個人で仕事をしていると悩みの種になるのが「どのタイミングで法人化するか」です。
法人化した方が良い印象を持っているものの、具体的なタイミングを決めかねている人はよく見受けられます。
法人とはいくつもの観点から考えるべきですが、ひとつの観点に売上があります。
売上が増えた段階で法人化することでメリットを受けられるのです。
今回は売上に注目して、法人化の目安をご説明していきます。
売上によっては法人化を検討すべき
法人化するかどうか悩んだ場合は、売上金額に注目してみるようにしましょう。
重要な判断基準になるため、まずは法人化と売上についてご説明します。
最初から法人化する必要はない
基本的には何かしらのビジネスを始めるにあたって最初から法人化する必要はありません。
部分的に法人でのみ営めるビジネスがありますが、それ以外については個人事業主で差し支えないのです。
これからビジネスを始める人の中には「最初から法人を設立した方が良いのか」との疑問を待つ人がいるかもしれません。
これからご説明するとおり法人にはメリットがありますが、その反面でデメリットもあります。
そのため、特別な理由がない限りは、売上が増えるまで法人化する必要はありません。
何も考えずに法人を設立してしまうと、メリットではなくデメリットだけを被ることになりかねません。
売上は法人化するかどうかの重要な指標となるため、この金額を中心に判断するようにしていきましょう。
売上が安定してから法人化を検討する
売上の目安を超えたからといってすぐに法人化する必要はありません。
売上が安定してから法人化するようにしましょう。
個人事業主は売上が安定しない人も多いため、焦って法人化すると後悔する可能性があります。
逆に売上が安定しているならば、目安を超える前に法人化を検討しても良いでしょう。
いずれは法人化を検討しなければならない状況であるため、前もって検討して準備を進めても差し支えありません。
法人化には時間を要するため、将来を見据えて行動することも重要です。
売上額によっては法人化することがデメリットになってしまいます。
安定した売上があることでメリットを感じられるようになるため、これからご説明する目安を超えたからといって焦って行動する必要はありません。
法人化を検討する売上の目安
法人化を検討するタイミングとしては、「売上額」と「売上から経費を差し引いた利益」のふたつの観点があります。
どちらの観点も理解しておくべきであるため、目安の金額についてご説明します。
売上1,000万円程度
売上が1,000万円を超えるタイミングで法人化を検討すると良いでしょう。
1,000万円は売上の大台ともいえる額で、わかりやすい目安でターニングポイントとなります。
売上1,000万円が目安になる理由は、このタイミングで消費税を納める義務が生じるからです。
基本的に事業者は消費税を納めなければなりませんが、売上が1,000万円未満の場合は納税の義務が生じません。
そのため、売上が少ないうちは消費税を納めていない人が多いはずです。
売上が1,000万円を超えると消費税を納める義務が生じますが、このタイミングで法人化すると、約2年間は消費税を納めなくて済みます。
これは個人から法人にしても消費税を納める義務は引き継がれないことに由来します。
法人化すると法人として納める義務が生じてから2期後に納税する義務が生じるのです。
消費税の観点から見ると、売上1,000万円は法人化する目安です。
納税の義務が先延ばしされるため、実質的には節税できます。
年間利益500万円程度
年間利益が500万円程度もひとつの目安です。
こちらは売上ではなく、売上から経費を差し引いた利益で考えています。
利益と課税所得は少々異なるため、今回は利益にだけ注目しましょう。
個人で利益が増えてくると、納める税額が加速度的に増えてきます。
これは個人に課される所得税には累進課税制度が採用されているからです。
所得金額が増えれば増えるほど税率が高まり、納める税金が増えてしまいます。
しかし、このタイミングで法人化すると、税金が所得税から法人税に変化します。
利益の額によっては所得税よりも法人税のほうが税率が低くなり、支払う税金が少なくなるのです。
課税される利益の額が同じでも、法人化によって税率が下がれば節税できます。
所得税と法人税は税率が異なるため、諸々を踏まえると利益500万円程度が法人化の目安です。
状況によってはもう少し早い段階から法人化を検討しても良いかもしれません。
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売上によって法人化する4つのメリット
売上が増加している段階で法人化すると4つのメリットがあるため、それらについてもご説明します。
法人化のメリット1:社会的信用力が高まる
一般的に法人は個人よりも信用力が高いと考えられています。
そのため法人化すれば、社会的信用力の向上が見込めます。
