個人事業主が法人化しない理由とは?逆に、法人化しないのはもったいない理由はあるのか?
個人事業主が法人化しない理由とは、どのようなことがあるのでしょうか。
個人事業主は、売り上げが増えてくると法人化した方が良いという話を聞きます。
しかし実際に法人化しない理由というのが、あることが分かりました。
個人事業主が法人化しない理由について、説明していきます。
その後、逆に個人事業主が法人化しないのはもったいない理由も説明していきます。
最後に法人化する理由になるタイミングについて、どのような基準があるのか見ていきましょう。
個人事業主から法人化しない理由とは
個人事業主が、法人化しない理由は、以下の通りです。
- 法人化には、お金がかかる
- 赤字でも住民税がかかる
- 税務調査が入りやすい
- 社会保険の負担がある
- 顧問税理士への報酬費用がかかる
- 自分の給料を売上などによって自由に変えられない
- 接待交際費に制限がある
法人化しない理由について、それぞれ説明していきます。
法人化しない理由1:法人化にはお金がかかる
法人化しない理由の1つ目としては、法人化するのにお金がかかるということです。
株式会社の場合には、以下の費用がかかります。
定款の認証手数料 | 5万円 |
定款の謄本手数料 | 約2,000円 |
登記の際の登録免許税 | 15万円以上 |
株式会社より安く設立できる合同会社でも、以下の費用がかかります。
登記の際の登録免許税 | 6万円 |
それぞれ、自分で設立し紙の定款で設立した場合は、その他に収入印紙代4万円がかかります。
そして、登記事項の変更にも登録免許税がかかります。
役員の変更登記は1万円、事業目的の変更登記は3万円が、かかるのです。
以上が、費用がとてもかかるため、法人化しない理由です。
法人化しない理由2:赤字でも住民税がかかる
法人化しない理由の2つ目は、法人化すると赤字でも住民税がかかるということです。
法人の場合には、利益がなく赤字だったとしても、法人住民税の均等割7万円が毎年かかります。
一方で個人事業主の場合には、赤字だった時は、所得税、住民税、事業税などの税金は全くかかりません。
個人事業主としてほとんど売り上げがない状態の場合には、法人化しない理由になるのです。
法人化しない理由3:税務調査が入りやすい
法人化しない理由の3つ目は、税務調査が入りやすくなるということです。
個人事業主でも税務調査が入ることはありますが、法人化した方が税務調査がより入りやすくなります。
法人化すると税務調査が入りやすくなる理由は、以下の通りです。
- 個人事業主の数は多いが、法人は比較的少ない
- 法人は帳簿が整理されており、税務調査しやすい
- 法人の方が事業規模が大きいため、税務調査する意味がある
特に脱税などをしてなければ、税務調査のデメリットを考える必要はありませんが、それでも税務調査が入ると時間を取られます。
以上のようなことで、法人化しない理由の一つとなります。
法人化しない理由4:社会保険の負担がある
法人化しない4つ目の理由は、社会保険の負担が大きいということです。
法人化して会社から給料をもらうと、法人向けの社会保険と厚生年金の加入が必要になります。
個人事業主でも国民健康保険と国民年金の加入は義務付けられていますが、法人化すると厚生年金の加入も必要となってきます。
また法人化の場合は、社員の社会保険や厚生年金への支払いが必要となってきます。
ただし法人の場合は、健康保険と年金の保険料は、会社と個人がそれぞれ半分ずつ負担します。
会社が負担した保険料は、会社の経費にできます。
それでも法人化すると社会保険に関する費用が増えるため、法人化しない理由の一つになります。
個人事業主と法人化した場合の健康保険の負担は、ほぼ同じです。
なぜならば個人事業主の場合にかかる費用と、法人の社長が払う額(半分会社が負担、半分社長個人が負担の合計)は、同じ額になるからです。
一方で年金については、法人化した方がよりかかるため、法人化しない理由の一つになります。
個人事業主と法人化した場合の、年金保険の比較をします。
個人事業の収入が800万円の場合、国民年金は年間20万円程度です。
一方で、法人社長の所得が800万円の場合には、年金の負担額は年間およそ130万円です。
