すでに社会のインフラになっているシステムですが、これを支えているのはエンジニアの方々のスキルです。
某銀行のシステムがたびたびダウンしても、数時間~1日で復旧するのも、エンジニアの方々がものすごく大変な「デスマーチ」をこなしておられるからです。
しかし、社員として「使われる」立場のエンジニアの方々、システムエンジニアもインフラエンジニアも両方、いつまでもそうしたきつい働き方はできません。
メンタルを病んだり、生活習慣がおかしくなったり、健康で文化的な生活を送るためには、社員として「使われる」立場から独立開業し、自分で仕事を選べる立場にクラスチェンジするのも1つの選択となります。
果たしてエンジニアは、独立開業した先に道はあるのか、しっかり準備をすれば十分独立して自分のペースでやっていくことができます。
今回は、システムエンジニア、インフラエンジニア双方に共通する独立についての解説をいたします。
エンジニアの仕事を確認!
エンジニアとして活躍しているみなさまには釈迦に説法かもしれませんが、エンジニアの仕事や求められるスキルをチェックしておきましょう。
ご自身の立ち位置を把握することで、独立する際に武器や弱点を把握することができます。
システムエンジニア、インフラエンジニアに共通すること
システムエンジニア、インフラエンジニアともに、社会を回しているシステムの設計図を作り、実際にプログラムを行う際の見取り図を作成し、プログラミングを統括、管理し、実際に動くかをチェックし、リリース後の保守管理を行うのが仕事です。
プログラミングは「プログラマー」(職種)の人が原則的に行いますが、一部「エンジニア」の方もヘルプでプログラミングすることがあります。
つまり、システム構築を建物の建設に例えると
- エンジニア(システム、インフラ)=建築士、建設会社の施工管理、大工の棟梁
- プログラマー=大工さん、左官屋、足場、屋根屋、板金屋、塗装屋
となります。
具体的には、各システムの
- システムのヒアリング
- 要件定義
- 仕様書作成
- プログラミング(サポート)
- 動作テスト
- 運用・保守
までエンジニアが行います。
システム構築の実働部隊がプログラマーで、エンジニアはそれを管理、統括する仕事です。
システムエンジニア、インフラエンジニアで異なること
同じエンジニアですが、システムエンジニアとインフラエンジニアでは扱う内容が異なります。
それぞれ以下のような特徴があります。
システムエンジニア | インフラエンジニア |
---|---|
さまざまな基幹システムを動かす「ソフトウェア」の設計、構築 | ソフトウェアを起動、実行させる基幹ITインフラの設計構築 |
民間企業から個人、公共部門まで多種多様な顧客 | 自治体、官庁など公共部門や公益性の高いインフラ企業が顧客 |
さまざまな会社でスキルを積める | スキルを積める会社はある程度限られる |
最近のゲームで例えると「steam」のようにさまざまなゲームを動かす共通のシステムを作るのがインフラエンジニアの仕事で、個々のゲームソフトを作るのがシステムエンジニアの仕事とイメージしていただくとわかりやすいです。
独立エンジニアの年収をチェック!
独立したエンジニアの年収はどのくらいになるのでしょうか?
一般的には「システムエンジニアの年収≧インフラエンジニアの年収」となっていて
- システムエンジニアの年収:約800万円
- インフラエンジニアの年収:約770万円
となってます。
そこまで大きな差はなく、公共部門の仕事(税金等で行う)は多い分、ややインフラエンジニアの年収が抑えられているとみることもできます。
ただ、大きな違いではないので、どちらもエンジニアとして独立すれば800万円前後の年収が期待できます。
逆に、独立して年収500万円とかであれば、独立せずそのまま雇われていた方が得です。
独立すると、会社員時代に会社が折半してくれた社会保険料をすべて自分で納付しなければならず、会社設立をしなければ厚生年金から国民年金へ切り替えになります(会社負担分もなくなります)。
いろいろな保険料や福利厚生が独立するとなくなるので、自分で賄うとすると、やはり年収800万円は欲しいところです。
エンジニアの修行期間
エンジニアとして独立するための「修行期間」、つまり実務経験を積む期間ですが
- システムエンジニア:5年以上
- インフラエンジニア:3年以上
を目安にしてください。
3年~5年というのは、独立して仕事が取れる「最低ライン」であり、それに加えて、大きな案件をおこなった実績やスキルも厳しく問われます。
エンジニア独立に求められるスキル、資質
では、学歴ではなく、エンジニアとして独立する際に求められるのはどのようなものなのでしょうか?