売上も安定していて法人化すれば、より信用力を高められると考えてよいでしょう。
法人化によって信用力が高まる理由にはいくつかの考え方があります。
ただ、曖昧な理由ですが「法人の方が信用力が高いイメージがあるから」という部分が大きいでしょう。
複数人数で経営されているなど、個人のデメリットを解消できるイメージがあるようです。
もちろん、個人でビジネスをしている人は多く、そのような人たちの信用力が低いわけではありません。
ただ、一般的には法人の信用力が高いとのイメージが植え付けられています。
そのため、売上が増えたならばその機会に法人化を考えるようにしてみましょう。
法人化のメリット2:税金の仕組みが変化する
税金の仕組みが変化することは大きなメリットです。
法人化の目安でもご説明したとおり、個人と法人では税金の仕組みに違いがあります。
売上や課税所得によっては、法人化によって大きく税金を下げられるのです。
繰り返しですが法人化すれば必ず税金が下がるとは限りません。
売上によってこのメリットを受けられるかどうかは変化します。
売上の目安についてはご説明したため、目安を満たしていないならば無理に法人化する必要はないでしょう。
なお、仕組みが変化して税金が下がる可能性はありますが、一方で法人住民税は必ず納税しなければなりません。
目安よりも少ない状況で法人化してしまうと、法人住民税の影響で逆に損をする可能性があります。
必ず目安金額を踏まえて法人化するか検討してください。
法人化のメリット3:経費の範囲が広がる
法人化すると認められる経費の範囲が広がります。
売上が増えると経費も増えやすいため、計上できる金額が増えることは大きなメリットです。
今回は売上金額の目安を中心にご説明しています。
ただ、ビジネスの内容によってどの程度の経費が発生するかには大きな違いがあるため、経費の額も考慮しなければなりません。
法人化しても計上できる経費の金額に大きな差がなければ、メリットが薄れてしまいます。
どの程度の経費が必要となるかはビジネス内容によって大きく異なります。
そのため、経費については具体的な目安を示すのが難しくなってしまいます。
経費面でのメリットを受けられるかどうかは、税理士などの専門家に相談してみるのが理想的です。
なお、相談する際には発生している経費について整理しておきましょう。
具体的にどの程度の経費が発生してるのか説明できなければ試算してもらえません。
法人化のメリット4:赤字の繰越が9年になる
個人事業主で青色申告を利用している場合、赤字は3年間繰越できます。
繰越ができれば支払う税金を抑えられるため、繰越できるかどうかは重要な部分です。
法人化するとこの期間がさらに延長され、最大で9年間繰越できます。
非常に長い期間の繰越ができるため、何かしらの理由で大きな赤字を抱えると中長期的に税金を抑えやすいメリットがあるのです。
視点を変えると、中長期的に赤字が続くような状況になるならば、法人化の目安と言えるでしょう。
例えば、大規模な投資で赤字が続く状況が見込まれれば、法人化することで中長期的に繰越できます。
売上や利益を中心にご説明していますが、赤字の繰越もひとつの目安となるでしょう。
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法人化の目安に達したらまずはプロへ相談
売上が増えて法人化を検討しているならば、できるだけ専門家に相談しましょう。
ご説明しているとおり法人化を考える売上や利益の目安はありますが、最終的には多角的な判断が必要です。
素人だけでは判断できない部分もあるため、専門家に相談して意見してもらうに越したことがありません。
相談するタイミングは目安の売上を超えてからで差し支えありません。
売上が少ない状況で法人化してもメリットが薄れてしまうため、売上が増えてから相談するようにしましょう。
また、売上が越えれば必ず相談するものではなく、売上が安定したり安定する見込みが立ったりしてからでも遅くありません。
何かしら特別な理由で一時的に売上が増えたのならば、それを除外して判断した方が良いでしょう。
まとめ
個人事業主が法人化する目安についてご説明しました。
「法人化にはメリットがある」との理解だけが独り歩きする傾向にありますが、実際は売上によって判断すべきです。
目安の売上に達していないにもかかわらず法人化すると、メリットではなくデメリットを被るかもしれません。
売上の目安は状況によりますが、1,000万円を超える・利益が500万円を超える場合です。
税金の仕組みを踏まえると、この程度の売上がある場合は法人化することでメリットを受けられる可能性が高まります。
もし、売上の目安を超えていて法人化を考えるならば、経営サポートプラスアルファにご相談ください。
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