結論から言うと、合同会社は「後悔する会社形態」ではありません。東京商工リサーチの調査によれば、2025年に新設された合同会社は4万4,991社で新設法人全体の約3割を占め、前年比6.8%増加しています。後悔の声の多くは、社会的信用や資金調達に関する誤解や準備不足が原因であり、合同会社という形態そのものの欠陥とは言い切れません。仮に後悔したとしても、株式会社への組織変更や解散といった選択肢を知っておくことでリスクは十分に軽減できます。本記事では、後悔の実態から具体的な対処法まで税理士が解説します。
出典:東京商工リサーチ「2025年の『合同会社』設立、4万4,991社」
合同会社は2006年に会社法の改正によって誕生した比較的新しい法人形態です。低コストで設立でき、運営の柔軟性が高いことから、多くの個人事業主や小規模なビジネスオーナーに選ばれています。しかし、「合同会社にして後悔した」という声も一部で聞かれます。合同会社のメリット・デメリットを理解し、後悔しないために重要なポイントを押さえることが必要です。
本記事では、合同会社設立のメリット・デメリットについて詳しく説明し、どのような事業に合同会社が適しているのかを解説します。また、合同会社設立後に後悔しないための注意点も併せて紹介します。
合同会社は本当に「やばい」のか?データで見る実態
「合同会社はやばい」「合同会社にすると後悔する」という声はインターネット上でよく見られますが、実際のデータからは異なる実態が見えてきます。東京商工リサーチの調査によると、2025年に新設された合同会社は4万4,991社にのぼり、新設法人全体の約3割を占めました。前年比では6.8%の増加となっており、株式会社に次ぐ選択肢として着実に定着していることがわかります。2024年も前年比3.5%増の4万2,107社と、増加傾向は2年以上続いています。
こうした数字を踏まえると、合同会社という形態そのものが「失敗の原因」なのではなく、事業内容や将来計画に合わない選び方や、メリット・デメリットへの理解不足が後悔につながっているケースが多いと考えられます。次章では、後悔しないための具体的なポイントを解説します。
出典:東京商工リサーチ 2025年データ/同2024年データ/国税庁 会社標本調査
合同会社設立後に後悔しないためのポイント
1. 事業の規模や目的に合った会社形態を選ぶ
合同会社は、小規模なビジネスや家族経営など、少人数で運営する場合に特に適しています。しかし、将来的に上場を目指したり、大規模な資金調達が必要な場合は、最初から株式会社を選んだ方が良いかもしれません。自分のビジネスの規模や目的に合った会社形態を選ぶことが、後悔しないための重要なポイントです。
2. 社員間のコミュニケーションを大切にする
合同会社は、社員全員の同意によって意思決定を行うため、社員間のコミュニケーションが非常に重要です。経営方針や利益分配のルールを事前にしっかり話し合っておくことで、後々のトラブルを回避できます。
3. 代表社員の肩書きを工夫する
合同会社では代表者の肩書きが「代表社員」となりますが、名刺などで工夫することで対外的なイメージを向上させることが可能です。例えば、「CEO(最高経営責任者)」や「President」といった肩書きを併用することで、ビジネスシーンでの印象を改善することができます。
4. 将来的な展望を考慮する
合同会社は設立費用が安く、運営も簡単ですが、将来的に大規模な事業展開を考えている場合は、株式会社に移行する必要が出てくるかもしれません。事業の成長を見越して、将来の展望に応じた会社形態を選ぶことが重要です。
合同会社設立のメリット
1. 設立費用が安い
合同会社の設立費用は、株式会社と比較して非常に安価です。例えば、株式会社の設立には約20万円前後の費用がかかりますが、合同会社では約6万円から設立可能です。これは、合同会社が定款の認証手続きを必要としないため、手間もコストも大幅に削減できるからです。
2. 柔軟で迅速な意思決定が可能
合同会社の大きな特徴の一つが、意思決定のスピードです。合同会社では、取締役会や株主総会といった複雑な手続きを経る必要がなく、社員(出資者)の同意があれば迅速に意思決定ができます。少人数で運営するビジネスや、家族経営などの場面では特にメリットがあります。
3. 利益分配の自由度が高い