具体的には以下のスキルや資質が必要です。
- 多様なシステム開発経験
- 一定レベルのプログラミングスキル
- 営業力・コミュニケーション力
- 経営力・マネジメント力
実際のシステム開発経験がなにより重要で、公共部門や大きな基幹システムを開発するとアピールポイントになります。
また、エンジニアとして行うことは少ないですが、実際にプログラムできると、修正などができます。
会社員時代にプログラム経験もしておきましょう。
あとは、雇われ会社員ではなく、事業者、経営者としての資質になります。
コミュニケーション能力がなければ仕事も取れませんし、エンジニアとしてプログラマーなどへ指示もできません。
自社の経営を把握し、会計を行い、税務申告しないと、経営者として失格の烙印を押されてしまいます。
全部会社がやってくれていた時とは違い、エンジニア以外の側面、経営者、経理、人事などを自分で行わなければならないのです。
これらが基本、芯にあって、各種資格試験などで肉付けをしていくイメージになります。
資格試験に合格しても、これらがしっかりしていないと、すぐに実力を見切られてしまいます。
エンジニア独立のメリットとデメリットを確認
エンジニアとして独立するのは、年収が上がるから、だけではありません。
独立開業のメリットとデメリットについても押さえておきましょう。
エンジニア独立のメリット | エンジニア独立のデメリット |
---|---|
収入が上がりやすい | 給料ではないので収入が不安定 |
ワークライフバランスある働き方ができる | 身体を壊した時の金銭的保障がない |
場合によっては在宅ワークも可能 | SE以外の経営や会計も行う必要がある |
大型案件や有名システムを手掛けられる | 一人で孤独な作業となりモチベーション低下につながることも |
人脈、ネットワークが広がる | 営業をかけたり案件に応募したりしないと仕事を獲得できない |
自分だけの「実績」を得られる | |
なにより「やりがい」がある |
収入面以外で重要なのは、「自分らしい働き方」「ワークライフバランス重視」が可能になることです。
しっかり、案件をコントロールできればデスマーチに強制的に巻き込まれることもありません。
能力のあるエンジニアならば、仕事を選ぶことができ、対外的なネットワーク、人脈を構築することができます。
一方で会社員ではなくなるので、何かあった時の保障がなくなります。
けがや病気で働けなくなると、傷病手当などがないので、収入が絶たれます。
そのリスクヘッジのための「所得補償保険」などに加入することになります。
当然保険料は全額自腹になります。
そう考えると、年収は増えても思っているほど使えるお金は増えず、会社員として「使われる」ことに対して、自分で好きにできる「やりがい」や精神的負荷の減少を独立で果たすのが主目的になります。
能動的に動けないならば(そういう人はエンジニアとしてどうかと思いますが)、そのまま会社員でいた方がいいです。
エンジニアの独立は法人(会社設立)か個人事業主か?
エンジニアとして独立する際には、会社を設立し法人化する道と、個人事業主として開業する道があります。
どちらがよいのか、まず、法人化と個人事業主それぞれのメリットとデメリットをまとめてみました。
エンジニアの会社を設立(法人化)してから開業する |
エンジニアを個人事業主として行う |
メリット |
|
社会的信用がある(取引先から見て) |
簡単に設立できる |
経費の範囲が広い |
定款などの作成義務がない |
責任の範囲が有限 |
自由な働き方ができる |
赤字繰り越しが10年である |
廃業手続きもすぐにできる |
売上が多くなれば個人事業主よりも税率が下がる |
社会保険に加入できないため、国民健康保険と国民年金では老後が不安 |
最高税率が23.2%と所得税の約半分 |
|
デメリット |
|
設立までの手間がかかる |
社会的信用がない |
設立後の帳票作成や税務申告が大変 |
最大税率45%と法人税よりはるかに高い |
赤字でも法人住民税がかかる |
無限責任で経営失敗のマイナスはすべて自分が負う |
社会保険へ加入しなければならない |
赤字繰り越しが3年までしかできない |
会社の廃業手続きが煩雑 |
経費で落とせる範囲が狭い |
- 法人化は「社会的信用度が高いが手続きやコストがかかる」
- 個人事業主は「開廃業は簡単だが信用が低い」
という違いがあります。
独立する際には、信用があったほうがいいのですが、諸手続きや会計処置に手間を取られてエンジニアの仕事がおろそかになってしまっては本末転倒です。
また、法人と個人事業主の大きな違いとして、税制面、納税の種類が大きく異なります。
以下の表を見てください。
事業主体 |
法人化(会社設立) |
個人事業主 |
