。
というわけで、ペーパーカンパニーはメリットよりもデメリットが大きく、リスク要因になることをぜひ知ってください。
ペーパーカンパニーによらない節税方法について「経営サポートプラスアルファ」に相談を
ペーパーカンパニーを設立して、脱法的に節税を狙うのは、脱税=違法行為になる大きなリスクをはらみます。
専門家に「ペーパーカンパニーを設立したい」と相談しても、お断りされ、逆に説得されるでしょう。
ペーパーカンパニーの設立は、合法的な節税行為とは言いかねますので、あえて設立するのはやめてください。
そうではなく、正々堂々合法的な節税方法を考えましょう。
そのためには専門家のアドバイスを聞き、安易なペーパーカンパニー設立ではない選択肢を探しましょう。
「経営サポートプラスアルファ」は税理士を中心にした専門家集団で、会社設立のプロフェッショナルです。
脱法的なペーパーカンパニー設立ではなく、合法的でメリットが多い子会社設立や経費の増やし方など、違法リスクのない安心していただける方法をご提案します。
「税金が多くて何とか減らせないかな?」とお悩みの方、ペーパーカンパニー設立以前にできる方法があります。
ぜひ「経営サポートプラスアルファ」に相談をしてください。
土日祝日、夜間も相談を受け付けています。
また遠隔地の方はLINEやZoomにて対応できますのでご安心ください。
合法で安心できる節税方法について、「経営サポートプラスアルファ」までぜひお問い合わせください。