「○○ホールディングス」との名称を利用する企業は数多くあります。
あまり意識していない人は多いかもしれませんが、皆さんが日頃利用している企業も実はホールディングスに該当するかもしれません。
それぐらい、ホールディングス化する会社が増えてきています。
ホールディングス化している企業はいくつも見受けられますが、そもそもホールディングス化を理解できていない人が多いでしょう。
今回は耳にする機会も増えた「ホールディングス」とはどのような事業形態であるのかご説明していきます。
ホールディングス化の基礎知識
ホールディングスと呼ばれる機会が多いですが、実態としては持株会社です。
持株会社の意味を理解されていない場合がありますが、持株会社は経営目的で子会社を保有する親会社を指します。
投資目的ではなく経営目的である点がポイントです。
親会社は保有している株式を主な収益源としているかどうかで2種類に分けられます。
株式を収益としている場合は「純持株会社」、株式会社も事業を行っている場合は「事業持株会社」と呼ばれるのです。
どちらの場合でも、ホールディングス化すると複数の会社を束ねる持株会社を設立できます。
一つの大きな会社を設立するよりも管理しやすいなどのメリットを生み出すのです。
ホールディングス化で期待できるメリット
ホールディングス化によって期待できるメリットにはいくつもあります。
- 個々の責任範囲が明確になる
- 節税につながる可能性がある
- 経営スピードが向上する
- M&Aに対応しやすい
今回はそれらの中でも4つをピックアップしてご説明します。
ホールディングス化のメリット1:個々の責任範囲が明確になる
ホールディングス化してそれぞれの会社の規模を小さくすることで、それぞれの会社の責任範囲が明確になります。
会社の規模が大きいと責任の所在が分かりにくくなってしまいますが、ホールディングス化により会社の規模が小さくなれば所在は明確です。
責任の所在が曖昧である状態は会社の経営においてリスクとなりかねません。
「自分の責任にはならない」と考える人が一定数いると、それぞれが適当な判断をしてしまう可能性があるからです。
このような状況では責任を持った経営となりませんが、ホールディングス化して責任が明確になればそれが改善されます。
ホールディングス化のメリット2:節税につながる可能性がある
ホールディングス化して子会社を設立することは節税につながる可能性があります。
節税は親会社の観点と子会社の観点があり、どちらにおいても節税効果を発揮できる可能性があると考えてよいでしょう。
まず、子会社を設立することによって、計上できる経費の金額が増加します。
例えば交際費についてホールディングス化しなければ上限金額以上は計上できませんが、ホールディングス化するとそれぞれの企業で計上できます。
そのため、合計すると計上できる経費の金額が増加し、ホールディングス全体での節税効果を生み出します。
また、ホールディングス化した場合、親会社である持株会社は基本的に事業を営みません。
親会社が個別に事業を営む場合もありますが、子会社の株式を保有するだけのケースがほとんどです。
この場合は株式の配当などだけが収益となるため、収益が低くなり税金が少なくなりやすいのです。
なお、注意しなければならないのは、節税だけを意識してホールディングス化しないことです。
不自然なホールディングス化は国税庁に指摘される可能性があり、脱税と見なされてしまうかもしれません。
節税以外の正当な理由がある状態でホールディングス化するのが理想的です。
ホールディングス化のメリット3:経営スピードが向上する
会社の規模が小さくなり責任の所在なども明確になることで、経営スピードが向上するメリットがあります。
短時間で様々な物事を決定できるようになり、他社に遅れを取らないような経営が可能です。
会社の規模が大きくなってしまうと、経営判断が遅くなってしまいがちです。
これは全社的に与える影響を考慮したり、判断の責任者が複数人いることで事務手続きに時間がかかったりするからです。
会社の規模が大きくなればなるほど、このような問題が顕著になってしまいます。
しかし、ホールディングス化すれば会社の規模が小さくなるため、このような問題は最小限に抑えられます。
それぞれの物事において意思決定者や責任の所在が明らかになり、スムーズに行動できるからです。
また、組織が小さくなることで必要な関係者の数も少なくなり、事務手続きにかかる時間も最小限に抑えられます。
ホールディングス化のメリット4:M&Aに対応しやすい
基本的にホールディングス化では事業内容ごとに子会社を設立します。
複数の事業をまとめて1つの法人にする場合はありますが、それでも全く関係のない事業をまとめて子会社にする可能性はほぼありません。
このように事業ごとに子会社化されているため、親会社としては必要に応じてM&Aが可能です。
特定の事業を担う子会社だけを売却したり、逆に特定の事業を営む会社を買収したりできるのです。
大規模な会社で一部の事業だけを売却するのは難しいですが、ホールディングス化により子会社化されていれば負担は最小限に抑えられます。
近年は様々な理由でM&Aが見受けられますが、この手続きは関係者に負担をかけるものです。
必ず成功するとも限らず、時間だけが無駄になってしまう場合もあるぐらいです。
しかし、ホールディングス化していれば売却する場合も買収する場合もスムーズに物事を進めやすいと理解しておきましょう。
ホールディングス化で生じるデメリット
ホールディングス化にはデメリットも存在しています。
- 管理コストが増加する
- 各会社の連携が難しい
続いては知っておきたいデメリットについてもご説明します。
ホールディングス化のデメリット1:管理コストが増加する
ホールディングス化では新しく子会社を設立します。子会社の設立にはコストがかかりますし、設立してからもランニングコストがかかります。
