運送業の需要が高まっています。
通信販売(Amazonや楽天)の隆盛もあり貨物運送需要は追い風です。
しかし、通常の「運送業」ではトラック5台や駐車場の用意が必要で、個人事業主としても会社としても資金や土地の確保に手間取ります。
しかし、個人事業主、あるいは少人数の会社設立でも運送需要増に対応できる業種に「軽貨物」というものがあります。
もし、自宅の駐車場を利用し、個人事業主(自分1人)や家族友人とできれば、自宅兼事務所として利用できる大きなメリットがあります。
今回は軽貨物の個人事業主としての開業や会社設立について説明します。
運送業との違いもしっかり解説しますので、みなさんの自己資金や今後の事業計画に合わせて、軽貨物の開業について考えてみてください。
軽貨物とはどのような業種?個人事業主や会社設立は可能なのか?
「軽貨物」と聞いても、どのような業種なのかいまいちイメージしづらい人もいるかもしれません。
軽貨物(運送業)とは、軽自動車、貨物運搬用の軽自動車を利用して運送・配送する事業のことを指します。
最近、Amazonではかつてのようにヤマト運輸や佐川急便での配送が少なくなりました。
そのかわり「amazon便」としてamazonが直接配達することが多くなりました。
これらのamazon商品を運んでいるのは、amazonと契約している軽貨物運送業の方々です。
大手運送会社とは異なり、amazon専門に運ぶことが多く、amazonとしても費用を抑えることができますし、軽貨物運送業の事業者も安定した仕事を得られるのでメリットがあります。
「デリバリープロバイダー」と呼ばれるamazonの運送会社の一部も軽貨物運送業です。
また、「赤帽」のトラックを見たことがある人もいるはずです。
赤帽は個人事業主としてフランチャイズ形式で行う軽貨物運送業です。
大きな荷物の運送はできませんが、軽貨物自動車のメリットを生かして、小回りが利きます。
事業者は個人事業主などで、自宅兼事務所、自宅駐車場に軽自動車を置き、それで事業を営んでいます。
「赤帽〇〇運輸」の〇〇は事業者の名字になります。
意外に軽貨物運送業が身近な存在であることをご理解いただいたと存じます。
それでは、実際に軽貨物運送業を個人事業主、ないし、会社設立して始める際の流れについて追っていくことにしましょう。
軽貨物業の設置許可条件、設立までの流れ
軽貨物業は運送業ほどではありませんが、開業にあたり条件があります。
人の大切な荷物を運ぶわけですから、事故やトラブルがあっては困るわけで、そのあたりは厳格な審査を行っています。
軽貨物車両の準備
軽貨物業に使用する自動車を準備します。
軽貨物業は軽自動車で運送するものであり、軽トラ、軽トラや軽バン、バイク(125cc以上)などを準備できれば開業できます。
今持っている自家用軽自動車も軽貨物車両として登録できるかもしれません。
運輸支局に必要書類を揃えて届出する
営業所を置きたい地域を管轄する運輸支局に軽貨物業の届出申請を行います。
書類は運輸支局の窓口のほかHPでダウンロードすることも可能です。
提出する書類は以下の通りです。
- 軽貨物自動車運送事業経営届出書
軽貨物運送業を行うための届出書、申請書になります。
個人事業主、会社設立どちらの場合も必ず提出します。 - 貨物軽自動車運送事業運賃料金表(運賃料金表)
軽貨物業を運営する際の運賃表を提出します。
運賃料金表は、運送にかかる料金の詳細やどのような場合にその料金が適用されるのかをまとめたもので、距離制運賃、時間制運賃、割増料金、車両留置料などを記載します。
運賃は法律などで決まっているわけではなく、あくまで軽貨物業者が自分で決めます。
相場については確かにあるので、それに合わせるのも1つです。
明らかにダンピングするような低価格の場合、何か指摘されるおそれがあります。
安かろう悪かろうでは、軽貨物業はあってはならないからです。 - 事業用自動車等連絡書
軽貨物業で使う車両について詳細を記入します。
運輸支局に提出するだけでなく、後日「軽自動車検査協会」にも提出します。
みなさんが軽貨物業で使用する車両については複数の行政組織に把握されることになります。 - 車検証
当たり前ですが、軽貨物業に使用する車両が公道を走れる自動車保安基準に適合していることを証明する書類=車検証が必要になります。
すでに持っている方は、車検証のコピーでもOKです。
軽貨物業に使用する車両が、新車の場合、完成検査終了証と車台番号が確認できる書面でも構いません。
こちらは、車検業者ではなく、購入する販売店でもらいます。
営業用の黒ナンバープレートを軽自動車検査協会に申請する
軽貨物運送で使用する車両には通常軽自動車の黄色ナンバープレートではなく、「黒ナンバープレート」の設置が義務付けられています。
これにより、一般の軽自動車と軽貨物業に使用する業務用軽自動車が外から見て区別できます。
軽貨物業に使用する営業用の黒ナンバープレートを取得するには、運輸支局で受け取った事業用自動車等連絡書、車検証、使用中の黄色のナンバープレートを申込書とともに、軽自動車検査協会に提出します。
審査に通れば、軽貨物業に使用する「黒ナンバー」、黒字ナンバープレートを受け取ることができます。
これがないと、軽貨物業の仕事ができないので注意してください。
この時、ナンバープレート交付代として別途料金(1500円前後)が必要となります。
