工務店設立に必要なことは何?一人親方との違いや建設業許可の可否についても解説します

大工や鳶職など建設現場、工事現場で活躍していた人が、一国一城の主として独立する方法は、「一人親方」だけではありません。

「工務店」を設立して幅広く工事を手掛けるという方法もあります。

「〇〇工務店」という看板をよく見かけますが、実際にはどのようにして工務店を設立すればよいのでしょうか?

今回は熟練した大工、鳶職など建設現場の専門職の方が、幅広く工事を手掛ける方法として「工務店」について解説します。

熟練した職人さんの一つの選択肢として工務店の設立をぜひ考えてみてください。

会社設立の代行費用0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

工務店とはそもそも何?一人親方とは違うの?

「工務店」と聞くと具体的に何を指すのかわからないという人もいるかもしれません。

一人親方とは違うのでしょうか?

「工務店」の定義

工務店は「木造建築から鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建築物を、新築しリフォームするなどの工事をおこなう工事業者」を指します。

  • 建築工事業(木造建築工事業を除く)
  • 木造建築工事業
  • 建築リフォーム工事業

住宅の建設やアパート、マンション等の建設、建物のリフォーム工事など建設工事を総合的に手掛ける事業者が「工務店」になります。

個人事業主としてやっている工務店もありますが、工事の規模が大きくなるため、法人設立して株式会社になるところも多いです。

工務店設立には会社設立は必須ではありませんが、事業規模的に会社設立も選択肢に入れておいてください。

一人親方との違い

建設業(大工、鳶職など)の独立キャリアとして「一人親方」という道もありますが、工務店と一人親方はかなり異なります。

一人親方は、まさにその身1つでご自身の得意分野の建設工事を請け負う個人事業主(ないし法人)です。

発注主(クライアント)から仕事を依頼され、「玉掛け」「足場」「鉄骨」など得意分野の工事を担います。

自分で仕事を一般客から取ってくるBtoCの要素はなく(個人的に依頼されることはあるかもしれませんが)、建設会社から特定の分野の工事を担うように依頼される立場が一人親方です。

一方、工務店はその一人親方に仕事を振る立場になります。

自社の従業員で職人をそろえて、さまざまな工事を行い、足りない部分をフリーランス職人である一人親方に依頼します。

BtoB、BtoC双方の仕事があります。

個人住宅の建設を請け負うこともあれば、企業や行政から特定の場所の工事やリフォームを依頼されることもあります。

仕事は上から降ってくるのではなく、自分たちで取りにいかなければなりません。

工事の技術力だけでなく、営業力や、大きな仕事をとるための信用力も重要になります。

技術一本ではうまくいかないのが工務店と一人親方の大きな違いです。

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工務店設立に必要なこと、必要なもの

工務店を設立するためには何が必要なのでしょうか?

いくつか重要なものをまとめてみました。

建設業許可はまず必要になる

一人親方など小規模の建設工事のみを請け負う場合、建設業許可は不要ですが、工務店を設立し、一定規模の工事を受注する場合、建設業許可がまず必要になります。

建設業許可が必要なケースは下記になります。

建築一式工事
次のどちらかに当てはまる工事の場合建設業許可が必要
①1件の請負代金が1,500万円超の工事(消費税込み)
②延べ面積が150㎡超の木造住宅工事

建築一式工事以外
1件の請負代金が500万円超の工事(消費税込み)

住宅を一軒建設すれば、それだけで1500万円はほぼ超えるでしょう。

したがって、まともな工務店を設立しようと思えば、建設業許可は不可欠になります。

建設業許可を得るために必要なこと

建設業許可を得るためには、いくつかの条件をクリアしなければなりません。

それを表にまとめました。

条件

内容

経営業務の管理責任者

経営に携わる管理責任者の設置です。
個人事業主の場合は本人、法人の場合は役員(代表取締役)などを管理責任者とします。
 

専任技術者

実務経験3年~10年(学歴や大学の専攻によって異なる)を積んだ人。
または、1級施工管理士・2級施工管理士・1級建築士・2級建築士の有資格者

安定した財政基盤

貸借対照表の純資産の部合計額が500万円以上。
新規会社設立の場合は資本金500万円以上。個人事業主の場合は預金残高が500万円以上であること。

欠格事項に相当しない

暴力団構成員や彼らと関係ある人間、元犯罪者(禁固以上で執行後5年以内の人)、
建設業で罰金刑を受けて5年以内の人、成年被後見人および被保佐人や破産手続き開始の決定を受けた人は建設業許可が下りません。

