【税理士が解説】人材派遣会社設立の要件とは?成功させるポイントや設立手順も詳しく紹介

人材派遣業は、企業の人材不足を補い、柔軟な働き方を求める求職者をサポートする重要な役割を果たしています。特に昨今、働き方が多様化する中で、企業のニーズに応じた人材の提供がますます求められています。人材派遣会社の設立は、ビジネスチャンスの拡大に繋がり、適切な準備と管理を行えば長期的な成長が見込める業界です。

この記事では、人材派遣会社設立に必要な手順や要件を詳しく解説し、事業を成功させるためのポイントについても紹介します。

人材派遣業は、企業が必要なタイミングで労働力を補うために、派遣社員を提供するサービスを提供するビジネスです。派遣労働者は、派遣先企業の指揮命令の下で業務を行いますが、雇用主は派遣元である人材派遣会社になります。このため、派遣社員の給与や福利厚生は派遣会社が提供する一方で、業務の指揮や管理は派遣先が担当するという特有のビジネスモデルを持っています。

人材派遣会社は、企業の短期的な人材ニーズに対応し、スキルや経験に応じて適切な人材を提供することで、企業の生産性向上をサポートします。企業にとっては、正社員を雇用することなく即戦力を得ることができるため、コスト削減や業務効率化が期待できます。

人材派遣会社を設立するには、いくつかの重要なステップを踏む必要があります。以下に、人材派遣会社設立の基本的な手順を示します。

1. 会社の基本情報を決定する

会社設立において最初に行うべきことは、会社の基本情報を決定することです。これには、会社名本店所在地事業内容資本金などが含まれます。

  • 会社名:ユニークな商号を選定し、他の会社と重複しないようにするために事前の調査が必要です。
  • 本店所在地:会社の拠点となる場所を決定します。バーチャルオフィスや自宅を使うことも可能ですが、人材派遣業では実際のオフィスを用意する方が信頼性を高めます。
  • 事業内容:事業目的に「労働者派遣事業」や「有料職業紹介事業」などを明確に記載することが必要です。これは、後述する労働者派遣事業の許可申請に影響します。

2. 定款の作成と認証

会社設立に必要な次のステップは、定款の作成です。定款は、会社の運営方針や規則を定める重要な書類です。定款には、会社の名称や事業内容、株式発行に関する事項などが記載されます。株式会社の場合は、公証人役場で定款の認証を受ける必要がありますが、合同会社の場合はこの手続きが不要です。

電子定款を利用することで、印紙税4万円が免除され、コスト削減が可能です。できるだけコストを抑えたい場合には、電子定款の作成を検討しましょう。

3. 資本金の払い込み

定款が完成したら、次に資本金の払い込みを行います。資本金は、会社の運営資金となるものであり、人材派遣業を行うためには一定の額を用意する必要があります。具体的には、一般的な労働者派遣業を開始するためには、資本金500万円以上が推奨されています。

資本金を銀行に払い込んだ後、払い込み証明書を取得し、次のステップである会社設立登記に進むことができます。

4. 会社設立の登記

資本金の払い込みが完了したら、法務局に会社設立登記を申請します。登記申請が完了することで、会社は正式に設立され、法人格を取得します。登記申請には、定款や資本金の払い込み証明書、登記申請書などの書類が必要です。

会社の登記が完了した後、法人としての活動が開始されます。登記にかかる登録免許税は、株式会社であれば資本金の0.7%または15万円のいずれか高い方が適用されます。合同会社の場合は6万円です。

5. 労働者派遣事業の許可申請

会社設立が完了したら、次に行うべき重要なステップが労働者派遣事業の許可申請です。労働者派遣事業を行うためには、厚生労働省から許可を得る必要があります。許可を取得するためには、以下の条件を満たすことが求められます。

  • 自己資本額2,000万円以上、もしくは純資産額800万円以上
  • 事務所の確保:事務所の広さや設備が基準を満たしている必要があります。バーチャルオフィスは許可されません。
  • 適切な運営体制:派遣元責任者講習を受講し、派遣元責任者を設置することが義務付けられています。

