会社設立をする際、現状「合同会社」と「株式会社」という2つの会社形態を選ぶ人が99%です。
ほかにも合名会社、合資会社という選択肢もありますが、実質、合同会社と株式会社も2択になっています。
合同会社は21世紀になって初めて創設された新しい会社形態で、それまでの株式会社とは組織の運営方法などでかなり異なるものです。
株式会社ではなく、合同会社を選択するメリットは大きいのでしょうか?
今回は合同会社を選ぶメリットとデメリットについて考えます。
多くの人が選択する株式会社ではなく、あえて合同会社を選択することにどのような意味があるのでしょうか?
合同会社とは?
まず、合同会社という会社形態について説明します。
株式会社はイメージできる人が多いですが、合同会社は聞いたことがないという人もいるかもしれません。
そこで、まず合同会社の現状について説明します。
合同会社設立の経緯
合同会社は2006年の会社法改正(新会社法)によって新しくできた会社形態です。
それまであった株式会社・合名会社・合資会社と、有限会社法が規定していた有限会社の4種類の会社形態を整理しました。
- 株式会社(株式会社、それまでの有限会社を「特例有限会社」として存続)
- 持分会社(合同会社、合名会社、合資会社)
の2類型に会社を整理しました。
合同会社は、合名会社や合資会社と同じカテゴリに入ります。
アメリカの州法で認められるLLC (Limited Liability Company) をモデルとして導入されたので、「日本版LLC」と言われることもあります。
合同会社の特徴
詳しくはメリット、デメリットの項で述べますが、合同会社は株式会社等と比較して以下の特徴があります。
取締役や執行役が置かれない
株式会社は取締役が会社の経営を行いますが、合同会社は全社員が会社のために経営を行います。
特定の人が会社を代表して経営するのではなく、チームプレイで会社を運営し利益に向かって邁進します。
株主総会ではなく社員全員の同意が必要
株式会社の場合、重要案件は株主総会で議決を取り、保有している株式に応じた議決権による多数決で会社の方向性が決まります。
しかし、合同会社の場合、全社員による話し合い、そして全会一致が原則となります。
一人でも反対する人がいれば重要事項が決まりません。
国連の安全保障理事会のような「拒否権」を社員全員持っていることになります。
社員の持分の譲渡なども全会一致
社員の持分(地位のこと)の譲渡、変更や新たな社員の加入についても、他の社員全員の同意を必要となります。
株式会社の場合、取締役会などを通せばよいのですが、合同会社の場合、人事についても全会一致が必要となります。
利益配分な出資割合と切り離す
株式会社の場合、配当金などは保有株式に応じて支払われますが、合同会社の場合、出資割合と切り離して利益を分配できます。
株式会社のような「株主平等原則」は合同会社には適用されません。
有限責任である
合名会社や合資会社は「無限責任」を負わなければなりませんが(合名会社は直接無限責任社員のみで構成される会社で、合資会社は直接無限責任社員と直接有限責任社員とが存在する会社)、合同会社が有限責任のみです。
つまり、合名会社や合資会社は会社の負債や倒産した場合、個人の財産も弁済にあてて、場合によっては自己破産してまで責任を負わなければなりませんが、合同会社の場合、株式会社と同様、出資額以上の責任は負わなくて済むのです。
これで、連帯保証人のように家まで取られるというようなリスクがなくなります。
他にもいくつか特徴はありますが、合同会社は、限られたメンバーの総意で会社の経営を行い、株主による横やりがない中で機動的に業務を遂行できます。
一方、合名会社や合資会社のように、会社のリスクをすべて個人が負わなくても済むようになりました。
ある意味、「いいとこどり」ができる会社形態と思われる人もいるかもしれません。
メリットが大きいからこそ、新しく合同会社という会社形態を作り出したともいえるでしょう。
合同会社設立の原状
それでは、実際に合同会社は株式会社と比べて、どのくらい新しく設立されているのでしょうか?
