個人事業主、フリーランスとして仕事をしている人が納める税金はどのようなものがあるのでしょうか?
日本の中で事業を営んでいるのであれば、当然国民の3大義務の1つである「納税の義務」を果たさなければなりません。しかし、個人事業主と法人では納める税金が異なります。
個人事業主のまま営業をしていくのであれば、個人事業主として納める税金について理解を深めておきましょう。
今回は個人事業主と税金に焦点を当てて、個人事業主がどんな税金を納める義務があるのか深堀りしていきます。
ぜひご理解いただき、個人事業主のままやっていくのか法人設立するのか、税金の視点から情報提供します。
個人事業主の税金は源泉徴収されない!
国民の3大義務のうちの1つ、納税、税金を納めることについては、個人事業主も会社員も変わりません。
しかし、会社員の税金(所得税や住民税)は原則的に給料や賞与から天引き(控除)されるのに対して、個人事業主は税金を自分で申告し、自分で納税する必要があります。
日々の買い物の消費税は勝手に課税されますが、それ以外の税金は個人事業主として「〇〇〇万円収入があったため〇〇万円税金を納めます」と申告して、合わせて税金を納めないと脱税になってしまいます。
自分で申告するので、税金の根拠となる課税所得の算出時に、個人事業主の経費として合法的に計上できれば、課税所得が減り、節税となり、税金額も減ります。
個人事業主の税金はある意味「性善説」に基づいていますが、税務署の税務調査が入った場合、納得させられる説明ができないと、所得税の申告漏れ、さらにほかの税金にも波及します。
個人事業主が納めるべき税金とは?
まず、個人事業主が納める税金、全4種について押さえておきましょう。
基本的に個人事業主はこの4つの税金を納めることになります。
個人事業主の所得税
個人事業主が1年間(毎年1月1日から12月31日まで)に稼いだ所得(収入から経費を引いた、「儲け」)に対して課される税金です。
所得税の課税対象となるのは、個人事業主の本業として得た利益である「事業所得」のほか、副業で行っている「不動産所得」「雑所得」や誰かからお金をもらった「譲渡所得」など、全10種類あり、それらを合計し決定します。
年末(12月31日)を締めにして翌年2月~3月に「確定申告」をする税金です。
【売上-経費-各種控除】で算出される課税所得額に応じて、所得税率が決まり、それを乗じた金額を税金として納めます。
個人事業主の消費税
営業をしていれば、当然消費税も発生します。
軽率減税(8%)の商品を取り扱わない場合税率は10%です。
日々購入するあらゆる商品、サービスにかかる税金です。
売上×10%を納めるのではなく
【売上×10%】-【仕入れや経費に掛かった金額×10%】を税金として納めます。
各工程でかかった消費税はニ重取りにならないように注意します。
個人事業主は仕入れや経費として、消費税を支払うだけでなく、購入者から預かる立場でもあります。
ですので、個人事業主の場合、顧客から預かっている消費税と、仕入れなどの際に自分が支払った消費税の金額を相殺した差額が、個人事業主として最終的に納めるべき税金となります。
なお、現状前々年の年間売上が1000万円未満の個人事業主は消費税の「免税事業者」となっています。
消費税を上乗せして販売していい一方、消費税の納税義務がなく、結果的に税金分がもうかります(消費税を徴収してもその分の税金を納めなくてよい=自分のものにできる)。
しかし、2023年10月より導入予定の「インボイス制度」によって、その「免税事業者」特権はなくなるかもしれません。
今後の動向に注目が必要ですが、もうすこし詳しく知りたい人は経営サポートプラスアルファにお問合せください
要は納めなくてよかった消費税が、売上1000万円未満でも納める義務ができ、儲けが大幅に減る(増税どころではない)可能性があります。税金について日々情報は更新されていきます。
個人事業主の住民税
毎年1月1日時点に住所がある市区町村に納める税金です。
各市区町村が、住民に対して行う行政サービスの必要経費などを負担することを目的としています。
住民税の計算は、所得税の確定申告時に提出したデータ、ないし「住民税の確定申告」を基に各自治体によって実施さます。それを受けて、確定した税額が各個人に通知される仕組みです。
住民税は、障害者など特別な人を除いて負担する「均等割」と、所得に応じて納付する「所得割」の2階建て構造となっています。
個人事業主の個人事業税
個人事業税は、個人が地方税法などで定められた事業を行っていることに対して課される税金です。
納税額は個人事業主として所得税の確定申告書を税務署に提出すれば、個人事業税についても確定申告したとみなされます。