自動車任意保険に加入する
無保険で軽貨物業を始めるのは、個人事業主、会社設立にかかわらずリスクが大きすぎます。
当然保険に加入します。
義務である自賠責保険だけではなく、業務用の任意保険にも加入しておきましょう。
保険料は高めですが、事故が起きた場合のデメリットを勘案すると、保険加入はマストといえます。
開業届、会社設立登記
全部の書類や車両を準備して、軽貨物業の開業をします。
個人事業主の場合は税務署へ開業届を提出します。
会社設立の場合は、法務局へ会社設立登記申請を行います。
軽貨物運送の開業に必要な条件
軽貨物運送の開業には、書類をそろえて開業申請や会社設立登記をすることだけでなく、運送業独自の必要条件があります。
運送業の場合、かなり厳格な条件がありますが、軽貨物業の場合、そこまで厳格ではなく、自宅兼事務所で十分対応可能です。
具体的な条件は以下になります。
営業所
営業の拠点となる場所です。
法人設立した場合は登記上の「本店」(自宅OK)、個人事業主の場合は自宅兼事務所でOKです。
ともかく、軽貨物業を行うにあたっての営業所、事務所が必要になります。
車両
こちらについては上に書いた通りです。
軽貨物用の車両1台あればよく、運送業のように5台のトラックなどは不要です。
車両には両側に「〇〇運送」という事業者名を記載します。
「赤帽〇〇運輸」と書いてあるのは、この条件を満たすためなのです。
車庫
軽貨物自動車を収納する車庫も必要になります。
営業所から2㎞以内で、事業用軽貨物車両が入るスペースが必要です。
自宅兼事務所の場合、もちろん、軽貨物車両がおさまる駐車場があればそれでOKです。
マンションなどにお住いの場合も、その駐車場で問題ありません。
休憩・睡眠施設
運送業と同様に、軽貨物業の営業所には休憩所や睡眠(仮眠)施設が必要です。
自宅兼事務所の場合、当然休憩スペースも寝る場所もありますから、この点はクリアできます。
外部に事務所を借りる場合、これらを設置できるかどうか確認して下さい。
レンタルオフィスなどでは難しいケースも出てきます。
運行管理体制
軽貨物業の運営に必要な運行管理体制が整備されていることが必要です。
ただし、運送業などと異なり、運行管理者資格や運行管理者の設置は必須ではなく、開業までのハードルが低くなっています。
運送約款、運送料金表
事故やトラブルが起きた場合の措置などを定めた約款が必要です。
運送料金や運送業務における責任の範囲などもしっかり定めておきます。
何か起きて訴訟沙汰になった場合、これらが整備されていないと、こちらが相当不利になります。
専門家のアドバイスを交えて運送約款などを整備することも必要かもしれません。
十分対応可能な保険加入
ドライバー全員が加入する自動車保険だけでは不十分で、一般自動車損害保険(任意保険)の締結が強く推奨されています。
軽貨物で運ぶ荷物の中には、とても高価な品物や重要なものがないとも限らないからです。
訴訟リスクにも対応しないと、大きな賠償責任を凝ってしまう可能性もあり、多少高い任意保険にも加入しておくといいでしょう。
個人事業主として開業直後や会社設立当初は。資金的に不安もありますが、事故はどこで起きるかわかりません。
個人事業主届出や会社設立前に知っておきたい軽貨物と運送業の違い
たびたび出ている軽貨物業と運送業ですが、両者の違いについても押さえておきましょう。
これを踏まえて、開業の可否や個人事業主or会社設立の判断材料にしてください。
軽貨物業 | 一般運送業 | |
---|---|---|
自動車 | 軽自動車やバイク | それ以外の自動車、トラック |
最低台数 | 1台 | 5台以上 |
ドライバー | 1名 | 5名以上 |
営業所の場所 | 自宅開業が可能 | 営業所を置けない場所がある |
管理者 | 自分のみ、資格不要 | 公的資格を持つ運行管理資格者運行管理補助者整備管理者 |
資格 | 不要 | 法令試験合格が必要 |
休憩所、仮眠所 | 必須 | 必須 |
ナンバープレートの色 | 黒色 | 緑色 |
開業にあたっての資格が全く異なり、一般運送業のほうがはるかに大変です。
責任者を複数置き、資格も必要になり、試験合格も必要です。
軽貨物業はそれらが不要なので、ほぼすくに開業できます。
個人事業主ならばほぼ即日、会社設立しても2週間くらいで仕事を始められます。
軽貨物業を始めるメリットとデメリット
軽貨物業を始めるメリット、デメリットを表にしました。
個人事業主でも会社設立でも、メリットが大きければ開業を考えてみてもいいでしょう。
軽貨物業のメリット1 | 運送業界が追い風で貨物需要が増えている |
軽貨物業のメリット2 | 開業が運送業に比べて容易 |
軽貨物業のメリット3 | 社員を集めなくても個人として開業できる |
軽貨物業のメリット4 | 頑張っただけ見返りがある |
軽貨物業のメリット5 | 土地や建物、駐車場を最低限の準備で始められる |
軽貨物業のデメリット1 | 売上上限には限界がある |
軽貨物業のデメリット2 | 体力勝負で体に負担がかかる |
軽貨物業は小回りが利き、機動性があるので、まず運送業を始めてみたいという人には比較的ローリスクで開業できる仕事になります。
事業拡大はなかなか難しいですが、個人事業主や小規模な会社設立としてやっていくのであれば、軽貨物業はおすすめできます。
軽貨物は個人事業主と会社設立どちらがよいか?
