フリーランスの方も日本国内で事業をしているので、当然税金を納めなければなりません。
国民の3大義務の1つである「納税の義務」はフリーランスの方にも適用されます。
自由で新しい生き方を実践しているフリーランスの方も、税金については会社員や他の個人事業主、経営者と同様に納めなければなりません。
ではフリーランスの方が納める税金について、みなさんはどのくらいご存知なのでしょうか?
今回は、フリーランスが納める税金や、税金を節約する(節税)の方法、それでも税金が高い場合の対処法などについて考えてみましょう。
せっかくフリーランスとして好きなことをしてお金を稼いでいるのですから、税金についてもしっかりクリアにしながら、減らせる方向で考えていきましょう。
フリーランスが納める税金をチェック
フリーランスの方が納める税金についてまずチェックします。
サラリーマンと違い、給料からの天引きはなく、すべてフリーランスの方ご自身の申告に基づいて税金を支払います。
個人事業主が納める税金~国税と地方税
フリーランスが納める税金は、大きく分けて「国税」と「地方税」に分かれます。
国税は国税庁が管轄し、地方税はお住いの(あるいは事業所のある)地方自治体が管轄するものです。
いずれの税金も国民の3大義務と密接にかかわるものなので、脱税は絶対に許されず、きちんと申告納税する必要があります。
個人事業主が納める税金の種類 |
税金は国税か地方税か |
所得税 |
国税 |
消費税 |
国税 |
住民税 |
地方税 |
個人事業税 |
地方税 |
それでは以下で具体的にフリーランスが納める税金について解説します。
フリーランスの所得税
フリーランスが1年間(毎年1月1日から12月31日まで)に稼いだ所得(収入から経費を引いた所得=「儲け」)に対して課される税金です。
所得税の課税対象となるのは、フリーランスの本業として得た儲けの「事業所得」のほか、副業で行っている「不動産所得」「雑所得」や、誰かからお金をもらった場合の「譲渡所得」など、合計10種類あり、それらを合算します。
年末(12月31日)を締め日にして、翌年2月~3月に「確定申告」をする税金です。
会社員や公務員は「年末調整」として職場がやってくれますが、フリーランスになると自分で税務署に申告します。
【売上-経費-各種控除(医療費控除、青色申告特別控除、小規模企業共済掛金控除など)】で算出される「課税所得額」に応じて、所得税率が決まります。
フリーランスの所得税額は下記の公式によって計算します。
所得=売上-経費(-青色申告特別控除:青色申告しているフリーランスのみ)
所得税額=(所得-所得控除額→「課税所得」)×税率(※)-税額控除額
所得控除:医療費控除、配偶者控除、障害者控除、寄付金控除(ふるさと納税等)など
税金の税率は「課税所得」=【所得-所得控除額】によって決まります。
<フリーランスの課税所得と所得税の税率>
課税される所得金額 |
税率 |
控除額 |
195万円以下 |
5% |
0円 |
195万円超330万円以下 |
10% |
97,500円 |
330万円超695万円以下 |
20% |
427,500円 |
695万円超900万円以下 |
23% |
636,000円 |
900万円超1,800万円以下 |
33% |
1536,000円 |
1,800万円超4,000万円以下 |
40% |
2796,000円 |
4,000万円超 |
45% |
4796,000円 |
例えば課税所得(売上-経費-所得控除)=320万円のフリーランスの場合、納める所得税の税金は
3,200,000×10%-97,500=222,500円 となります。
フリーランスの消費税
フリーランスが営業すれば、消費税も発生します。
軽率減税(8%)の商品を取り扱わない場合税率は10%です。
間接税で、一部の非課税商品やサービス以外は消費税が発生します。
消費税の納税方法は、売上×10%の税金を納めるわけではなく、以下の公式によって定められた税金を納めます。
【売上×10%】-【仕入れや経費に掛かった金額×10%】
フリーランスは仕入れや経費を精算する際に、消費税を支払うだけではなく、サービスの購入者などから預かる立場になります。
フリーランスの場合、購入したお客様から預かっている消費税と、仕入れなどの際に自分が支払った消費税の金額を相殺した差額を税金として納付します。
