引っ越しなどの際、大きな問題になるのがエアコン取付です。
単身用集合住宅であれば備え付けのものがあるところが多いですが、ファミリー向け賃貸マンションではリビング1台のみ備え付け(備品)のものがあり、各部屋のエアコンは自分で設置するというところも少なくありません。
もちろん、住宅を購入した場合は、エアコンはすべて自分たちが手配することになります。
エアコンは配線や空気のパイプと室外機の連結など、とても素人ができるものではありません。
必然的に専門のエアコン取付業者に依頼することになります。
引っ越しやエアコンの買い替えはなくなることはないので、エアコン取付業者として独立しても相応の仕事が期待できそうです。
今回はエアコン取付業者として独立することについて、メリットデメリットや、取得すべき資格などの見地から説明いたします。
エアコン取付業者とは?
エアコンは購入者が自分で取り付けることは非常に難しく、外部業者にエアコン設置を依頼することになります。
エアコン設置業者は、エアコンのドレン配管(排水)・冷媒配管(銅管)・制御配線(ソウサセン)についてそれぞれ処理をして、1人、ないし複数人で同時に作業を行い、エアコンが稼働するまで責任を持ちます。
我々がイメージするのは壁に掛ける形のルームエアコンですが、商業施設やオフィスにある天井にはめ込む形のエアコンは、もっと手間がかかります。
これは熟練した技がないと到底できず、配線や配管、工事のスキルも必要になります。
配線、配管、取付、電気など総合的な建設のスキルが必要であり、エアコン取付はイメージ以上に大変な仕事であることがわかります。
エアコン取付業者として独立するのに必要な資格は?
エアコン取付業者として独立する際、必要な資格はあるのでしょうか?
結論を言うと、何か資格を持っていなければ独立開業できない、ということはなく特定の資格は不要です。
しかし、エアコン取付のスキルがなければ、仕事が来ないのは明白です。
資格関連では以下のことを抑えておきましょう。
エアコンの種類によっては「電気工事士」の資格が必要
小さな家庭用ルームエアコン取付であれば特定の資格は不要ですが、以下の条件(★)に該当するエアコン取付の場合、「電気工事士」の資格が必要になります。
(★) ・600Vを超える電圧が必要なエアコン取付 ・内外接続電線を直接壁に固定するエアコン取付 ・接地(アース)工事のうち接地線相互を接続する作業、接地極を埋設する作業が必要なエアコン取付 ・コンセントの移設・増設、室内配線の新設・電圧の切り替えを目的とした電気工事 |
エアコン取付業として独立開業する場合、これらのエアコン取付工事も当然請け負いたいところですので、ぜひ電気工事士の資格を取得していきたいところです。
「このエアコンは私には取付できないんです・・」
これでは仕事をとることができなくなってしまいます。
電気工事士は第一種電気工事士と第二種電気工事士があり、上記の(★)を満たすエアコン取付で事業用の場合、第一種電気工事士が必要になります。
電気工事士になるには以下の条件をクリアします。
2021年4月より新しい制度になったので注意してください。
<第二種電気工事士>
- 第二種電気工事士試験に合格する
- 経済産業大臣認定の第二種電気工事士養成施設(専修学校や専門学校、公共職業訓練施設等)を、所定の単位を修めて卒業(修了)する
<第一種電気工事士>
- 第一種電気工事士試験に合格+実務経験3年以上
前の制度では、第一種電気工事士は大学等で電気に関する単位を納めて、実務経験年数を短縮するコースがありましたが、今は一本化され、試験合格+実務経験3年になりました。
その他取っておきたい資格
電気工事士(少なくとも第二種電気工事士)は必須ですが、それ以外にも取っておきたい資格を列挙します。
- 電気施工管理技士
- ガス溶接
- 高所作業車
- フロンガス取り扱い
天井内エアコンは少なくとも3年くらいの実務経験が必要かも
エアコンには大きく分けて
- 個人の部屋などにある壁掛けタイプ
- 業務用が多い天井埋め込みタイプ
があります。
壁掛けタイプは未経験でもなんとかなりますが、天井埋め込みタイプは3年程度、どこかで修業しないと、なかなかエアコン取付スキルが身につきません。
複雑であること、また天井埋め込みタイプは数が少なく、経験値を積みにくいことも理由となります。
エアコン取付として独立する際「建設業許可」は必要?
