税務署は、集めた資料や申告内容の分析から、申告漏れが見込まれる人を調査の対象にします。
売上や経費の不自然な動き、無申告などは、目をつけられやすい代表例です。
(出典:国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」)
税務署には、取引先が提出する支払調書などの資料も集まります。
日頃から正確に記帳し、期限内に正しく申告することが基本の対策です。
不正をしていなくても、記録があいまいだと疑いを持たれることがあります。
本記事では、目をつけられやすい申告の特徴と対策、無申告のときの対応を解説します。
税務署が目をつける個人事業主の背景と理由
税務署が調査する目的
税務署が税務調査を行う理由は、納税者が適切に税務申告をしているかを確認することにあります。
申告内容の正確性確認
収入や経費が正確に申告されているかを確認します。特に、売上の過少申告や経費の水増しをチェック。
公平な課税の実現
他の納税者と同様に適切な納税をしているか確認することで、公平性を保つ。
脱税の防止
意図的な脱税や不正行為を未然に防ぐための抑止効果を期待しています。
個人事業主が注目される理由
個人事業主は法人と比べて記録管理が簡易であり、不備が生じやすい点で注目されます。
現金取引の多さ
個人事業主は現金取引が多く、収入や支出が曖昧になるリスクが高い。
自己申告の限界
専門的な知識がないまま確定申告を行うことが多いため、申告内容にミスが起こりやすい。
小規模事業特有の問題
小規模な事業では管理体制が整っていないことが多く、不正の疑いを持たれる場合がある。
税務署に目をつけられる特徴と具体例
売上に関する問題
売上の記録が不完全だったり、不自然な変動がある場合、税務署の注目を浴びる可能性が高まります。
収入の急激な増減
例えば、前年と比べて売上が急激に増加または減少している場合、収入の隠蔽を疑われることがあります。
現金収入の記録漏れ
現金での取引が多い業種では、売上記録が不十分とみなされるリスクがある。
例
以下は、説明のための例です。
建設業の一人親方が、請負代金の一部を現金で受け取り、帳簿に記載していなかったとします。
この場合、売上の計上漏れとして、税務調査で指摘を受けることがあります。
経費に関する問題
経費の不正計上や水増しも、税務署が注目するポイントです。
事業と無関係な支出
例えば、家族旅行や自家用車の購入費用を事業経費として申告するケース。
領収書の不備
領収書の金額や日付が明確でない場合、不正を疑われる可能性があります。
例
こちらも説明のための例です。
飲食店を営む個人事業主が、家族との食事代を接待交際費として経費にしていたとします。
事業と関係のない支出は経費と認められず、追加で税金を納めることになります。
消費税や所得税の不適切な申告
消費税や所得税の申告に問題がある場合、税務署の調査対象となります。
免税事業者の基準違反
基準期間の課税売上高が1,000万円を超えたのに、消費税を申告しない。
過少申告
実際の所得を意図的に低く申告することで税負担を減らそうとする行為。
【参考】【税理士が解説】個人事業主の消費税免除の仕組みと適用期間:免税事業者の条件と注意点
社会的要因や外部からの通報
税務署は、通報や外部の情報をきっかけに調査を開始することもあります。
SNSやメディアでの注目
高収益を公開している個人事業主は、その収入が適切に申告されているか注目される。
取引先からの苦情や通報
取引先や顧客が税務署に不正を通報する場合があります。
税務署はどこから情報を得ているのか
取引先が提出する支払調書などの法定調書
税務署には、報酬や給与を支払った側から「法定調書」と呼ばれる資料が提出されます。
たとえば弁護士や税理士への報酬、原稿料や講演料などは、同じ人への年間の支払いが5万円を超えると支払調書の対象です。
申告した売上がこうした資料の金額より少ないと、確認の対象になりやすいと考えられます。
出典:国税庁「No.7401 法定調書の種類」、国税庁「No.7431 「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出範囲と提出枚数等」
税務署に目をつけられないための対策
正確な記帳を心掛ける
収入や経費を正確に記録することで、税務署からの不信感を回避できます。
