電気工事士として独立するには何をすればいいの?必要な資格や独立開業までの流れを解説!

建物という「ハコ」ができても、実際に居住するためには電気周りの整備が不可欠です。

電気工事は、大工さんにはできません。

木を切って組み立てる大工と、電気工事をする人はまったく異なります。

電気工事する人=電気工事士は建物があれば、そこには仕事が発生します。

そうであるなら、独立しても十分に活躍できるはずです。

今回は電気工事を請け負って独立開業することについて解説します。

方法や資格、将来的な見通しなどをお示しし、電気工事で独立する際の参考になさってください。

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電気工事業として独立開業する前に確認しよう

まず、電気工事業として独立する前に、基本的なことをおさらいします。

電気工事の内容、電気工事に必要な資格などについてチェックしておきましょう。

「電気工事」の内容をおさらいします

電気工事業が行う「電気工事」は大きく分けて「建設電気工事」と「鉄道電気工事」に分けられます。

圧倒的に需要が多く、仕事が多いのは「建設電気工事」であり、本稿では建設電気工事を念頭に述べます。

建設電気工事

建設電気工事は戸建て住宅、集合住宅、商業ビル、工場、オフィス、商業施設などあらゆる建設物の屋内外電気設備の設計や施工を行います。

いわゆる「電気周り」全般の工事を行います。

例えば、電気の配線、大型機器の制御回路のメンテナンス、コンセントや照明器具の取り付け・電球交換まで含みます。

新築建物の場合、それらの設計や施工、取り付けなど工事を最初から最後まで行います。

新築以外の建物のリフォーム時の工事や、何かのトラブル、故障があった時のメンテナンスも担当します。

通常は建設会社や工務店、リフォーム業者の社員、ないし業務委託している「一人親方」として仕事を請け負いますが、個人の家庭のトラブルを「くらしのマーケット」などで請け負うこともできます。

さらに、不動産会社や大家さんと仲良くなり、集合住宅の電気トラブルの解決を請け負うということもあります。

直接請け負う方が利益も高くなるため、電気工事スキルに加えて、独立開業する場合は、コミュニケーション能力も求められます。

鉄道電気工事

鉄道電気工事は、電車の架線、運行を支える信号システム、踏切、駅の照明・通信設備、そして電力を供給する発電所・変電所に至るさまざまな電気設備の施工、保守、修理を担当します。

臨機応変に運行トラブルに対応するため、日本のライフラインを支える重要な仕事です。

こちらは、鉄道会社も依頼するためには高い条件を課してきます。

建設業許可は当然であり、下手な業者に任せると、交通網が大変なことになります。

独立開業したばかりの電気工事業者はほぼ無縁の世界なので、とりあえずは建物電気工事で実績を上げられるようにしてください。

以降は建設電気工事を前提にした内容とします。

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電気工事開業に必要な資格は?

電気工事を独立開業する場合、他の建設系職人と異なり、いくつかのステップを踏まなければなりません。電気工事は瑕疵があると火災などにも直結するため、工事をする人の資格を厳しくチェックします。

電気工事士(最低でも「第二種電気工事士」)

「電気工事士」という資格を取得します。第一種と第二種があり、可能ならば第一種を取得してください。

第二種は電気工事の最低ラインであり、これがないと、一般家庭の電気工事すらまともにできません。

第二種電気工事士は実務経験不要で取得できるため、電気工事の修行中、ないし独学する場合には必ず取得をお願いします。

第一種と第二種の違いは下記になります。

 

受験資格

できること

予想される対象

第一種電気工事士

第一種電気工事士試験に合格し、電気工事の実務経験を通算3年以上有する者

最大電力が500㎾未満の電気工事
(配線工事や電気設備工事)

ビル
工場
大型店舗

第二種電気工事士

・試験に合格する
・第二種電気工事士養成施設(専修学校や専門学校、公共職業訓練施設等)を、所定の単位を修めて卒業(修了)した者

電圧が600V以下の電気工事
(配線工事や電気設備工事)