前々年の年間売上が1000万円未満のフリーランスは消費税の「免税事業者」となっていますが、2023年10月より導入予定の「インボイス制度」によって、その「免税事業者」制度が変わる可能性があるので注意してください。
課税業者だと仮定し、単純化して消費税の計算をしてみましょう。フリーランスとして納める税金は、軽率減税がないと仮定し、消費税10%の取引とします。
仕入れ20万円、売上60万円と仮定します。
・仕入れにかかる消費税:20万円×10%=2万円
・売上にかかる消費税:60万円×10%=6万円
・納税する消費税の税金:6万円-2万円=4万円
フリーランスとして納める税金は4万円となります。60万円売り上げたから10%の6万円ではないことに注意してください。
フリーランスの住民税
地方税として、フリーランスの方が、毎年1月1日時点に住所がある市区町村に納める税金です。
住民税の申告、計算は、所得税の確定申告の記載事項、あるいは「住民税の確定申告」を基に各自治体によって計算され、確定した税額が各個人に通知されます。
住民税は、障害者や一定収入以下の人など特別な人を除いて負担する「均等割」と、所得に応じて納付する「所得割」の2つに分かれています。
フリーランスの住民税を計算してみましょう。フリーランスの住民税は下記公式によります。
所得=売上-経費
所得税額=所得割〔(所得-所得控除額)×税率(※)-控除額〕+均等割
所得控除(★):医療費控除、配偶者控除、障害者控除など
税金の算出公式は所得税と似ていますが、「★」の所得控除の金額は所得税と住民税で異なるものがあります。
「障害者控除」は所得税の場合27万円ですが、住民税の場合26万円となります。
税率、税額は
均等割:原則5000円
所得割:原則10%
です。
「原則」となっているのは、住民税は地方税のため自治体によっては税率や均等割額が異なる場合があるからです。例えば、名古屋市の住民税は所得割の税率9.7%ですが、横浜市は10,025%です。
課税所得300万円で所得割税率10%の自治体の場合、
300万円×10%+5,000=305,000円の税金を住民税として納めます。
フリーランスの個人事業税
個人事業税は、個人(フリーランス)が地方税法などで定められた事業を行っていることに対して課される税金です。定められていない事業の場合、個人事業税は発生しません。
住民税同様、所得税の確定申告書を税務署に提出すると、自治体の方で個人事業税についても計算してくれます。
個人事業税は事業所得290万円未満であれば業種事業にかかわらず0円です。
フリーランスの方ならば「収入(売上)-経費」が290万円を下回る人も結構いて、なじみがないかもしれません。
事業税の税率は、業種によって異なり、3%~5%です。
例えば、東京都内の個人事業税は以下のように決められています。
区分 |
税金税率 |
個人事業主の事業の種類 |
||||
第1種事業 (37業種) |
5% |
物品販売業 |
運送取扱業 |
料理店業 |
遊覧所業 |
|
保険業 |
船舶定係場業 |
飲食店業 |
商品取引業 |
|||
金銭貸付業 |
倉庫業 |
周旋業 |
不動産売買業 |
|||
物品貸付業 |
駐車場業 |
代理業 |
広告業 |
|||
不動産貸付業 |
請負業 |
仲立業 |
興信所業 |
|||
製造業 |
印刷業 |
問屋業 |
案内業 |
|||
電気供給業 |
出版業 |
両替業 |
冠婚葬祭業 |
|||
土石採取業 |
写真業 |
公衆浴場業(むし風呂等) |
- |
|||
電気通信事業 |
席貸業 |
演劇興行業 |
- |
|||
運送業 |
旅館業 |
遊技場業 |
- |
|||
第2種事業 (3業種) |
4% |
畜産業 |
水産業 |
薪炭製造業 |
- |
|
第3種事業 (30業種) |
5% |
医業 |
公証人業 |
設計監督者業 |
公衆浴場業(銭湯) |
|
歯科医業 |
弁理士業 |
不動産鑑定業 |
歯科衛生士業 |
|||
薬剤師業 |
税理士業 |
デザイン業 |
歯科技工士業 |
|||
獣医業 |
公認会計士業 |
諸芸師匠業 |
測量士業 |
|||
弁護士業 |
計理士業 |
理容業 |
土地家屋調査士業 |
|||
司法書士業 |
社会保険労務士業 |
美容業 |
海事代理士業 |
|||
行政書士業 |
コンサルタント業 |