これらの条件を満たし「誠実に契約を履行します」と宣誓することが求められます。

特に財政基盤である「500万円以上の純資産」はかなり注意しないといけません。

個人事業主の場合、それだけの残高証明書の提出が不可欠になります。

<※補足>
管理責任者については以下の条件のうちどれかを満たさなければなりません。

  1. 建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験
  2. 経営業務管理責任者に準ずる地位にあって、5年以上の経営業務の管理をした経験
  3. 経営業務管理責任者に準ずる地位にあって、6年以上の経営業務管理責任者の補助をした経験

管理責任者を置けない場合「経営管理業務を適正に行える体制」整備という、さらに複雑な条件のクリアが必要となります。

鳶職関連の資格は不要?

鳶職として独立する際に必要だと言われるのが以下の資格です。

とび技能士1級「親方」になるには必須鳶職の総合的なアピール
とび技能士2級独立には必須(+実務経験3年)鳶職の総合的なアピール
玉掛技能講習/特別教育鳶職の初歩的スキル、絶対必要
足場の組立て等作業主任者組立や解体を独立後する場合必須
建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者鉄骨を扱う鳶職として独立する場合必須

これらを代表者や社員の人が持っているに越したことはないですが、必須ではありません。

工務店は施工管理や営業の要素も強く、専門技能は上記資格を持っている一人親方に振ることで解決できます。

職人としてだけではなく経営者、管理者としての能力が求められるのが工務店です。

工務店として保有しておきたい資格はこれ

では、経営者、管理者として評価される資格は何でしょうか?HPや名刺に以下の資格があることで、営業上の武器になりますし、大口顧客も安心します。

ぜひ、これらの資格取得を目指してください。

  • 1級施工管理技士、2級施行管理技士
  • 1級建築士、2級建築士
  • 技術士
  • 技能士

これらに加えて、資産形成の資格(ファイナンシャルプランナー)なども持っていると、総合的に住宅やマンション建設の提案ができ、とても強い工務店となれます。

工務店設立に必要な機材(建設関連以外)

工務店は一人親方のようにその身一つで独立開業、というわけにはいきません。

事前に建設用具以外の準備も必要になります。

具体的には以下のような機材です。

  • 測量機器(トランシットなど)
  • 測定機器(シュミットハンマー、木材水分計)
  • 施工管理に必要な各種アプリケーションとパソコンやタブレット、スマホ
  • 建築基準法など建設業関連の法令集
  • 建築工事共通仕様書、建築施工管理技術マニュアルなど
  • 近隣の住宅地図
  • トラック
  • 事務所や資材の仮置き用倉庫

これらに加えて、実際の建設用工具、什器を準備します。

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工務店開業のための必要な資金は?

工務店を開業する場合の開業資金ですが、おおよそ1000万円を目安にしてください。

1000万円あれば、建設業許可に必要な500万円はほぼ自動的にクリアできます。

それぞれの費目はおおよそ以下のような計算となります。

開業資金の費目

内容

予想される金額

会社設立費用

法人登記や保険関係の手続き

30万円

建設業許可申請費用

行政書士代行

10万円

事務所取得経費

敷金・保証金など契約時費用

100万円

車両購入費

 

200万円

事務所什器備品類

 

50万円

運転資金

 

500万円

その他

建設工事保険料、予備費

110万円

合計

 

1,000万円

約1000万円の開業資金、すべて自己資金でまかなうのはなかなか大変ですので、自治体や日本政策金融公庫の創業融資なども活用してください。

1000万円開業資金が必要な場合、3割~5割、300万円~500万円は自己資金が必要になります。

融資窓口だけではなく、「経営サポートプラスアルファ」の創業融資サポートもぜひご利用ください。消費者金融系での資金調達は絶対にダメです。

会社設立の代行費用0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

工務店を設立する場合、法人がよいのか個人事業主でもいいのか?