一般住宅
小規模な店舗
事業所 

流れとしては、独学で第二種電気工事士試験に合格するか、職業訓練校や専門学校に行き、所定の過程を終えて、第二種電気工事士を取得します。

その後、3年以上の実務経験を経て、第一種電気工事士試験に合格します。

独立はその後行うのがベターですが、第二種だけでも独立することはできます。

第一種電気工事士は5年ごとに「更新講習」があり、これを受講しないと資格がなくなるので注意してください。

認定電気工事従事者

電気工事士だけでは、実は家庭用の電気工事しかできません。

事業用物件について電気工事する場合、この「認定電気工事従事者」の資格が必要になります。

工場やビルなどの自家用電気工作物のうち、簡易電気工事(電圧600V以下で使用する自家用電気工作物(最大電力500kW未満の需要設備))を行うことができる資格です。

第一種電気工事士より前に取得でき、試験もなく、第二種電気工事士が実務経験3年で申請、取得が可能になります。

登録電気工事業者

電気工事をするためには都道府県知事の許可が必要です。

「登録電気工事業者」はそのための資格なので、確実に申請をします。

「(第二種)電気工事士」と「認定電気工事従事者」を取得後に申請します。

自分でも行うことができますが、行政書士など専門家に申請を代行依頼することもできます。

試験ではないので、書類に不備がなければ取得できます。

そのほか特殊な資格や関連領域の資格

電気工事士がメイン資格になりますが、特殊な電気工事を行う場合、下記の資格が必要になります。

余裕があればとっておきましょう。

しかし、優先するのは上の資格になります。

特種電気工事資格者
(ネオン工事)

事業用特殊電気工事でネオン設備について施工が可能になる。

特種電気工事資格者
(非常用予備発電装置工事)

事業用特殊電気工事で非常用予備発電装置について施工が可能になる。

★電気工事施工管理技士(1種、2種)

建造物の建設や増築などの際、「電気工事における施工計画の作成」、「工事の工程・安全・品質などの管理」、「電気工事の監督業」を行う。管理監督のための資格。

★技術士(建設・電気電子、統合技術監理含む)

 

★電気主任技術者(1種~3種)

事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督をさせるため、設置者が電気事業法上置かねばならない電気保安のための責任者になれる。

★登録電気工事基幹技能者

電気工事施工管理技士の補佐として、工事の計画や管理業務に参加することができる。

★建築設備士

建築士の求めに対し建築設備の設計、工事監理に関する適切なアドバイスを行える建築士法に基づく国家資格。

★計装士

自動制御機器など計測器の取り付や、配管・配線工事に関する設計、監督を行うことができる専門資格。

以上をまとめると以下のようになります。(〇:電気工事可能 ×:電気工事不可能)

資格

自家用電気工事

一般用電気工事

500kW未満

右記以外

電線路除く・
600V以下

ネオン設備

非常用予備発電

認定電気工事従事者

×

×

×

×

第一種電気工事士

×

×

第二種電気工事士

×

×

×

×

特種電気工事資格者
(ネオン)

×

×

×

×

特種電気工事資格者
(非常用予備発電装置)

×

×

×

×

 

  • 一般用:家庭用の電気工事
  • 自家用:電気事業の用に供する電気工作物及び一般用電気工作物以外の電気工作物

「自家用」という言葉で、自分の家と勘違いしがちですが、「自宅や商店など実質住宅の電気工事以外の工事」になります。

500KWを超える電気工事については、「電気主任技術者」がいる大きな会社が請け負うことになるので、今回の独立開業の先の先くらいにあり、割愛させていただきます。

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「建設業許可」を取得すべきなのか?

独立開業に合わせて建設業許可を取得すべきでしょうか?