厚生年金の部分があり、将来年金がもらえる額は増えますが、その分負担額が増えてきます。
法人化しない理由5:顧問税理士への報酬費用がかかる
法人化しない5つ目の理由は、税理士への報酬費用が発生するということです。
法人化しても、個人事業主の時のように自分で法人税の申告をすれば、税理士の顧問契約費用はかかりません。
しかし法人税申告書は、個人の確定申告に比べて少し複雑になっており、自分で申告するにはかなりの時間を使ってしまいます。
自分で調べて申告するには、時間と手間がかかりますし、間違いが起きることもあります。
法人税申告については税理士に任せた方がいいでしょう。
しかし税理士に任せると税理士の顧問料がかかるため、法人化しない理由の一つになります。
法人化しない理由6:自分への給料を自由に変えられない
法人化しない理由の6つ目は、自分の給料を自由に変えられないということです。
例えば、一年の終わりに利益を見て、自分の給料を調整するということをしたくなるかもしれませんが、法人化した場合には自由に決められません。
法人化した時には、自分への役員報酬の金額は、事業年度が始まって3ヶ月以内に決定しないとならないことになっています。
会社の業績に応じて、自由に毎月役員報酬の金額を変えて、節税するということができないのです。
一方で、個人事業主の場合には、売り上げに応じて自由に自分の取り分を決められます。
役員報酬をいつでも自由に変えられないというのが、法人化しない理由のひとつです。
法人化しない理由7:接待交際費に制限がある
法人化しない理由の7つ目は、接待交際費に制限があるということです。
そこまで大規模な接待交際費をかけない人にとっては、あまり関係ありませんが、接待交際費に関しては個人事業主の方が有利になっています。
個人事業主の接待交際費は、年間の金額に上限ありませんが、法人の場合には接待交際費に年間の金額に制限があります。
- 中小企業の接待交際費は、800万円まで
- 大企業の接待交際費は、一切経費にできない
ただし一人当たり5,000円以下の飲食代については、法人でも全額を経費にできます。
人によって接待交際費の多い事業を行っている人は、法人化しない理由の一つになるでしょう。
法人化しない理由があっても法人化したほうがいいことも
法人化しないで良かったとしても、法人化した方がいいこともあります。
法人化しないのはもったいない理由は、以下の通りです。
- 自分への給料所得で節税できる
- 法人は有限責任
- 消費税が2年間免除される可能性がある
- 自分や家族へ退職金が払える
法人化しない理由とともに、法人化しないのはもったいない理由について、それぞれ見ていきましょう。
法人化しないのはもったいない理由1:自分への給料所得で節税できる
法人化しないのはもったいない理由の1つ目として、自分の給料所得で節税できるということです。
法人化した場合には、自分の給料を会社の経費にできます。その分節税できます。
さらには、社長が受け取った給料は、給料所得控除を活用できます。
個人事業主の場合には、青色申告特別控除の65万円があります。
しかし給料所得控除の方が、控除額は高い場合があります。
給料所得控除は、年間給料収入が162万5,000円までは控除額が65万円と、青色申告特別控除と同じです。
しかしそれよりも大きい収入になると、給与所得控除が大きくなるため、法人化しないのは、もったいない理由になります。
例えば給料所得800万円になった場合には、給与所得控除は200万円です。
個人事業主の青色申告特別控除65万円に比べて、135万円も控除額が増えます。
所得税20%住民税10%を考えると、給与所得控除の場合には約40万円の節税になります。
しかし法人化した場合には、均等割7万円の税金がかかるため、33万円の節税と言えるでしょう。
給料所得が多い場合には、法人化しないのはもったいない理由になります。
法人化しないのはもったいない理由2:法人は有限責任
法人化しないのはもったいない理由2つ目は、法人は有限責任ということです。
個人事業主は事業での、全責任を負います。事業に失敗した場合には、個人がその負債を負います。
しかし会社の場合には、有限責任であるため、出資者は出資した金額の責任を負うだけです。
そのため出資するだけの関わりである場合には、法人化しないのはもったいない理由になります。