エアコン取付も「工事」になるので、規模によっては建設業許可が必要になります。
建設業許可が必要な工事は
建築一式工事 |
次のどちらかに当てはまる工事の場合建設業許可が必要 ①1件の請負代金が1,500万円超の工事(消費税込み) |
建築一式工事以外 |
1件の請負代金が500万円超の工事(消費税込み) |
であり、エアコン取付は「建築一式工事以外」なので、1件当たり500万円を超えるエアコン取付の際には建設業許可が必要になります。
なお、その場合「電気工事」ではなく「管工事」での建設業許可となります。
エアコン取付工事は、冷暖房や空気調和、給排水、衛生などに金属性の配管を使って水やガスを送る設備を設置するので管工事に該当します。
電気工事ではないのでご注意ください。
家庭用エアコン取付などを行うだけならば、建設業許可はまず不要ですが、将来的に大きな商業施設などのエアコンを担当する場合、管工事の建設業許可をとった方がいいかもしれません。
管工事の建設業許可条件は以下になります。
<管工事業許可について>
1.建設業許可全般に該当する適格性基準
A:経営業務の管理責任者(経管)を置く
B:専任技術者(資格は工事業種別、一般建設業許可基準・特定建設業許可基準)を置く
C:誠実性(暴力団や反社会的勢力ではない)
D:財産要件(500万円以上の総資産、資本がある。一般建設業許可基準・特定建設業許可基準)
E:欠格要件に該当しない(犯罪歴がない、出所後一定期間経過、成年後見人がついていないなど)
2.管工事の内容(国土交通省ガイドラインより)
冷暖房設備工事、冷凍冷蔵設備工事、空気調和設備工事、給排水工事・給湯設備工事、厨房設備工事、衛生設備工事、浄化槽工事、水洗便所設備工事、ガス管配管工事、ダクト工事、管内更生工事
3.専任技術者になれる資格
・1級管工事施工管理技士
・2級管工事施工管理技士
・技術士【機械部門-流体工学・熱工学、上下水道部門、衛生工学部門】
・技術士【総合技術監理部門-機械(流体工学・熱工学)・上下水道・衛生工学】
・建築設備士(資格取得後、管工事に関し実務経験1年以上)
・1級計装士(合格後、管工事に関し実務経験1年以上)
・給水装置工事主任技術者(水道法・免状交付後、管工事の実務経験1年以上)
・技能検定(冷凍空気調和機器施工・配管(建築配管作業)・建築板金(ダクト板金作業))
・技能検定(配管工・空気調和設備配管・給排水衛生設備配管)
・登録配管基幹技能者
・登録ダクト基幹技能者
・登録冷凍空調基幹技能者
大手引っ越し業者などと提携するか個人として直接仕事するか
エアコン取付は引っ越しなどと密接に関係する工事なので、大手引っ越しチェーンと業務提携することもできます。
求人サイトや大手引っ越しチェーンHPなどに「提携店募集」などの案内が出ることがあります。
エアコン取付工事の募集は引っ越し屋が行うので集客の必要はなく、かつ社員ではないので、独立事業主として歩合制です。
しかし、大手引っ越しチェーンと提携するとあくまで「1件いくら」の契約になってしまいます。
本当に稼ぎたいなら、中間マージンを搾取されないように自分で直接お客を取りに行くべきです。
幸い「くらしのマーケット」など個人顧客と直接やり取りできるサイトもあります。サイト側に手数料を支払いますが、それでも大手引っ越しチェーンの中間マージンよりは安く、稼ぐことができます。
顧客とのやり取り、見積書発行、領収証発行など自分で行う手間がありますが、稼ぐ手段としてぜひご検討ください。
エアコン取付業者は法人化すべき?個人事業主でいい?
