会社を経営していると、子会社の設立を検討する状況があるでしょう。
特に会社経営が軌道に乗り事業拡大を考えている場合は、子会社を設立しての事業展開を検討するはずです。
子会社は一般的に利用される言葉ではあるものの、実際に設立するとなると分からないことばかりではないでしょうか。
今回は子会社の概要やメリット・デメリット、具体的に子会社を設立する手順についてご説明します。
そもそも子会社とはなにか
全体のご説明をする前にまずは子会社とは何かについてご説明します。
子会社は会社法で以下のとおり定義されています。
つまり、議決権を保有していて自分たちの支配下にある会社を指します。
子会社は自分たちで出資して設立することもあれば、既存の法人が発行する株式などを取得して子会社にすることもあります。
今回は子会社の設立についてご説明するため、自分たちで出資するケースです。
難しい用語で説明されているため理解しにくいかもしれませんが、議決権の50%以上を取得すると親会社になり、取得されると子会社になると考えればわかりやすいでしょう。
ただ、実際には議決権が50%以上なくとも、実質的に支配下にある会社を子会社と呼ぶことが可能です。
今回は割愛しますが、議決権の取得を中心に、支配力が及んでいると子会社と呼べるのです。
子会社を設立する3つのメリット
子会社の設立には以下のとおりメリットがあるためそれぞれご説明します。
子会社設立のメリット1:損益が把握しやすくなる
子会社を設立することで損益の把握がしやすくなります。
例えば事業部門ごとに子会社を設立すれば、それぞれの事業でどのような損益状況にあるのか一目瞭然です。
損益の状況が把握しやすくなる理由は、子会社ごとに発生している経費が把握できるからです。
売上だけではなく経費が把握できることで、損益状況が正しく把握できます。
大規模な会社は間接費が多くなってしまい、部門ごとにどの程度の経費が発生してるのか把握できません。
大雑把な金額は把握できるものの、正確な数値を算出するのは現実的ではないでしょう。
売上と経費を把握して損益を算出するしかありません。
それに対して子会社を設立すれば、基本的に発生する経費はその事業に対するものだけです。
つまり、売上を得るために発生した経費が正確に把握でき、損益も正確に算出できます。
子会社設立のメリット2:設立費用は親会社が負担できる
新しく会社を設立する場合は親会社が出資して、そのお金を資本金に充当します。
設立の手続きが完了するまで法人は存在せずこの資本金もないため、発生する費用などは親会社の負担です。
つまり、設立する子会社側にお金が無くとも親会社の負担で設立できます。
例えば子会社の設立にあたって、手続きの代行を専門家に依頼したとします。
この時は初期費用や法定費用などが必要です。
この支払いは親会社がするため、設立される子会社の経費などには計上されません。
また、子会社を設立する前に市場調査などを実施するケースがあるでしょう。
このような調査をすると費用がかかりますが、これも親会社の負担です。
設立に関わる費用でも子会社の経費としては計上しないため、その点は理解しておくべきポイントです。
子会社設立のメリット3:トラブル発生時のリスクヘッジができる
万が一トラブルが発生した際に子会社を設立しておくとリスクヘッジができます。
例えば何かしらの理由で業務停止命令を受けた場合、業務が停止する範囲を最小限に抑えられるのです。
もし、大きなひとつの会社で業務停止命令を受けてしまった場合、会社の業務がすべて停止してしまう可能性があります。
このような状況になると経営に対するインパクトは非常に大きく、従業員に大きな迷惑がかかるでしょう。
会社が大きくなるとトラブル発生の際に影響範囲が大きくなりやすいのです。
しかし、事業ごとに子会社を設立しておくと、万が一業務停止命令を受けてもその会社の業務だけが停止します。
子会社として名を連ねる他の会社には業務停止の影響はありません。
会社を設立しておくことで万が一のリスクヘッジとなるのです。
上記は一例であり、他にも金銭面や人的リソース面などでもリスクヘッジができます。
ひとつの会社ではなく複数の会社に分けることで、何かしらのトラブルが発生しても影響範囲を絞れるのです。
子会社を設立する3つのデメリット
