会社を設立する際、必ず作成しなければならない書類の一つに「定款」があります。定款は会社の運営に関わる重要な規約であり、その中でも「事業目的」は特に重要な項目です。事業目的は、会社がどのようなビジネスを行うかを明確に定めたものであり、定款に記載された事業目的以外の活動を行うことは原則として認められていません。
しかし、会社の成長に伴って新しい分野への進出を計画している場合や、将来的な事業展開を見据えて広範囲の事業目的を設定したい場合もあるでしょう。
本記事では、事業目的をたくさん設定するメリット・デメリット、注意点、そして成功するためのコツについて詳しく解説します。
1. 事業目的の基本的な考え方
事業目的は、会社が行う事業内容を定款に記載するものであり、法的にも重要な意味を持ちます。定款に記載された事業目的が不明確だったり、現実的でないと法務局での登記が拒否されることがあります。また、会社が新たに事業を開始する際、その事業が定款に記載された事業目的に含まれていない場合には、事業を行うことができないため、事前に定款変更の手続きを行う必要があります。
1-1. 法律上の要件
日本の会社法では、会社の設立時に定款に事業目的を明確に記載することが義務付けられています。事業目的が適切に記載されていないと、法務局での登記が認められないことがあり、事業を開始することができません。記載内容は具体的かつ現実的でなければならず、単に「ビジネスを行う」といった抽象的な表現では不十分です。
1-2. 事業目的の柔軟性
一方で、会社の成長や事業の多角化を見据えて、柔軟な事業目的の設定も必要です。現在は行っていない事業でも、将来的に関連性が出てくる可能性のある分野を含めておくことで、将来の事業展開に対応できるようになります。このように柔軟に事業目的を設定しておくことで、定款変更の手間を省くことができます。
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2. 事業目的をたくさん設定するメリット
事業目的を広範囲にわたって設定することには、いくつかのメリットがあります。特に、将来的に複数の事業を展開する予定がある場合や、ビジネスの方向性が変わる可能性がある場合には、あらかじめ多くの事業目的を設定しておくことが役立ちます。
2-1. 事業の多角化に対応できる
会社設立時にたくさんの事業目的を設定しておくことで、事業の多角化に迅速に対応できます。例えば、最初はIT関連のサービスを中心に事業を展開していた企業が、後に不動産や人材派遣などの分野に進出する場合、これらの事業目的をあらかじめ定款に記載しておくことで、定款変更の手間を省けます。
2-2. 新規事業の立ち上げがスムーズ
新たな事業を始める際、事業目的が定款に記載されていれば、スムーズに事業を開始できます。定款変更には時間や費用がかかるため、あらかじめ関連分野の事業目的を多く記載しておくことで、迅速に新規事業を立ち上げることが可能です。
2-3. 信用力の向上
定款にたくさんの事業目的を記載していることで、企業としての事業領域が広いことをアピールでき、取引先や金融機関からの信用力向上につながる場合があります。特に、大手企業や金融機関との取引においては、事業目的が幅広い企業は将来性があると評価されることが多く、融資や契約の際にも有利に働きます。
3. 事業目的をたくさん設定するデメリット
一方で、事業目的をたくさん設定することにはデメリットも存在します。無計画に事業目的を広げすぎると、会社運営においてさまざまな問題が生じる可能性があります。
3-1. 目的が曖昧だと信頼を損なう
事業目的があまりにも広範で、具体性がない場合、取引先や金融機関からの信頼を損なう可能性があります。多くの事業目的を掲げている企業が、実際には何も手がけていない場合、「この会社は何をやっているのか不明確だ」と見なされることがあります。
3-2. 定款変更の手間とコスト
事業目的を過剰に設定しすぎると、実際に必要な変更が生じた際に、定款変更の手間が増える可能性があります。また、事業の方向性が変わった場合や新たな事業を始める際に定款を変更するには、株主総会での決議が必要であり、変更手続きにはコストがかかります。
3-3. 登記審査が厳しくなる
法務局での登記審査の際、事業目的が曖昧すぎる場合や現実的でない場合には、登記が認められないことがあります。特に、新興企業やスタートアップの場合、事業内容があまりにも広範囲にわたると、審査が厳しくなる傾向があります。
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4. 事業目的設定時の注意点
事業目的を定款に記載する際には、いくつかの注意点があります。これらを押さえておくことで、将来的なトラブルや手続きの煩雑さを避けることができます。
4-1. 具体性を持たせる
事業目的を設定する際には、具体的な表現を心がけることが重要です。例えば、「物品の販売」ではなく、「食品や日用品の販売」といった具体的な内容にすることで、事業内容が明確になります。曖昧な表現や漠然とした事業目的は、法務局での審査時に問題となることがあるため、可能な限り具体的に記載することが推奨されます。
4-2. 将来の事業拡大を見据えて広めに設定する
事業目的を設定する際には、将来の事業拡大を見据えて、現在の事業だけでなく、将来的に進出する可能性のある分野も含めて設定しておくことが重要です。例えば、IT関連のサービスを提供している企業であれば、将来的にソフトウェアの開発や広告事業など、関連分野の事業目的も含めておくと、柔軟に事業展開が可能となります。
4-3. 法律に違反しないか確認する
特定の事業分野では、法律による規制が存在するため、事業目的を設定する際にはその分野の法律を確認する必要があります。例えば、金融業や不動産業など、許認可が必要な業種では、事前に許可を得ていないと事業を行うことができないため、事業目的の記載には注意が必要です。
5. 事業目的を追加・変更する際の手続き
会社の事業が成長するにつれて、新たな分野に進出する必要が生じた場合や、既存の事業を縮小する場合には、定款の事業目的を変更する手続きが必要となります。以下は、事業目的を追加・変更する際の一般的な手続きです。
5-1. 株主総会での決議
定款の事業目的を変更する際には、株主総会での決議が必要です。定款変更は会社の基本的なルールを変更する行為であるため、株主の過半数の賛成を得なければなりません。
5-2. 法務局への申請
株主総会での決議が行われた後、法務局に定款変更の登記申請を行います。この際、変更後の定款を添付して申請する必要があり、変更手続きには登録免許税が発生します。
6. まとめ
定款の事業目的設定は、会社設立時に非常に重要な要素です。将来の事業拡大や方向性の変化に対応できるよう、広範な事業目的を設定することは有効ですが、無計画に多くの目的を設定すると、かえって信頼を損なったり、登記審査が厳しくなるリスクもあります。
事業目的を設定する際には、現実的かつ具体的な内容にし、将来的な成長や多角化にも対応できるように柔軟に考慮することが成功の鍵です。事業の実態に合った目的を設定することで、会社の成長を支援し、効率的な運営を目指しましょう。
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