電気工事の場合「建設業許可(電気工事)」という許可になります。

建設業許可が必要な工事は、1件当たりの受注額で決まります。

建築一式工事

次のどちらかに当てはまる工事の場合建設業許可が必要

①1件の請負代金が1,500万円超の工事(消費税込み)
②延べ面積が150㎡超の木造住宅工事

建築一式工事以外

1件の請負代金が500万円超の工事(消費税込み)の場合建設業許可が必要

電気工事は「建築一式工事以外」に該当します。

一人親方として独立開業当初は、1件500万円を超える電気工事はないと思われますので、急ぐ必要はありません。

将来的に事業を拡張し、鉄道電気工事なども考えている場合、建設業許可が必要になります。

電気工事士を取得していると、建設業許可に必要な「専任技術者」になることができます。

あとは、以下の条件を満たして申請をします。司法書士などに代行を依頼することもできます。

条件

内容

経営業務の管理責任者

経営に携わる管理責任者の設置です。
個人事業主の場合は本人、法人の場合は役員(代表取締役)などを管理責任者とします。

専任技術者

実務経験(学歴や大学の専攻によって年数が異なる)を積んだ人。
電気工事士に加え、電気工事施工管理技士、技術士、電気主任技術者など(上の関連資格の★がついているもの)

安定した財政基盤

貸借対照表の純資産の部合計額が500万円以上。
新規会社設立の場合は資本金500万円以上。
個人事業主の場合は預金残高が500万円以上であること。

欠格事項に相当しない

暴力団構成員や彼らと関係ある人間、元犯罪者(禁固以上で執行後5年以内の人)、建設業で罰金刑を受けて5年以内の人、成年被後見人および被保佐人や破産手続き開始の決定を受けた人は建設業許可が下りません。

 

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電気工事は独立して稼げるのか?

電気工事業として独立開業している人は、年収500万円~700万円ほど稼いでいる人が多いようです。

これなら、独立開業する甲斐があります。

ただし、これくらい稼ぐためには「第一種電気工事士」を取得するようにしてください。

「第二種電気工事士」だけだと、家庭や小さな商店の電気工事しかできず、収入が限られてしまいます。

したがって、第一種電気工事士を取得してからの独立開業をおすすめします。

電気工事独立開業までの道のり

以上の資格について理解していただけたところで、独立開業までの道のりは以下のようになります。

◆第二種電気工事士を取得(試験、専門学校、職業訓練校など)

      ↓実務経験3年

◆認定電気工事従事者を取得(無試験。実務経験のみ)

      ↓実務経験3年

◆第一種電気工事士を取得(試験+実務経験)

      ↓

◆登録電気工事業者申請

      ↓

◆特種電気工事資格者取得(余裕があれば)

      ↓                 

◆建設業許可(事業拡大を目指すなら)

      ↓

◆独立開業

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電気工事を独立開業するときのポイント

電気工事を独立開業する際に注意したいこと、ポイントについて解説します。

電気工事独立のメリットとデメリット

まず、電気工事を独立開業するメリットとデメリットをまとめました。

電気工事業として独立するメリット電気工事業として独立するデメリット
建設系職人の中でもかなり稼げる独立までに多少時間がかかる
電気工事は「ライフライン」で絶対になくならない感電等のリスク
建物ならば住宅、工場、ビルなどどこにもあるスキルがないと仕事が来ない
自分のスタイルで仕事ができる一種電気工事士を取得しないと稼げない
仕事の繁閑を自分で調節できる 

自分のスタイルで仕事を行い、休日なども調整できます。

腕がよければ引き合いもあり、高単価でワークライフバランスを重視した働き方ができます。

一方、電気工事は感電リスクと直結し危険な工事でもあります。

細心の注意を払うとともに、労災にも加入してリスクヘッジしましょう。

特例で個人事業主や経営者の電気工事業の方が加入できる「一人親方労災保険組合」があります。

ケガ(感電含む)の治療費無料、休業補償(1日4000円)、障害が残った場合の一時金、ご不幸があった場合の葬儀費用や遺族への年金支援などもあります。

国の制度なので安心できます。

電気工事業として独立する際の開業資金と準備品を考える

電気工事業して独立する際には開業資金と独立する際の道具備品が必要です。

それらについて計算してみました。

独立開業費内訳金額
工具備品30万円
車両(軽トラ、軽バン。移動、工具運搬)100万円~150万円
合計130万円~180万円
(法人の場合)法定設立費用6万円~20万円+資本金
建設業許可をとる場合財産要件 500万円(資本金と重複可能)