子会社の設立には以下のとおりデメリットもあるため、続いてはそれらについてもご説明します。
子会社設立のデメリット1:設立に時間とお金がかかる
子会社を設立するためには法人登記の手続きをしなければなりません。一般的に手続きは時間を要するもので、書類作成などを専門家に依頼するとお金もかかってしまいます。
また、時間をかけて書類などを自分たちで作成するとしても、法人登記には登録免許税など法定費用がかかります。
資本金の準備も必要となり、ある程度のお金が必要となるのは避けられません。
株式会社は定款の認証費用も必要となり、事務的な部分に様々なお金を必要とします。
子会社の設立には時間とお金がかかるため、会社の規模によっては負担が生じるかもしれません。
特に少人数の場合は設立手続きに人的リソースを割けない可能性があるため注意しましょう。
子会社設立のデメリット2:損益通算の対象外
子会社が完全子会社である場合を除き、親会社と子会社の損益通算はできません。
「子会社は損益通算できるからおトク」と考えている人が見受けられますが、誤った認識であるため改めましょう。
言い換えると100%子会社の場合は損益通算の対象となり、意図的に含めたり外したりできません。
例として、親会社が1億円の利益、子会社が1億円の損失である場合を考えてみます。
この時、子会社が完全子会社ならば損益通算ができるため、利益はゼロ円となり法人税などの支払いはなくなります。
しかし、完全子会社ではないならば損益通算ができず、親会社は1億円の利益に対して法人税などの支払いが必要です。
子会社の設立を考えている場合、損益通算のデメリットを意識しなければなりません。
完全子会社を設立しない限りは、1つの会社で会計処理する結果と大きく異なる可能性がある点は考慮しておきましょう。
子会社設立のデメリット3:子会社を管理するコスト
子会社は法人の一つであるため、存在するだけでコストが発生します。
例えば弁護士や会計士などと顧問契約を結ぶと、年額や月額の費用が必要です。
また、法人住民税には均等割と呼ばれるものがあり、法人が存在するだけで住民税の支払いが求められます。
また、子会社を設立すると親会社の人間による管理が必要です。
子会社だけで勝手に経営することはなく、親会社の管理下で経営します。
子会社を設立するにあたって管理する人材を配置すれば、その人材の人件費がかかるのです。
会社の設立にはメリットがあるため、分社化してメリットを活かしたいと考える経営者はいるでしょう。
ただ、子会社を増やせば増やすほど管理のコストは高まってしまいます。
子会社を設立する際は管理面でのデメリットを特に意識すべきです。
子会社を設立する大まかな流れ
基本的に子会社を設立する流れは、一般的に株式会社を設立する流れと大差ありません。
具体的には以下のような流れで進めます。
- 事前準備
- 定款の作成と認証
- 資本金の払込み
- 必要書類の作成
- 法人登記
部分的に注意しなければならない内容があるため、それらを踏まえながらご説明していきます。
設立の流れ1:事前準備
子会社の設立は株式会社の設立とほぼ同じであるため、株式会社の設立に必要な準備をしなければなりません。例えば以下の準備を進めます。
- 会社の名称や所在地など基本事項の決定
- 事業目的の決定
- 発起人の決定
- 役員の選定
- 資本金の額
これらは一例であり、株式会社の設立では様々な事前準備が必要です。
具体的な準備内容については以下をご参照ください。
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なお、子会社を設立する際の発起人は法人でも差し支えありません。
そのため、親会社が発起人となっていた後会社を設立するケースは多々あります。
ただ、この場合は親会社と子会社の事業目的が一致していなければなりません。
定款に定められている内容が一言一句同じである必要はないものの、客観的に一致していると判断できる記載が求められます。
設立の流れ2:定款の作成と認証
子会社も一般的な法人に間違いないため、設立にあたっては定款を作成します。
会社の憲法と呼ばれるほど重要な文章であるため、子会社の設立にあたっては丁寧に作成するようにしましょう。