エアコン取付工事は建設業許可が必要な規模かどうかを別にして、会社設立(法人化)するか、個人事業主として営業していくか判断が問われます。
それぞれメリットもデメリットもあります。
法人化、個人事業主それぞれのメリット、デメリット
エアコン取付工事業を法人化する(会社設立) |
エアコン取付工事業を個人事業主として行う |
メリット |
|
社会的信用がある |
簡単に設立できる |
経費の範囲が広い |
定款などの作成義務がない |
責任の範囲が有限 |
自由な働き方ができる |
赤字繰り越しが10年である |
廃業手続きもすぐにできる |
売上が多くなれば個人事業主よりも税率が下がる |
社会保険に加入できないため、国民健康保険と国民年金では老後が不安 |
最高税率が23.2%と所得税の約半分 |
|
デメリット |
|
設立までの手間がかかる |
社会的信用がない |
設立後の帳票作成や税務申告が大変 |
最大税率45%と法人税よりはるかに高い |
赤字でも法人住民税がかかる |
無限責任で経営失敗のマイナスはすべて自分が負う |
社会保険へ加入しなければならない |
赤字繰り越しが3年までしかできない |
会社の廃業手続きが煩雑 |
経費で落とせる範囲が狭い |
会社設立のメリットは最高税率と社会的信用です。税金については後述します。
社会的信用は法人化した方が、新規顧客が信用しやすいということです。
ただし、大手引っ越しチェーンなどから仕事を請け負う場合は、法人化の可否よりも、工事の実績やスキルのアピールが重要になります(顧客には「〇〇引っ越しセンター」を代表してエアコン取付工事をするのであまり法人化の可否は関係ない)。
法人化した場合と個人事業主の税金面の違い
事業主体 |
法人化(会社設立) |
個人事業主 |
所得税 |
代表個人の役員報酬を「給与所得」として算出し、その5%~45% |
事業の売上から「事業所得」を算出してその5%~45% |
個人住民税 |
代表個人の役員報酬を「給与所得」として算出し、その約10% |
事業の売上から「事業所得」を算出してその約10% |
消費税 |
課税売上1000万円以上の場合支払う |
課税売上1000万円以上の場合支払う |
法人税 |
かかる(15%~23.2%) |
なし |
法人住民税 |
かかる |
なし |
法人事業税 |
かかる |
なし |
個人事業税 |
なし |
かかる |
法人化した場合の最高税率は23.2%、一方、個人事業主の場合の最高税率は45%です。
売上が1000万円を超えるならば法人化した方が税金は安くなります。
法人化は手間がかかる、一方個人事業主は楽
法人化する際に手間やコストがかかります。
一方、個人事業主はすぐに独立開業が可能です。
|
法人化(会社形態) |
個人事業主 |
開業方法の流れの違い |
商号(社名)や事業目的、資本金、役員等を決める |
開業届を税務署に提出する |
定款を作成する |
||
定款認証(合同会社は不要) |
||
社印を作成する |
||
資本金を振り込む |
||
法務局へ行き会社設立登記の申請をする |
||
設立登記後社会保険や年金の手続きをする |
||
開業費用 |
最低60,000円(合同会社)~202,000円(株式会社)+資本金 |
無料 |
独立開業に至る金銭的時間的コストを考えると、法人化よりも個人事業主として始めた方が簡単です。
あとは、対外的な信用や売上見込みとの比較検討になります。
エアコン取付工事の開業費用は?
エアコン取付工事業独立開業する場合の開業資金ですが、おおよそ以下のようになります。
独立開業費内訳 |
金額 |
工具備品 |
30万円 |
材料・消耗品 |
50万円 |
車両(移動、工具運搬) |
100万円~150万円 |
合計 |
180万円~230万円 |
|
|
(法人の場合)法定設立費用 |
6万円~20万円+資本金 |
建設業許可をとる場合 |
財産要件 500万円(資本金と重複可能) |
200万円程度の開業費用+数か月分の運転資金(生活費)が必要になります。
自己資金(預金)があれば望ましいのですが、ない場合、創業融資などを頼ることになります。
その場合も、必要額の30%~50%は自己資金が求められます。
200万円開業資金が必要な場合、60万円~100万の自己資金が求められます。
国民生活金融公庫や自治体の創業融資窓口、そして資金調達に強い税理士事務所(例えば「経営サポートプラスアルファ」)に相談してみてください。
消費者金融などに手を出すのは絶対にダメです。
エアコン取付工事で独立を目指す方は「経営サポートプラスアルファ」に相談してください
以上、エアコン取付工事の開業や必要な資格について説明しました。
エアコン取付工事は他の工事と比較して、配管、電気回路など多様なスキルが求められます。
ただし、小規模のエアコン取付のみ請け負うのであれば、建設業許可はいらず、比較的独立開業しやすい仕事です。
しかし、壁掛けタイプのエアコンは独力でもなんとかなりますが、天井埋め込みタイプは実務経験が必要です。
短期間でもどこかの業者に弟子入りして、スキルを身につけることをおすすめします。
開業にあたり法人化(会社設立)や建設業許可、開業資金などの問題にも直面するかもしれません。
そういう場合は知識と経験のある専門家のアドバイスを受けてください。
「経営サポートプラスアルファ」では、会社設立や税務、許認可等幅広く対応できる専門家が揃っています。
どんな些細なことでも丁寧にアドバイスします。
また、会社設立や建設業許可については申請代行も希望に応じて行いますのでご安心ください。
もちろん、個人事業主として建設業許可が不要な範囲で独立開業する場合も、適切なサポートをします。
ぜひご相談ください。
土日祝日夜間も対応します。
また、遠隔地にお住いの方はLINEやZoomでの相談も受け付けていますのでご安心ください。
エアコン取付工事業を行いたい方は、ぜひ「経営サポートプラスアルファ」までお問い合わせください。