個人事業税は事業所得290万円未満であれば課税額0です。1人でやっている個人事業主、フリーランスの方ならば「収入金額-必要経費」が290万円を下回る人も多く、あまりなじみがないかもしれません。
所得税の確定申告終了後、住所を管轄する税務署から、個人事業税を支払うだけの所得があれば、個人事業税の納税額通知とその納付書が送られてきます。
個人事業主が納める税金~国税と地方税
以上個人事業主が納めるべき4つの税金は、国へ直接納める「国税」と、住んでいる地方自治体へ納める「地方税」に分かれます。
あまり意識しないかもしれませんが、国税の場合は税務署管轄となるので、怖い国税専門官(マルサ)の税務調査がやってくるかもしれません。
税金はしっかり、確実に、絶対に脱税せずに納めることが何よりも大切です。
個人事業主が納める税金の種類 | 税金は国税か地方税か |
---|---|
所得税 | 国税 |
消費税 | 国税 |
住民税 | 地方税 |
個人事業税 | 地方税 |
個人事業主が納める税金それぞれの税率
個人事業主が納める上記4種類の税金は税額、税率が一定のものとそうでないものがあります。
それぞれの税金の計算方法や税率について解説します。
個人事業主が納める所得税の計算
個人事業主の所得税は下記の公式によって計算します。
<所得税の計算式>
所得=売上-経費
所得税額=(所得-所得控除額)×税率(※)-控除額
所得控除:医療費控除、配偶者控除、障害者控除、寄付金控除(ふるさと納税等)など
税金の税率は「課税所得」=【所得-所得控除額】に応じて定まります。
<個人事業主の課税所得と所得税の税率>
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
例えば課税所得(売上-経費-所得控除)=200万円の個人事業主の場合、納める所得税の税金は
2,000,000×10%-97,500=102,500円 となります。
控除により税金はかなり抑えられます。
個人事業主が納める消費税の計算
ご存知のように消費税は2019年10月に8%から10%に上がりました。
食料品やテイクアウトなど一部は8%のまま「軽率減税」として据え置かれましたが、これにより経理処理が複雑になったことも挙げられます。
個人事業主の中にも、軽率減税対象の商品の仕入れや販売を行う人もおり、その場合、税金の算出等が複雑になります。
消費税は個人事業主の場合、お客様から預かっている消費税と、仕入れなど経費にかかった消費税を相殺します。
個人事業主の取引について、軽率減税がないすべて10%の取引だと仮定します。
<消費税の計算式>
- 仕入れにかかる消費税:10万円×10%=1万円
- 売上にかかる消費税:30万円×10%=3万円
- 納税する消費税の税金:3万円-1万円=2万円
個人事業主が納める税金は2万円となります。
売上30万円だから×10%の3万円を消費税として納税するわけではないことに注意してください。
個人事業主が納める住民税の計算
個人事業主の住民税は確定申告をすれば、自治体にも申告書が回り、自動的に計算し通知してくれます。
個人事業主の住民税は下記公式によって計算します。
<住民税の計算式>
所得=売上-経費
所得税額=所得割〔(所得-所得控除額)×税率(※)-控除額〕+均等割
所得控除(★):医療費控除、配偶者控除、障害者控除など
計算式は所得税と似ていますが、★所得控除の金額は所得税と住民税では若干異なります。
例えば、「障害者控除」は所得税の場合27万円ですが、住民税の場合26万円となります。税金によって控除額が違うので注意してください。
税率は
均等割:原則5000円
所得割:原則10%
です。
「原則」となっているのは、住民税は地方税のため自治体によっては税率や均等割額が異なる場合があるからです。例えば、名古屋市の住民税は所得割9.7%となっています。
逆に税金の金額や税率が原則よりも高い自治体もあり、横浜市の場合、均等割6200円、所得割10.025%となっています。
自治体によって税金が多かったり少なかったりすることがあるのが住民税です。
個人事業主が納める個人事業税の計算
個人事業主の所得が290万円以上の場合、個人事業税という税金が課されますが、税率は、業種によって異なります。業種により税率は3%~5%と異なります。
自治体のHPで個人事業税の税率を確認しておきましょう。
ちなみに、東京都主税局によると、東京都内の個人事業税は以下のように定められています。
区分 |
税金税率 |
個人事業主の事業の種類 |
||||
第1種事業 (37業種) |
5% |
物品販売業 |
運送取扱業 |
料理店業 |
遊覧所業 |
|
保険業 |
船舶定係場業 |
飲食店業 |
商品取引業 |
|||
金銭貸付業 |
倉庫業 |
周旋業 |
不動産売買業 |
|||