また、定款の内容には法律で定めがあり「絶対的記載事項」と呼ばれる内容を含めなければなりません。
具体的には以下の内容が定款には必須です。
- 事業目的
- 商号
- 本店所在地
- 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
- 発起人の氏名又は名称及び住所
- 発行可能株式総数
なお、会社の定款には上記の絶対的記載事項以外にも任意の事項を掲載できます。
事前に決めておかなければ後ほどトラブルになるような事項があるならば、できるだけ定款に含めるようにしておきましょう。
子会社は基本的に株式会社であるため、公証人役場で定款を認証してもらう必要があります。
全ての株式会社は公証人役場で定款の認証を受ける必要があるため、子会社設立に限った話ではありません。
直接出向いて認証してもらう方法と電子的な方法があり、必要に応じて適切なものを選択します。
設立の流れ3:資本金の払込み
子会社の設立に必要な準備が整えば、資本金の払込みをしなければなりません。
資本金は会社の運営資金となる重要なお金であるため、定款に記載されているとおりの金額を払込みする必要があります。
ご説明したとおり、子会社を設立する場合、必要なお金は親会社が負担します。
つまり、子会社の資本金は親会社が負担して、払込みしなければなりません。
繰り返しですが、子会社が負担するわけではないため、その点は勘違いしないように注意しましょう。
また、資本金の払込みには親会社の口座を利用します。
法人登記が完了していないため、子会社の法人口座は存在していないのです。
この点も勘違いしやすい部分であるため意識しておきましょう。
設立の流れ4:必要書類の作成
子会社を設立するためには必要な書類を作成しなければなりません。
一般的な会社設立と同様10種類程度の書類作成が必要で、例えば以下の書類を作成します。
- 定款
- 株主全員の印鑑証明書
- 株式会社設立登記申請書
- 役員)の就任承諾書
- 発起人決定書
- 払込証明書
- 印鑑届書
- 役員の印鑑証明
状況によって必要となる書類は異なるため、どのような書類が必要となるかは法務局のWebサイトを参照したり専門家に相談したりしておくと良いでしょう。
書類に不足があると子会社を設立する手続きで手戻りが発生するため注意が必要です。
また、一部の書類については自分で作成するのではなく、役所などに出向いて発行してもらう必要があります。
自分の裁量ですぐに発行できるものではないため、そのような書類は事前に計画を立てて取得しておくようにしましょう。
設立の流れ5:法人登記
必要な書類作成が完了すれば、法務局に出向いて法人登記の手続きをします。
スムーズに子会社を設立するためにも、書類の作成ができればすぐ提出するようにしましょう。
会社の設立にあたって書類作成を専門家に依頼しているならば、窓口にそのまま書類を提出すれば良いでしょう。
内容に間違いはないと考えられるため、そのまま窓口に提出してもトラブルが起きる可能性は低いと考えられます。
もし、書類作成を自分たちでしたならば、書類の提出前に法務局の別窓口で確認してもらうと良いでしょう。
提出書類を事前に確認してくれる窓口があり、内容に不備があるとその場で指摘してもらえ 修正が可能です。
書類の内容に不安を抱いているならば、事前に確認してもらうのがベターでしょう。
書類を提出してから子会社が設立されるまで2週間程度は必要となります。
書類を出せばすぐに設立されるわけではないため、設立までのリードタイムは意識しておくべきです。
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まとめ
子会社の設立についてご説明しました。
子会社には3つの種類があり、親会社がどの程度支配しているかによって微妙に異なります。
完全子会社ではない場合、損益通算ができないなどの課題があるため意識しておくべきです。
子会社は基本的に株式会社となり、設立方法は一般的な株式会社の設立と大差ありません。
事業内容など意識するポイントはありますが、子会社を設立するにあたって独自の手続きはないと考えておきましょう。
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