軽貨物業を始める場合、個人事業主と会社設立、どちらがいいのでしょうか?
個人事業主と会社設立の基本的な違いを見てみましょう。
個人事業主 | 会社設立 | |
---|---|---|
事業の主体 | 個人 | 法人 |
資本金 | 不要 | 1円以上 |
出資者 | 本人 | 1名以上 |
責任 | 無限責任 | 有限責任 |
決算日 | 12月31日固定 | 自由に決められる |
確定申告 | 翌年3月15日前後 | 事業年度末から2か月以内 |
代表者の所得 | 事業所得 | 給与所得 |
設立費用 | 無料 | 最低60,000円~202,000円 |
印鑑作成 | 個人の印鑑でOK | 必要 |
設立期間 | 即時即日 | 数日~最短即日も場合によっては可能 |
社会保険 | 従業員4名位以下は任意加入 | 強制加入 |
社会的信用 | あまりない | ある |
借入 | 結構大変 | 比較的容易 |
通常の運送業、運送会社の場合、開業やその後の営業にあたり、多額の資金が必要になるため、社会的信用度の高い会社設立の方が個人事業主よりも望ましいのですが、軽貨物業を始める場合、自宅開業で、自宅兼事務所、自分の家の車庫を使い、社員を雇用せず自分1人で回せるのが軽貨物業の特徴なので、事業拡大せずやっていくのであれば個人事業主でも構いません。
会社設立のメリットである法人税率も、個人事業主として売上数百万円の中でやっていくならば、個人事業主で十分です(所得税<法人税となり会社設立の方がデメリット)。
赤帽などの場合、そちらの知名度の方があるので、あえて会社設立して信用を高めなくてもやっていけることもあります。
軽貨物業としてどのようなことをしたのかで、会社設立か個人事業主か判断すべきで、専門家の意見も聞きましょう。
軽貨物を始める開業資金について
軽貨物業を始めるにあたっての開業資金ですが、おおよそ100万円~250万円程度です。
トラック運送業の場合1000万円前後かかるので、それと比較してもかなり安く、まず運送の仕事を始めたい場合、軽貨物業を始めるのは正しい選択です。
具体的な費用はこのようになります。
項目 | 金額 | 内容 |
---|---|---|
車両費 | 40万円~200万円 | 軽自動車購入費 |
保険料 | 数万円 | 自動車保険+任意保険 |
什器・備品代 | 数万円 | 携帯電話、カーナビ等 |
合計 | 50万円~250万円 | |
会社設立の場合 | +6万円~20万円 | 合同会社設立 約6万円株式会社設立 約20万円 |
そのほかに運転資金として1か月30万円程度が必要になります(燃料代、光熱費等)。
会社設立の場合、さらに費用が掛かります。
運送業の場合、会社設立費用はほぼ無視できるものでしたが、軽貨物業を始める場合、会社設立費用の割合が多くなり、結構な負担になります。
個人事業主として始めるのもこれを見ると「あり」と言えるでしょう。
開業資金が足りない場合、金融機関の「創業融資」などを受けることができますが、一定の自己資金(自分の預金)も求められるので注意してください。
特に会社設立の場合、その費用は基本的に自己資金となります。
そのあたりも資金調達の専門家のアドバイスを受けてください。
軽貨物の会社設立や個人事業主開業をしたいならば「経営サポートプラスアルファ」にご相談を!
このように軽貨物業を始める場合、トラック運送業と異なり、個人事業主として始めてもあまりデメリットはなさそうに見えます。
しかし、場合によっては会社設立のほうがいいこともあり、これは専門家の意見を聞くべきでしょう。
「経営サポートプラスアルファ」には軽貨物業に詳しい専門家がいいて、個人事業主か会社設立かのアドバイスや軽貨物業の申請手続き代行などもケースによっては受けております。
自分1人で行うのか仲間を集めるのか、事業拡大を望むのか望まないのかでも、会社設立の可否も変わってきますので、「経営サポートプラスアルファ」の専門家にぜひ聞いてください。
経験豊富な専門家が、軽貨物業の会社設立や個人事業主の適切な選択についてアドバイスします。
土日祝日、夜間も対応します。
また、遠隔地の方はLINEやZoomでも相談を受けていますのでご安心ください。
軽貨物業は、比較的容易に開業でき、かつ将来性がある業種ですので、独立開業や会社設立したい方はぜひ候補に入れてみてください。