株式会社では、利益分配は株式の持ち分に応じて行われますが、合同会社では出資比率に関係なく、社員間で自由に利益を分配することが可能です。このため、出資額が少なくても業績に応じて高い報酬を得ることができます。
4. 決算公告の義務がない
株式会社の場合、毎年の決算公告が義務付けられていますが、合同会社にはその義務がありません。決算公告には手間と費用がかかるため、これを省略できることは小規模企業にとって大きなメリットです。
5. 社員全員が経営に携わる
合同会社では、出資者全員が経営に参加できるという仕組みがあります。これにより、社員全員が一体となって会社の経営方針を決めることができ、意思決定のスピードが速くなります。
合同会社設立のデメリット
1. 社会的信用度が低い
合同会社は株式会社に比べて社会的信用度が低いとされることが多いです。これは、合同会社がまだ新しい会社形態であり、多くの取引先や顧客にとって馴染みが薄いためです。特に、銀行からの融資や大手企業との取引を希望する場合、株式会社の方が信頼を得やすいという声があります。
2. 上場ができない
合同会社は株式会社と違い、株式を発行して第三者から資金を調達することができません。また、合同会社は株式市場に上場することができないため、事業を大規模に展開する際には不利となる場合があります。
3. 代表者の肩書きが「代表社員」
合同会社の代表者の肩書きは「代表社員」となります。株式会社の「代表取締役」という肩書きに比べて、名刺交換やビジネスシーンにおいて印象が弱いと感じるケースもあります。特に、対外的な信用度を重視する場面ではデメリットとなる可能性があります。
4. 社員間の意見の対立が経営の停滞につながる
合同会社では、基本的に社員全員の同意がないと重要な決定ができません。そのため、社員間で意見が対立した場合、経営が停滞するリスクがあります。特に、社員同士の信頼関係が不十分な場合や、経営方針に大きな違いがある場合には、合同会社のデメリットが顕著に表れる可能性があります。
5. 成長を見越した資金調達が難しい
合同会社は株式の発行ができないため、大規模な資金調達を行うことが困難です。将来的に事業を拡大したい場合や、外部の投資家からの資金提供を受けたい場合には、合同会社は不向きです。成長志向のビジネスオーナーには、株式会社が適した選択肢と言えるでしょう。
合同会社の仕組みが難しすぎて後悔する?
合同会社は新しい会社形態なので、株式会社やそれまであった有限会社よりも手続等が難しいというイメージが先行しています。しかし、それは間違っています。
わざわざ難しい制度を新しく設ける必要はそもそもないわけで、
- 合同会社は定款の認証が不要
- 株主総会などの社内の決定が不要
- 合同会社は社員の同意で議題が解決
- 合同会社は決算の公示義務なし
- 合同会社は役員の任期がない(延長には株主総会の議決や登記が必要)
- 合同会社の設立登記時の登録免許税が安い
など株式会社と比較して、合同会社は会社運営に機動性が出ています。
もちろん、デメリットもありますが、やばいと思われるようなものは少なく、上場希望や株で資金調達して事業の全国展開、多数の取締役を選任したいなど、将来的にすごく大きな会社を目指したいということでなければ、合同会社も有力な選択肢になります。
やばいということはまったくありません。
合同会社の仕組みが難しすぎて後悔するということはなく、自社の事業計画や事業展開に合わせて株式会社と選べるように選択肢が広がったと解釈してください。
合同会社から株式会社へ組織変更して後悔を挽回する方法
「対外的な信用力を高めたい」「将来的に上場や大型の資金調達を目指したい」といった理由で後悔している場合、合同会社を解散せずに株式会社へ切り替える「組織変更」という選択肢があります。法人格を維持したまま形態だけを変更できるため、事業を止めずに信用力の課題に対応できる点が特徴です。
組織変更にかかる費用と期間の目安
組織変更にかかる登録免許税は、資本金の1000分の1.5に30,000円を加えた金額(最低60,000円)が目安です。これに加えて、法律で義務付けられている官報公告費用(目安として約40,000円)が必要になるため、合計すると10万円前後の費用を見込んでおくとよいでしょう。また、組織変更には総社員の同意に基づく手続きに加え、1ヶ月以上の官報公告期間が法律で定められているため、申請から完了まで1ヶ月以上かかる点にも注意が必要です。
組織変更の主な手続きの流れ