クリーニング業 |
印刷製版業 |
|||
3% |
あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復 |
装蹄師業 |
||||
その他の医業に類する事業 |
出典:『個人事業税 | 税金の種類 | 東京都主税局』より引用
上の表にないフリーランス、つまり、翻訳家、スポーツ選手、パフォーマー、ミュージシャン、マンガ家、作家、文筆業(ライター)などの業種は事業税がそもそもありません。
何千万円、何億円と稼ぐ人も個人事業税という税金自体が発生しないのです。
フリーランスでも節税できる?おすすめの税金節約法
税金を減らす方法は、フリーランスも個人事業主も同じです。
法人設立すると税金の節約方法が増えますが、まずフリーランスとしてできる税金節約、節税方法について知っておきましょう。これを実践できればかなり楽になるはずです。
青色申告特別控除
フリーランスの方の中には、税務署に開業届を出さないで事業を営んでいる人がいるかもしれません。法的にも税務的にも開業届を出すのは義務ではないのですが、開業届と一緒に「青色申告承認申請書」を提出することで、青色申告特別控除を受けることができ税金が減ります。
【売上-経費】からさらに
65万円:複式簿記で確定申告を電子申告した場合
55万円:複式簿記で確定申告を紙で行った場合
10万円:単式簿記で確定申告した場合
の控除(税金の根拠額の減算)を受けることができます。
つまり、青色申告特別控除(複式簿記、電子申告)の場合
売上-経費-65万円-(他の控除)=課税所得 となるため、大幅に税金を減らすことができます。
開業届を出しているが、青色申告承認申請書はまだという方は、申告をしようとする年の3月15日までに出してください。
3月16日以降は翌年の確定申告から適用になります。
新規開業の方は開業してから2か月以内ならば、3月15日を過ぎても大丈夫です。
小規模企業共済等掛金控除
フリーランスの方で売上や所得に余裕がある方は、小規模企業共済やiDeCoに加入して積み立てをしておくという方法もあります。
これでかなりの税金を節約できます。
小規模企業共済:個人事業主やフリーランスの「年金」
iDeCo(確定拠出型年金):個人事業主やフリーランスの「年金」で国民年金の上に積み立てるもの
になります。
毎月、口座から引き落としになり、確定申告時に【売上-経費-〔小規模企業共済等掛金控除〕-他の控除】で課税所得を計算できるようになります。
課税所得が下がれば、所得税、住民税なども減るので、税金の節約になります。
中小企業倒産防止共済(経営セーフティー共済)
取引先(クライアント)の倒産や経営不振により、売掛金の回収ができず、連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度です。
無担保・無保証人で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで緊急時の借入れができます。
小規模企業共済の掛金は、所得からの控除でしたが、中小企業倒産防止共済の掛金は、所得控除ではなく、毎月の経費になります。
【売上-経費(←中小企業倒産防止共済はここに該当)=所得】
小規模企業共済は緊急時に、積立額を限度に低利の融資を受けることもでき、セーフティーネットとしてもおすすめできます。
ただし、解約や事業をたたんだ時、小規模企業共済は「退職所得」や「雑所得(公的年金等)」扱いで、事業所得とは分けて計算され、控除額も多いのですが、中小企業倒産防止共済の場合、その解約金(戻ってくるお金)は「売上」(収入)になるため、その年の収入が一気に跳ね上がります。
税金の節約どころか、税金が大きく跳ね上がるので注意してください。
最終的に考えると、そこまで税金の節約になりません。
まず、フリーランスの方は、小規模企業共済とiDeCoを上限額まで掛けて、それでも余裕があるなら、中小企業倒産防止共済に加入するという考えのほうがいいでしょう。
中小企業倒産防止共済を解約するタイミングが、フリーランスの税金面では重要になります。
医療費控除、セルフメディケーション税制
病院の領収書や薬局で買った薬のレシートをとっておき、確定申告際に医療費控除ができます。
【売上-経費-〔医療費控除〕-他の控除】で計算しますが、医療費控除額、【医療費-10万円】と思っていませんか?