会計ソフトの活用
専用の会計ソフトを導入し、自動で帳簿を作成する。
月次での確認
売上や支出を毎月確認し、記録漏れがないようにする。
領収書や関連書類の整理
適切な領収書の管理が、経費の正当性を証明するために不可欠です。
デジタル保存
紙の領収書は、スキャナ保存の要件を満たしてデータで保存する。
項目ごとの分類
領収書を用途や日付ごとに分類して保管する。
税理士や専門家の活用
専門家を活用することで、申告内容の精度を高め、税務署の調査リスクを軽減できます。
確定申告の代行
税理士に申告業務を依頼し、ミスを防ぐ。
調査時の対応アドバイス
税務調査に税理士を同席させることで、スムーズな対応が可能。
適切な税務知識の習得
税法に関する基本的な知識を身に付けることで、不備を未然に防ぐことができます。
セミナーや講座への参加
地域の商工会議所などが開催する税務セミナーに参加する。
専門書やオンラインリソースの活用
自身で税務知識を学び、理解を深める。
無申告・期限後申告になってしまったときの対応
気づいたら、できるだけ早く期限後申告をする
確定申告を期限までに出し忘れても、気づいた時点で期限後申告ができます。
税務署の調査の事前通知を受ける前に自主的に申告すれば、加算税の負担は軽くなる仕組みです。
期限後申告で納める税金は、申告書を出した日が納期限で、延滞税もあわせて納めます。
加算税や延滞税の割合と、税務調査の流れは次の記事で解説しています。
【参考】個人の税務調査は7年前まで遡る?何年分まで調べられるのか解説します!
1か月以内の自主申告なら無申告加算税がかからない場合がある
法定申告期限から1か月以内に自主的に申告し、一定の要件を満たせば、無申告加算税はかかりません。
要件は、税金を法定納期限までに全額納めていることや、過去5年以内に無申告加算税などを課されていないことです。
青色申告の65万円控除が受けられなくなる
青色申告特別控除の55万円・65万円は、期限内に申告書を出すことが条件の一つです。
期限後申告になると、控除額は10万円になります。
無申告が続くと、税務署が所得や税額を決める「決定」を受けることもあります。
税務調査での成功例と失敗例
以下は、説明のための例です。
成功例
適切な帳簿管理
税務署の指摘に対して、正確な帳簿や領収書を提出し、問題なく調査を終えた。
税理士のサポート
専門家のサポートを受け、調査官の質問に的確に回答。
失敗例
申告ミスによる追加課税
売上の一部が申告されておらず、追徴課税が発生した。
領収書紛失で経費否認
経費の証明ができず、多額の税金を追加で支払う羽目になった。
よくある質問
Q1. 税務署に目をつけられやすい個人事業主の特徴は?
売上や所得の急な増減、売上に比べて多い経費、現金取引の記録漏れなどが代表例です。
申告が必要なのに申告していない場合も、確認の対象になりやすいと考えられます。
Q2. 売上がいくらから税務署に目をつけられますか?
目をつけられる売上の基準は公表されていません。
ただし、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えると、原則として消費税の申告が必要になります。
Q3. 確定申告を忘れたらどうすればよいですか?
気づいた時点で、できるだけ早く期限後申告をします。
法定申告期限から1か月以内に自主的に申告し、要件を満たせば、無申告加算税はかかりません。
Q4. 期限後申告をすると青色申告の控除はどうなりますか?
55万円・65万円の青色申告特別控除は、期限内の申告が条件です。
期限後申告では、控除額は10万円になります。
Q5. 取引先からの支払調書で売上は分かりますか?
報酬などを支払った側は、一定の金額を超えると支払調書を税務署に提出します。
申告した売上と支払調書の金額が合うよう、日頃から記帳しておくことが大切です。
まとめ
税務署に目をつけられないためには、日頃から正確な記帳と適切な申告を心掛けることが重要です。
領収書や帳簿の整理を徹底し、税務調査に備えることでリスクを抑えられます。
申告を忘れたときは、気づいた時点で早めに期限後申告をすることが大切です。
税理士などの専門家も活用し、安心して事業を続けられる体制を整えることがポイントです。
この記事を参考に、税務署との健全な関係を築きましょう。