しかし、個人事業主が法人化して会社の社長になった場合には、話が別です。
銀行から融資を受ける場合には、経営者個人が連帯保証人にならないと資金を貸してくれません。
さらに損害賠償請求の訴訟になった場合には、会社と個人である経営者の両方を相手に訴えられます。
個人事業主が法人化した場合の会社の代表としては、個人事業主の場合と責任はあまり変わらないのです。
出資者としてのみ法人化にかかわる場合には、法人化しないのはもったいない理由となるでしょう。
法人化しないのはもったいない理由3:消費税が2年間免除
法人化しないのはもったいない理由3つ目は、消費税が2年間免除されるということです。
法人化すると最大2年間消費税の免税事業者になれます。
これは、消費税の課税事業者というのは、前々事業年度の売り上げで判断されるからです。
新しく法人化した場合には、過去に事業年度がなく個人事業時代の売上も関係なくなります。
例えば売上が1,000万円で法人化した場合には、簡易課税のみなし仕入率は50%となり、納税する消費税は40万円となります。
この40万円が課税されなくなります。
しかし実際に40万円は経費として計上できるため、実際に消費税の得する分は23万円程度です。
消費税の免税があるものの、実際よりは節税にはなっていないのが事実です。
それでも節税できるため、法人化しないのはもったいない理由となるでしょう。
法人化しないのはもったいない理由4:自分や家族へ退職金を払える
法人化しないのはもったいない理由の4つ目は、自分や家族に退職金が支給できるということです。
退職金は、通常の給料や賞与に比べて、所得税が安いため、節税になります。
しかし、個人事業主の場合には、事業主自身と家族である青色事業専従者に対しては、退職金は支給できないのです。
個人事業主の場合には、小規模企業共済制度を利用すれば、事実上の退職金制度を活用できます。
小規模企業共済制度を利用しない場合には、法人化しないのはもったいない理由になります。
法人化する理由になるタイミングとは?
法人化する理由になるタイミングとは、事業所得が500万円を超えるか超えないかが基準になっています。
事業所得とは、事業収入から経費と青色申告特別控除65万円を引いた額です。
事業所得が500万円の場合の、個人事業主と法人化した場合の税金は、以下の通りです。
個人事業主 |
法人 |
||
所得税 |
約27万円 |
法人税等 |
約7万円 |
住民税 |
約35万円 |
所得税 |
約27万円 |
事業税 |
約11万円 |
住民税 |
約35万円 |
合計 |
約73万円 |
合計 |
約69万円 |
法人は1人で、給料を受け取った場合の計算です。事業所得が500万円の場合は、法人化したほうが4万円安くなります。
事業所得が800万円の場合は、以下の通りです。
個人事業主 |
法人 |
||
所得税 |
約79万円 |
法人税等 |
約7万円 |
住民税 |
約60万円 |
所得税 |
約79万円 |
事業税 |
約26万円 |
住民税 |
約60万円 |
合計 |
約164万円 |
合計 |
約146万円 |
事業所得800万円の場合、法人が1人で受け取れば、法人化した方が約19万円節税効果があります。
【まとめ】個人事業主から法人化しない理由について整理しよう
個人事業主が法人化しない理由は、以下の通りです。
- 法人化には、お金がかかる
- 赤字でも住民税がかかる
- 税務調査が入りやすい
- 社会保険の負担がある
- 顧問税理士への報酬費用がかかる
- 自分の給料を売上などによって自由に変えられない
- 接待交際費に制限がある
一方で以下のように、法人化しないにはもったいない理由もあるので、考えておきましょう。
- 自分への給料所得で節税できる
- 法人は有限責任
- 消費税が2年間免除される可能性がある
- 自分や家族へ退職金が払える
個人事業主から法人化する理由になるタイミングは、事業所得が500万円の場合が境となります。
事業所得とは、事業収入から経費と青色申告特別控除65万円を引いた額です。
法人化しない理由についてしっかり整理し、法人化した方がいいのかも考えて決めましょう。
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