---|---|---|
所得税 |
代表個人の役員報酬を「給与所得」として算出し、その5%~45% |
事業の売上から「事業所得」を算出してその5%~45% |
個人住民税 |
代表個人の役員報酬を「給与所得」として算出し、その約10% |
事業の売上から「事業所得」を算出してその約10% |
消費税 |
課税売上1000万円以上の場合支払う(2年間は支払い義務がない特例もあり) |
課税売上1000万円以上の場合支払う |
法人税 |
かかる(15%~23.2%) |
なし |
法人住民税 |
かかる |
なし |
法人事業税 |
かかる |
なし |
個人事業税 |
なし |
かかる |
法人化すると「法人税」を納付し、個人事業主の場合は「所得税」を納付します。
これらの税額や税率は、売上や所得(売上-経費)によって異なります。
売上や所得が低い時は個人事業主の所得税の方が安いのですが、年間売上1000万円を超えたあたりで、法人税の方が安くなります。
つまり、多く売上が見込まれる場合は、大変ですが会社を設立した方が税金面で有利になります。
上述のように、エンジニアの年収(この場合売上を指す)は800万円前後ですので、それ以上稼ぐことが見込まれる場合は、社会的信用も兼ねて法人化した方がいいでしょう。
そのあたりの基準や考え方については、ぜひ専門家のアドバイスを受けてください。
会社設立については、専門家にその代行を依頼することもできます。
総合的に考えると、独立する際には、法人化した方がよさそうですが、個人事業主としてまず始めてみる、という戦略もありなので、開業の専門家に聞いてください。
エンジニア独立の際資金は必要か?開業資金や資金調達について
最後に開業資金について考えます。独立する際には、ある程度の資金が必要です。
エンジニアの場合、自宅で働くケースや客先に常駐するケースなどが考えられます。
いずれにせよ、会社員時代のようにオフィスを用意しなくて大丈夫です。
自宅兼事務所(オフィス)という選択もできますが、外部に自分用の事務所を借りた場合、おおよそ以下の開業資金が必要になります。
独立開業費資金内訳 |
金額 |
---|---|
物件取得(敷金礼金仲介料) |
50万円(自宅開業なら不要) |
パソコン(高スペックなもの) |
50万円(所持しているなら不要) |
オフィス用品(什器、電話、FAX等) |
30万円(自宅開業なら不要) |
運転資金(当面の生活費) |
50万円~70万円 |
合計 |
高くて200万円 |
(法人の場合)法定設立費用 |
6万円~20万円+資本金 |
外部に借りた場合でも多くて200万円、自宅兼事務所であればPCさえ用意できればほとんど開業資金は必要ありません。
法人化する場合は別途法定設立費用や資本金が必要になります。
上述のように、開業後は会社が守ってくれないので、働けない時のリスクヘッジのため、開業後、「所得補償保険」のようなものに加入することもおすすめします。
開業資金が必要で、なおかつ自己資金(預金)がない場合、「創業融資」の枠で借入も可能なので、お近くの商工会議所・商工会、日本政策金融公庫、自治体の創業窓口にお問合せください。
あるいは、民間のコンサルティング会社でもOKです。ここは、開業、会社設立、資金調達に詳しい「経営サポートプラスアルファ」にぜひお問い合わせください。
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エンジニアとして開業を目指す方は「経営サポートプラスアルファ」に相談を!
エンジニアはスキルがあれば独立しても十分やっていくことができます。
過重労働、残業の嵐というエンジニアの「イメージ通りの働き方」から脱却できます。
ワークライフバランス重視、自分で好きな時間に仕事をする、これを可能にするのが独立開業です。
システムエンジニアもインフラエンジニアも基本的にメリットは同じです。
会社設立については、インフラエンジニアの方が求められますが、法人化か個人事業主で行くのか、それぞれメリットとデメリットがあるので、専門家の意見を聞きながら判断しましょう。
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また、遠隔地の方については、LINE、Zoom、チャットワークなどのツールを使っての相談を可能ですのでぜひお問い合わせください。
能力のあるエンジニアは、自分のペースで、自分がやりたい仕事をして稼ぐことができます。
このチャンスを無駄にしないよう、ぜひ技術に自信のあるエンジニアの方は独立開業を考えてみてください。
メリットとデメリット合わせて、真摯に情報提供します。
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