許可申請には、会社の定款、事業計画書、役員の履歴書、資産状況を示す書類など、多くの書類が必要です。申請が受理されるまでには、通常2〜3ヶ月ほどかかるため、時間に余裕を持って手続きを進めることが大切です。

6. 人材派遣事業の開始

許可が下りたら、人材派遣事業を開始できます。派遣スタッフの採用や派遣先企業との契約を結び、ビジネスを運営していきます。派遣スタッフを募集する際には、求人媒体や人材紹介サービスを活用することが一般的です。また、派遣先企業との信頼関係を築き、継続的な取引を確保することが事業の成功につながります。

人材派遣業を行うためには、法律や規制に従うことが求められます。以下では、人材派遣会社を運営する際に注意すべきポイントを解説します。

1. 資本金と財務要件

人材派遣業には、一定の財務要件が設けられています。自己資本が2,000万円以上、もしくは純資産が800万円以上であることが求められます。この財務要件を満たすことで、企業が安定した経営を行えるかどうかが評価されます。

資本金が少なすぎる場合、労働者派遣事業の許可が下りないことがあります。したがって、設立時には事業規模に応じた適切な資本金を設定することが重要です。

2. オフィスの要件

人材派遣会社は、適切なオフィススペースを確保する必要があります。オフィスは、派遣先企業やスタッフとの連絡業務、書類管理などを行うための重要な拠点となります。オフィスは、労働者派遣事業の許可申請時にも審査されるため、最低限の広さや設備を整える必要があります。

また、バーチャルオフィスは許可されないため、物理的なオフィスを用意することが求められます。オフィスの賃貸料や設備費用も運営コストとして考慮しておくべきです。

3. 法令遵守とコンプライアンス

人材派遣業を運営するにあたっては、労働者派遣法を始めとする法令を遵守することが非常に重要です。派遣労働者の権利を保護し、適正な労働条件を確保するための体制を整える必要があります。特に、派遣先企業と結ぶ契約書には、派遣労働者の賃金や労働時間、福利厚生などの詳細が記載されていなければなりません。

法令違反が発覚した場合、労働者派遣事業の許可が取り消されるリスクもあります。そのため、法令遵守を徹底し、定期的に社内でのコンプライアンス教育を実施することが求められます。

人材派遣会社を設立することは、ビジネスの第一歩に過ぎません。設立後に事業を成功させるためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。

1. 派遣先企業との関係構築

人材派遣会社の成功の鍵は、派遣先企業との信頼関係を築くことです。企業にとって、派遣労働者は即戦力として期待されるため、質の高い人材を安定的に供給することが求められます。派遣先企業のニーズに応じた柔軟な対応を行い、信頼を得ることが事業の成長に繋がります。

2. 人材確保と育成

人材派遣業において、優秀な人材の確保育成は極めて重要です。求職者に対して魅力的な条件を提供し、定着率を高めるためには、給与や福利厚生の充実だけでなく、キャリアアップのサポートも行うべきです。また、派遣スタッフのスキルアップや研修プログラムを提供することで、企業側からの評価も高まります。

3. コンプライアンスの強化

派遣労働者の適切な管理を行い、法令遵守を徹底することは、企業の信頼性を高めるために不可欠です。特に、労働条件の明確化労働時間の管理など、労働者の権利を守るための体制を整えることが求められます。

また、定期的な監査や内部統制を実施し、常に法令に従った運営を行うことが、長期的な事業の安定に繋がります。

人材派遣会社の設立には、基本的な手続きから許可申請、法令遵守まで多くのステップがあります。会社を設立した後も、派遣先企業との信頼関係の構築や、優秀な派遣スタッフの確保と育成、法令遵守が事業成功の鍵となります。

適切な準備と計画を立て、ビジネスチャンスを逃さないように進めていくことで、人材派遣業は長期的な成長を見込めるビジネスです。派遣業の許可要件や手続きの複雑さに負けず、計画的な運営を心がけて成功を目指しましょう。

ぜひ、経営サポートプラスアルファにご相談ください。

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