道具については、それまで使用していたもので構いません。

移動用車両ですが、電気工事の場合、かさばる用具もあるため、できれば軽バンや軽トラックが欲しいところです。

したがって、自家用車の転用ではなく、新規購入を視野に入れてください。

開業費用は150万円前後になりそうなので、全額自己資金は難しいかもしれず、その場合は創業融資も一考でしょう。

創業融資は、日本政策金融公庫や自治体の創業窓口、あるいは開業と資金調達に強い専門家集団「経営サポートプラスアルファ」に相談をしてください。

電気工事独立は法人か個人事業主か

独立開業する際には法人化(会社設立)と個人事業主という選択肢があります。

電気工事の場合、比較的単価が高く、将来的に弟子や社員を抱えて事業拡大したい場合、法人化も視野に入ります。

ただ、一人親方として開業する場合は、当面個人事業主のままでも問題ありません。

まずは事業形態よりも、電気工事士(特に一種)の取得を目指してください。

法人と個人事業主では以下のような違いがあります。

電気工事業として独立し法人化する(会社設立)

電気工事を個人事業主として行う

メリット

社会的信用がある

簡単に設立できる

経費の範囲が広い

定款などの作成義務がない

責任の範囲が有限

自由な働き方ができる

赤字繰り越しが10年である

廃業手続きもすぐにできる

売上が多くなれば個人事業主よりも税率が下がる

社会保険に加入できないため、国民健康保険と国民年金では老後が不安

最高税率が23.2%と所得税の約半分

 

デメリット

設立までの手間がかかる

社会的信用がない

設立後の帳票作成や税務申告が大変

最大税率45%と法人税よりはるかに高い

赤字でも法人住民税がかかる

無限責任で経営失敗のマイナスはすべて自分が負う

社会保険へ加入しなければならない

赤字繰り越しが3年までしかできない

会社の廃業手続きが煩雑

経費で落とせる範囲が狭い

大きな違いとして

  • 法人化、会社設立:信用がある、手続きや経理処理が大変
  • 個人事業主:信用が低い、手続きや経理処理は楽

ということです。

将来的に鉄道電気工事の請負まで考えている場合、法人化による社会的信用の獲得は不可欠になります。法人の商業登記簿謄本を全国で取得でき、第三者に自社の内容が公開されるというのは、大きな信用につながります。

税金面でも違いがあります。

事業主体

法人化(会社設立)

個人事業主

所得税

代表個人の役員報酬を「給与所得」として算出し、その5%~45%

事業の売上から「事業所得」を算出してその5%~45%

個人住民税

代表個人の役員報酬を「給与所得」として算出し、その約10%

事業の売上から「事業所得」を算出してその約10%

消費税

課税売上1000万円以上の場合支払う(2年間は支払い義務がない特例もあり)

課税売上1000万円以上の場合支払う

法人税

かかる(15%~23.2%)

なし

法人住民税

かかる

なし

法人事業税

かかる

なし

個人事業税

なし

かかる

法人化した場合、納税するのは法人税で、個人事業主の場合、納税するのは所得税になります。

年間売上1000万円前後になると、支払う税金額が「法人税>所得税」から「法人税<所得税」になります。

年間売上1000万円超の場合法人化した方が節税できますし、さらに、法人立後2年間は(条件を満たすと)消費税の納税義務がないという特例もあります。

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電気工事業を独立して行いたい場合「経営サポートプラスアルファ」に相談をしてください

電気工事業は、他の建設系職人以上に、必要な資格がはっきりしていて、それを取得しないと仕事ができません。

親方の下で修業したからOKというわけではなく、漏電や火災に直結する危険な工事なので、しっかり資格を取得して独立してください。

本人だけがけがをするのではなく、火災など周囲への影響も甚大です。

その分、稼ぐこともでき、鉄道電気工事などへの展望も開けます。

さまざまな関連資格もあり、独立開業にあたっては、専門家にアドバイスを受けることも大切です。

「経営サポートプラスアルファ」には、建設系の資格に詳しく、独立開業のサポートができるプロフェッショナルが揃っています。

建設業許可や登録電気工事業者の申請代行も行っています。

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