正しくは【医療費-10万円】(総所得200万円以上の人)か【医療費-〔総所得金額等×5%〕】(総所得200万円未満の人)になります。
フリーランスの方の場合、総所得(売上-経費-青色申告特別控除)が200万円未満という人も多いので、医療費が10万円いかなくても、医療費控除を受けられる可能性があります。
薬局の薬も「第〇種医薬品」であれば対象となります。
また、【医療費-10万円】か【医療費-〔総所得金額等×5%〕】に満たなくても、薬局で購入した【セルフメディケーション税制対応医薬品】が【実際に支払った特定一般用医薬品等購入費の総額-保険金などで補填される金額≧12,000円】の場合、88,000円まで「医療費控除(セルフメディケーション税制)」として所得控除できます。
医療費控除とセルフメディケーション税制の併用はできませんが、医者にはかからないが、薬局で薬を買っている人は、セルフメディケーション税制で税金を節約できるかもしれません。
ふるさと納税
ふるさと納税は、厳密に言うと、税金の節約ではなく、税金を自分の住んでいない自治体に前納することで、その対価として「返礼品」を受け取れるものです(対価のない純粋な寄附納税もあります)。
ふるさと納税額-2000円が所得控除されるので、もらう返礼品が2000円以上のものであれば、相対的に得をします。しかし、ふるさと納税で控除される金額は上限(住民税の約20%)があり、それ以上寄附してもただの寄附になるので、節約だけを考えているフリーランスの方は注意してください。
高額納税者ほど、上限枠が多く、返礼品の恩恵にあずかれます。
フリーランスが実践できる税金の節約、節税方法はだいたいこのくらいになります。
すぐに使うお金ではなく、余裕があれば実践してみてください。
特に小規模企業共済、iDeCo、中小企業倒産防止共済は基本的に解約できないので、余裕がないのに節約のために加入する必要はありません。
それでも売上が多い・・税金を減らすためにフリーランスから会社設立するのはあり?
いろいろ税金を節約するために努力しても課税所得が減らない場合、思い切って会社設立をして法人になる選択肢もあります。
フリーランスという生き方と会社経営は対立するように思われがちですが「1人会社」ならば自分の好きなように、好きな時に、好きな場所で働くことができます。
本店登記した場所以外で働いても構わないのです。
フリーランスと会社経営した場合の税金面の違いを表にしました。
税金の種類 |
フリーランス |
会社(法人化した場合) |
所得税 |
事業の売上から「事業所得」を算出してその5%~45% |
代表個人の役員報酬を「給与所得」として算出し、その5%~45% |
住民税 |
事業の売上から「事業所得」を算出してその約10% |
代表個人の役員報酬を「給与所得」として算出し、その約10% |
消費税 |
課税売上1000万円以上の場合支払う |
課税売上1000万円以上の場合支払う |
個人事業税 |
・業種により3%~5% |
なし |
法人税 |
なし |
15%~23.2% |
法人住民税 |
なし |
かかる |
法人事業税 |
なし |
かかる |
登録免許税(法人設立手数料) |
なし |
60,000円以上 |
特に所得税と法人税は、売上1000万円前後でその税率が逆転します。
フリーランスの所得税率は最高45%ですが、会社設立をした場合に支払う法人税はその約半分の税率となります。
稼いでいるフリーランスは会社設立をした方が税金が少なくて済むかもしれません。
フリーランスの税金相談や節税のための会社設立については「経営サポートプラスアルファ」に相談を!
フリーランスの方は、税理士など税金の専門家とお付き合いする機会も少なく、税金を節約する方法があるのにしていないケースも多いと思われます。
せっかくフリーランスとして、ご自身のスキルで稼いでいらっしゃるのですから、なるべく税金を節約して手取り収入を増やしましょう。
そのための1つの方法として会社設立もありますが、売上規模によってはかえって税金が高くなる(そのほかの費用も掛かる)ことがあるので、専門家に相談してください。
「経営サポートプラスアルファ」は税理士を中心に設立された会社で、フリーランスの方の相談も受けています。
会社設立を無理強いすることはないのでご安心ください。
今回をいい機会に、フリーランスの方は税金について考えていただければと存じます。
税金を減らせるのに何もしないのはとてももったいないです。
「経営サポートプラスアルファ」は土日祝日、夜間も対応します。
また、遠隔地の方は、LINEやZoomを使用しての相談も受け付けています。
フリーランスという働き方、税金の金額等も含めて、一度「棚卸し」してみませんか?
とてもよい機会になるはずです。