工務店を設立する場合、法人化した方がいいのか、個人事業主でもいいのか、両者の違いについて確認します。

事業主体

法人化(会社形態)

個人事業主

開業方法

商号(社名)や事業目的、資本金、役員等を決める

開業届を税務署に提出する

定款を作成する

定款認証(合同会社は不要)

社印を作成する

資本金を振り込む

法務局へ行き会社設立登記の申請をする

設立登記後社会保険や年金の手続きをする

 

開業方法は圧倒的に法人設立の方が面倒です。

当然、これに加えて建設業許可も必要になることが多いでしょう。

少額の建設工事のみを請け負うならば、そもそも工務店を設立する意味がないからです。

工務店について法人化した場合と個人事業主の組織形態の違い

事業の主体

法人(会社設立)

個人

資本金

1円以上

不要

出資者

1名以上

本人

責任

有限責任

無限責任

決算日

自由に決められる

12月31日固定

確定申告

事業年度末から2か月以内

翌年3月15日前後

代表者の所得

給与所得

事業所得

設立費用

最低60,000円

無料

印鑑作成

必要

個人の印鑑でOK

設立期間

数日~最短即日も場合によっては可能
登記完了までに2週間

即時即日

社会保険

強制加入

従業員4名位以下は任意加入

社会的信用

株式会社には劣るもののある

あまりない

借入

比較的容易

結構大変

経費として認められる範囲

比較的広い

狭い

法人設立した場合と個人事業主ではその組織形態は大きく異なります。

法人化した方が複雑になります。

社会的信用も法人化した方が圧倒的に得られます。

公共工事や大型施設の工事を請け負いたい場合、個人事業主では不利です。

会社設立登記をして第三者に自社について明らかにできるような体制を整える必要があります(法務局で登記簿謄本の取得をできるようにする)。

工務店について法人化した場合と個人事業主の税金面の違い

事業主体

法人化(会社設立)

個人事業主

所得税

代表個人の役員報酬を「給与所得」として算出し、その5%~45%

事業の売上から「事業所得」を算出してその5%~45%

個人住民税

代表個人の役員報酬を「給与所得」として算出し、その約10%

事業の売上から「事業所得」を算出してその約10%

消費税

課税売上1000万円以上の場合支払う

課税売上1000万円以上の場合支払う

法人税

かかる(15%~23.2%)

なし

法人住民税

かかる

なし

法人事業税

かかる

なし

個人事業税

なし

かかる

税務は会社を設立した場合と、個人事業主のままでは大きく異なります。

通常、売上が年間1000万円を超えると個人事業主ではなく、法人化した方が税制面でのメリットが大きい(税金が安くなる)といわれています。

工務店で請け負う建設工事の規模からすると、年間売上1000万円はおそらく超えるでしょう。

したがって、建設業許可の申請が必要な事業規模ならば、最初から会社設立をした方がメリットが大きいです。

ランニングコストや手間はかかりますが、工務店はその事業規模からして法人化して対外的な信頼を得やすくするのがよいと判断します。

会社設立の代行費用0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

工務店設立について疑問がある場合「経営サポートプラスアルファ」に相談を!

このように工務店設立は一人親方としての独立とは違い、建設業許可申請を伴うケースが多そうで、それを見越した独立開業、会社設立を考えることになります。

しかし、建設業許可の申請はその条件を満たすかどうかのチェックも含めてなかなか複雑な面もあり、自分一人ではハードルが高いです。

そこで、会社設立に強い専門家を頼ってください。

「経営サポートプラスアルファ」には建設業許可についても会社設立についても詳しいスタッフがいます。

工務店の開業プランの相談を頂ければ適切にアドバイスしますので、まずご相談ください。

土日祝日夜間も対応します。

遠隔地の方はLINEやZoomを利用して相談することも可能です。

まず、工務店がいいのか、ひょっとすると一人親方がいいのか、建設業を独立して行いたいみなさまの事業プランをお聞かせください。

ぜひ、スキルと経営ビジョンを活かした工務店設立を果たしましょう。

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