ホールディングス化して子会社を増やせば増やすほど管理コストが増加してしまうのはデメリットです。
まず、ホールディングス化で子会社を設立すると、それぞれの企業に総務部門を設置しなければなりません。
同じ会社であれば数人で済むような業務内容でも、企業が増えるとそれぞれに設置しなければならないのです。
同じ業務を担う人が次々と増えてしまい、人件費が高まってしまいます。
また、法人を設立すると「法人住民税の均等割」と呼ばれる税金を負担しなければなりません。
この税金は法人が赤字であるかどうかにかかわらず負担しなければならないものです。ホールディングス化で子会社が増えたら増えただけ負担する必要があり、管理コストが増加する要因となってしまいます。
他にも、企業では弁護士や税理士などと顧問契約を結ぶのが一般的です。
このような顧問契約もそれぞれの子会社で結ぶ必要があり、顧問料が発生してしまいます。
ある程度はボリュームディスカウントが適用されるかもしれませんが、管理コストが増加するのは間違いないでしょう
ホールディングス化のデメリット2:各会社の連携が難しい
ホールディングス化では複数の子会社を設立しますが、この子会社間の連携が難しい点はデメリットです。
同じホールディングスに属しているとはいえども、企業秘密など子会社間で共有できない情報が存在します。
業務に関わる重要な情報提供が難しくなってしまい、スムーズな連携ができなくなってしまうのです。
また、同じ会社に属している場合と比較すると、連絡や会議の設定なども負担になってしまう可能性があります。
例えば他の子会社のスケジュールを閲覧できないならば、気軽に電話したり会議の設定をしたりできません。
何かしら相談事があるたびにお伺いが求められ、業務効率が下がる可能性があります。
複数の会社が協力することで業務効率が高まり新しいシナジーを生み出す場合もあります。
ただ、ホールディングス化で複数の会社にすることによって、連携が煩雑になりデメリットがメリットを上回ってしまう可能性もあります。
事前に予想しにくい部分ではありますが、企業間の情報連携については意識しておくべきでしょう。
ホールディングス化を実現する3つの手法
ホールディングス化を実現する方法は状況に応じて異なり、主に以下の手法です。
- 株式移転
- 株式交換
- 会社分割
それぞれの手法について具体的にどのような作業をするのか以下でご説明します。
ホールディングス化する手法1:株式移転
ホールディングス化するために新しく会社を設立し、そこに会社の株式を移転させる方法です。
新しい会社に株式を保有させることで持株会社の関係を実現します。
新しく子会社を設立するのではなく、親会社を設立するイメージを持つと良いでしょう。
ホールディングス化にあたって基本的には一つの会社から株式を移転させます。
ただ、状況によっては複数の会社でホールディングスを構築するため、この場合は必要な会社の株式を全て新しい会社へ移転させます。
持株会社として保有しなければならない株式は全て取得するのです。
株式移転の場合、ホールディングス化によって子会社になる企業は統合されたり廃止されたりしません。
つまり、今までと同じように事業を営むことが可能で、許認可などを再取得する必要はないのです。
子会社となる企業の負担が少ないという点でメリットがあります。
ただ、ホールディングス化によって資本関係が変化するため、場合によっては金融機関との調整が必要です。
金融機関が株式を担保に融資している場合は、時間をかけて相談することになるかもしれません。
ホールディングス化する手法2:株式交換
株式交換は既に存在する2つの株式会社の間で、それぞれの株式を交換する方法です。
片方を親会社とし、もう片方の株式を100%取得して完全子会社化します。
この株式交換方式でポイントとなるのは、親会社が提供する株式は自社の株式ではなくても良い点です。
親会社が保有する他社の株式を用意し、それと交換する形としても差し支えありません。
自社の株式と交換すると思われがちですが、資産として保有する株式でも問題ないのです。
株式交換方式を利用すると、条件を満たすことで少数株主から株式の強制買取ができます。
ホールディングス化をスムーズに進める手法だと認識しておきましょう。
ホールディングス化する手法3:会社分割
会社分割は会社を複数の法人に分割し、分割した法人に事業内容を移転させるものです。
分割した法人を子会社化して、ホールディングスの中に含めます。
既存の法人を分割するため、事業内容などに変化は発生しません。
資産や契約などを新しい会社に引き継ぎ、そのまま事業を進められます。
ホールディングス化の手法としては比較的分かりやすいものです。
ただ、従業員からすると勤務する先の法人が変化するため、社会保険や各々が契約しているものなどの修正手続きが必要となります。
ホールディングス化の手続きとしては分かりやすいものですが、従業員の観点では影響を受ける部分があります。
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まとめ
会社のホールディングス化についてご説明しました。
ホールディングス化は会社を設立して持株会社を設立する行為を指し、経営面でさまざまなメリットを受けられます。
会社の規模が大きくなると問題が生じやすくなるため、これを解決するための方法だと考えても良いでしょう。
ただ、ホールディングス化にはメリットだけではなくデメリットも存在します。
そのため、ホールディングス化を考えているならば、多角的に評価しなければなりません。
もし、今の会社でホールディングス化したいならば、まずは経営サポートプラスアルファにご相談ください。
会社経営のプロが皆さんの状況を踏まえ、どのように進めたら良いかアドバイスしたり、手続きを代行したりします。