最近の統計を見てみましょう。
2019年に新規設立された法人の数は以下のようになります。
会社形態 | 会社設立数(単位:社) | 割合 |
---|---|---|
株式会社 | 87,871 | 74.13% |
合名会社 | 48 | 0.04% |
合資会社 | 47 | 0.04% |
合同会社 | 30,566 | 25.79% |
合名会社や合資会社はほぼ無視できるほど少なく、株式会社が4分の3、合同会社が4分の1くらいのバランスになっています。
知名度がないと思われている合同会社ですが、新規設立数を見ると、意外に多いというのが正直な印象です。
合同会社を設立する意義やメリットが周知されてきているので、4分の1強の人が合同会社を設立しているのでしょう。
合同会社のメリットとデメリット
以上を踏まえて、合同会社を設立するメリット、デメリットを考えてみましょう。
合同会社のメリット
まずメリットを説明します。
費用が安い
式会社よりも合同会社の方が設立にかかる費用が安くなっています。
法的な費用については下記のように、合同会社は株式会社の半額以下で設立できます。
ランニングコストが節約できるのが大きなメリットになります。
|
合同会社 |
株式会社 |
公証人手数料 |
0円 |
50,000円 |
定款印紙代 |
40,000円(公証役場で紙の手続きの場合) |
40,000円(公証役場で紙の手続きの場合) |
登録免許税 |
60,000円 |
150,000円 |
定款謄本代 |
なし |
2,000円 |
資本金 |
1円以上 |
1円以上 |
合計 |
約60,000円+資本金 |
約200,000円+資本金 |
会社設立手続きが簡単である
株式会社を設立する場合には、公証役場に行き定款認証を行うことや、役員等の選任手続きがあります。
株式会社は「所有と経営」が分離しているため、このような煩雑な手続きが必要なのですが、合同会社の場合、それらが一体化しているので、スムーズに設立できます。
決算公告の義務がない
株式会社の場合、年に一度は決算書を公告する義務があります。
各会社のHPなどに決算情報を掲載しているはずです。
その手間もそうですし、公告にはお金がかかります。
手間も時間もお金もかかるということです。
合同会社は公告の義務がないので、メリットになります。
柔軟で迅速な意思決定ができる
株式会社の場合、意思決定や機関決定には株主総会を招集し、実施しなければなりません。
また、経営者の意思決定も取締役会を開く必要があります。
しかし、合同会社は株式会社と比べると会社の組織運営を柔軟に行うことができます。
社員が集まり、全員の賛同が得られればそこで機関決定ができるので、フレキシブルな対応が可能です。
急いで物事を決めたい場合や、株主総会のコストを考えると、合同会社の方が機動性は高いのです。
利益の分配を自由に決めることが出来る
株式会社の場合には、出資金を出すことで株式を取得し、株主として間接的に経営に参画します。
会社から利益が出れば、所有株式割合に応じて配当を受けることもできます。
出資額に応じて受け取れる利益も決定します。
しかし、合同会社の場合、社員の人間関係の中で利益配分が決まります。
社員間の取り決めで利益配分についても決めることができます。
合同会社のデメリット
一方、合同会社のデメリットも知っておきましょう。
場合によっては、
社会的信用が低い
株式会社に比べて認知度が低いので、社会的信用がありません。
金融機関の審査で不利になることはありませんが、民間の取引先や顧客は「株式会社」の方を信用する傾向にあります。
「株式会社にしないのは訳ありなのでは??」と思う人もいます。
また、株式会社に比べて、株主総会というストッパーが働かないため、ワンマン企業、一族経営で不正があるのでは?と穿った見方をされる可能性があります。
「代表取締役」は名乗れない
株式会社の場合、会社の代表は「代表取締役」と名乗り、名刺にも記載できますが、合同会社に取締役はいないので、肩書は「代表社員」となります。
代表取締役だと「社長!」というイメージになりますが、代表社員では平社員の少し偉いバージョン、と思う人もいます。
要は威厳がなく、またよく役職がわからない、伝わらない可能性があります。
まだ「代表社員」という肩書が社会に浸透していないので、この点が不利になるかもしれません。
社会のコンプライアンスに問題があるかもと思われる
株式会社の中にもコンプライアンスができない会社は山のようにありますが、合同会社の場合株主総会がないので、すべて内輪の論理で決まってしまいます。
ワンマンオーナー企業であるケースもあり、実は周囲の社員はただのイエスマンで、一人の独断で拗ねてしまってしまうかも、と危惧する人がいるかもしれません。
上場ができない
合同会社には資本金はありますが、株式を発行して集めることはできません。
個々の社員が出資して集めるものであり、株式上場して第三者から出資を募ることができません。
将来的に会社の規模拡張を考え、外部から出資を募り事業拡大を考えている場合は、合同会社だと不利になります。
株式会社に変更する場合、手続きや費用が発生し、余計なコストがかかってしまいます。
それなら、最初から株式会社を設立した方が有利です。
経営者同士の仲が悪くなると大変
合同会社は株主総会ではなく、全社員の合意を得て意思決定をします。
つまり、各社員の仲が悪くなり、関係がこじれてしまうと、常に反対する人がいて何も決まらなくなります。
本来迅速な意思決定ができるはずの合同会社の仕組みが、却って足かせになってしまうかもしれません。
「拒否権」を誰かが行使すると、まったく物事が進まなくなります。
メリット・デメリットまとめ表
メリット | デメリット |
---|---|
設立費用が安い | 社会的信用が低い |
手続きが簡単 | 「代表取締役」と名乗れない |
決算公告の義務がない | 社内コンプライアンスに不安 |
柔軟で迅速な意思決定ができる | 上場ができない |
利益配分が自由にできる | 社員の仲が悪くなると何も決められなくなる |
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このように合同会社にはメリットとデメリットがあり、一長一短をどう捉えるかが大切になります。
この記事を読んでも決めかねるという人もいらっしゃるはずです。
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