物品貸付業 |
駐車場業 |
代理業 |
広告業 |
|||
不動産貸付業 |
請負業 |
仲立業 |
興信所業 |
|||
製造業 |
印刷業 |
問屋業 |
案内業 |
|||
電気供給業 |
出版業 |
両替業 |
冠婚葬祭業 |
|||
土石採取業 |
写真業 |
公衆浴場業(むし風呂等) |
- |
|||
電気通信事業 |
席貸業 |
演劇興行業 |
- |
|||
運送業 |
旅館業 |
遊技場業 |
- |
|||
第2種事業 (3業種) |
4% |
畜産業 |
水産業 |
薪炭製造業 |
- |
|
第3種事業 (30業種) |
5% |
医業 |
公証人業 |
設計監督者業 |
公衆浴場業(銭湯) |
|
歯科医業 |
弁理士業 |
不動産鑑定業 |
歯科衛生士業 |
|||
薬剤師業 |
税理士業 |
デザイン業 |
歯科技工士業 |
|||
獣医業 |
公認会計士業 |
諸芸師匠業 |
測量士業 |
|||
弁護士業 |
計理士業 |
理容業 |
土地家屋調査士業 |
|||
司法書士業 |
社会保険労務士業 |
美容業 |
海事代理士業 |
|||
行政書士業 |
コンサルタント業 |
クリーニング業 |
印刷製版業 |
|||
3% |
あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復 |
装蹄師業 |
||||
その他の医業に類する事業 |
この税金、すべての事業者が対象とならないのもポイントです。
上の表にない個人事業主である、スポーツ選手、ミュージシャン、音楽家、マンガ家、作家、文筆業(ライター)、翻訳業などの業種は個人事業税の納税義務がないのです。
表にない非対象業種の方は、個人事業主として何千万円稼いでも、個人事業税という税金は支払う義務がありません。
個人事業主のままがいい?税金の額によっては法人化した方が得なケースも
このように個人事業主が支払う税金は4種類あり、それぞれ所得金額や住んでいる自治体、業種によって税金の税額や税率に差異があることがわかりました。
個人事業主のまま営業するのもいいですが、場合によっては法人化し会社設立した方が得になるケースもあります。
税金の種類 |
会社(法人化した場合) |
個人事業主 |
所得税 |
代表個人の役員報酬を「給与所得」として算出し、その5%~45% |
事業の売上から「事業所得」を算出してその5%~45% |
住民税 |
代表個人の役員報酬を「給与所得」として算出し、その約10% |
事業の売上から「事業所得」を算出してその約10% |
消費税 |
課税売上1000万円以上の場合支払う |
課税売上1000万円以上の場合支払う |
個人事業税 |
なし |
業種により3%~5% |
法人税 |
15%~23.2% |
なし |
法人住民税 |
かかる |
なし |
法人事業税 |
かかる |
なし |
登録免許税 |
60,000円以上 |
なし |
特に所得税と法人税は、売上1000万円前後でその税率が逆転し、法人化した方が納める税金が少なくて済むケースがあります。
個人事業主と法人の違いは税金面だけではないですが、売上増が見込める場合、税金が少なくて済むこともあるので、個人事業主からの法人化を検討するのも1つの選択肢です。
登録免許税とは、法人登記の際に支払う税金で、登記事務を担当する法務局へ支払う手数料のような税金です。
個人事業主の場合、設立登記はせず、税務署への開業届だけでOKなので、この税金はかかりません。
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個人事業主が支払う税金についてまとめさせていただきました。
個人事業主のまま事業をするのか、法人化するのかでも税金の金額は変わります。
個人事業主として事業するメリットもあるので、税金面だけで決めなくてもよいのですが、個人事業主のままでいいのかどうか少し考えてもよいかもしれません。
税金を納めることは国民の3大義務の1つであり、税金を軽んじることは絶対にできません。
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個人事業主として営業を続けるべきか、個人事業主として節税の余地はないかなど、なんでも聞いてください。
個人事業主であることを活かして営業することも選択肢ですし、個人事業主から法人化することもありです。
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個人事業主の節税や法人化して納める税金を変えるべきかなど、なんでも聞いてください。
個人事業主のみなさまのお役に立てるようお手伝いさせていただきます。
税金を確実に、適切に納めましょう。