総社員の同意を得て組織変更計画を作成し、債権者保護のための官報公告を1ヶ月以上行います。公告期間の経過後、法務局へ組織変更の登記を申請し、登記完了後に株式会社として新たに事業を継続する流れです。必要書類や申請様式は法務局が公開しているため、実際に手続きを行う際は最新の様式を確認することをおすすめします。
出典:法務局 組織変更登記申請書類/ひとりでできるもん「組織変更手続き」費用内訳
合同会社を畳みたいほど後悔した場合の出口(解散・休眠)ガイド
どうしても合同会社の継続が難しく、事業自体をやめたいと後悔している場合は、「解散」「休眠」という2つの出口が考えられます。どちらを選ぶかによって、その後の費用負担や再開のしやすさが大きく変わります。
解散・清算にかかる費用
合同会社を廃業(解散・清算)する場合、登録免許税として解散登記に30,000円、清算人選任登記に9,000円、清算結了登記に2,000円の合計41,000円程度が必要です。このほか、官報公告費用や税理士・司法書士への依頼費用が別途発生する場合があります。
休眠という選択肢との違い
一方、法人格を残したまま事業活動だけを停止する「休眠」であれば、解散のような登記手続きは不要で、税務署への異動届出書の提出のみで済みます。ただし、休眠中も原則として法人住民税の均等割が発生し、毎年の確定申告も必要になる点には注意が必要です。将来的に事業を再開する可能性が少しでもあるなら休眠、完全に畳む決断がついているなら解散・清算というように、今後の見通しに応じて選ぶとよいでしょう。
合同会社の後悔に関するよくある質問
Q1. 合同会社は本当に「やばい」「後悔する」と言われるほどよくない選択なのでしょうか。
いいえ、データ上は必ずしもそうとは言えません。東京商工リサーチの調査では、2025年に新設された合同会社は4万4,991社で新設法人全体の約3割を占め、前年比6.8%増加しています。後悔の声の多くは、社会的信用や資金調達に関する準備不足が原因であり、合同会社という形態自体の欠陥ではないケースがほとんどです。
出典:東京商工リサーチ
Q2. 合同会社から株式会社に変更するにはどのくらいの費用と期間がかかりますか。
登録免許税は資本金に応じて最低60,000円、官報公告費用が約40,000円かかるため、総額はおおむね10万円前後が目安です。また、法律で1ヶ月以上の官報公告期間が定められているため、手続き完了までには1ヶ月以上を見込んでおく必要があります。
出典:法務局
Q3. 合同会社を後悔してやめたい場合、すぐに解散したほうがよいのでしょうか。
事業再開の可能性が少しでも残っているなら、解散よりも「休眠」を検討する方法もあります。休眠であれば登記手続きは不要で税務署への異動届出書の提出のみで済みますが、原則として法人住民税の均等割は発生し続けます。完全に事業をやめる決断がついている場合は、解散・清算(登録免許税合計約41,000円)を選ぶとよいでしょう。
Q4. 合同会社でも日本政策金融公庫の融資は受けられますか。
はい、受けられます。新創業融資制度は合同会社にも適した制度とされており、条件を満たせば無担保・無保証で融資を受けることが可能です。ただし、融資額の10分の1以上の自己資金が求められるなど一定の条件があるため、事前の確認が必要です。
出典:日本政策金融公庫の公式情報での要確認を推奨
Q5. 合同会社にも「実質的支配者となるべき者の申告書」の提出は必要ですか。
必要ありません。この申告書は定款認証を行う株式会社・一般社団法人・一般財団法人が対象の制度であり、合同会社はそもそも定款認証の手続きが不要なため対象外です。
Q6. 合同会社の設立数は今後も増え続けますか。
直近の統計では増加傾向が続いています。東京商工リサーチによれば、2024年の合同会社新設数は前年比3.5%増の4万2,107社、2025年はさらに6.8%増の4万4,991社となり、2年連続で新設法人の約3割を占める規模にまで拡大しています。
合同会社はやばいということはない!確実な設立のため「経営サポートプラスアルファ」にお任せ
合同会社は、設立費用が安く、意思決定のスピードが速いというメリットがありますが、社会的信用度や資金調達の面でデメリットも存在します。事業の規模や目的に応じて、合同会社か株式会社を選ぶことが、後悔しないための鍵となります。
事業を立ち上げる際には、専門家に相談し、自分のビジネスに最適な会社形態を選ぶことをお勧めします。
ぜひ、経営サポートプラスアルファにご相談ください。
