大工の独立開業は一人親方と工務店の2パターンあり。それぞれの資格や開業資金などを解説

建設系の職人というとまず思い浮かぶのが大工さんです。

大工がいなければあらゆる建物は建設することができません。

大工さんほど一般の人からイメージしやすい建設系の職業はなく、あらゆる建物、文化、文明を支える重要な仕事です。大工さんがいなければ家もお寺もお城も建ちません。

大工として活躍して、その後独立するという考えを持っている方は、どのようなプランで開業まで進めばよいのでしょうか?

今回は大工で独立するためには何が必要なのか、そのロードマップをお示しします。

自分で独立したい、将来的には弟子を持ちたいと考えている大工の方はぜひ参考にしてください。

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大工として独立するまでに考えること

まず大工として独立開業してやっていくことの実情について説明します。

大工はあらゆる建物の土台を作っていく職人なので、仕事がなくなることはありません。

したがって、ご自身の将来設計や生活スタイルに合わせた働き方ができます。

もちろん、独立しないで、建設会社や工務店の社員、弟子としてやっていく方法もありです。

大工独立の方法は2パターンあり

大工として独立する場合、2つのパターンがあります。

それぞれ特徴があるのでご理解ください。

一人親方として働く

従業員を雇わず、フリーの大工として仕事を請け負う働き方です。

従業員や社員ではないので時給制、給料制ではなく「工事1件いくら」で請け負います。

勤務時間にとらわれない働き方ですが、実際にはほかの大工さんと協力して働くことになり、深夜や土日に作業することはできないでしょう。

ご近所の方にも迷惑になりかねません。

ただし、一人でできる小規模な大工仕事であれば、ある程度自分の裁量をもって、時間などを組み立てて働くことができます。

腕のいい一人親方は、あちこちの建設現場から、高単価で引き合いがあります。

ご自身のスキルを最大限評価してもらえる場所で働き、現場を渡り歩くかっこいい働き方ともいえるでしょう。

「一人親方」については、以下の記事に詳しい記述がありますので合わせて読んでみてください。

工務店を立ち上げる

大型建設会社(ゼネコン)はさすがに難しいですが、地域密着型の建設会社が工務店です。

大工として働くこともありますが、主な仕事は工務店の経営者です。

複数の部下、弟子を抱えて、住宅建設やリフォームを総合的に請け負います。

大工だけではなく、各分野の建設系職人である、とび職、足場職人、屋根屋、電気工事、板金屋を雇ったり、一人親方の彼らと業務委託契約したりして、工事を行います。

大工や建設系の技術を持った職人をそろえ、経営者として高単価の工事を請け負う能力、コミュニケーションスキルも必要になります。

工務店は、法人化(会社設立)、建設業許可を合わせて行うことが多いです。

仕事の単価や信頼性確保のため、一人親方以上に独立開業時には注意を要します。

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大工独立までにどのくらいかかる?

一人前の大工として独立するためには、通常5年から10年の修行期間を要します。

その間にさまざまな現場を経験し、いろいろな工法を身につけることが重要です。

素質がある人は2~3年で独立するケースもありますが、一人親方(あるいは工務店)としてやっていくためには、建設会社や親方との関係を構築するのが大切です。

大工としてのスキルを磨くのと同時にコネクションの構築も修行期間に行います。

本当に「一匹狼」としてあちこちの現場から依頼が来る大工はごく少数であり、(それを目指すのもよいのですが)人との縁で仕事を請け負って、信頼を得ていくためにはある程度独立までに時間をかけた方がいいケースが多いです。

大工独立までに取っておきたい資格

大工として独立するまでに取得しておいた方がいい資格などはあるのでしょうか?

できれば以下の資格を取得しておくと、独立した際に評価されます。

建築大工技能士

建築大工技能士とは、各都道府県が実施している「技能検定」=技能士の1つです。

公的資格であり信頼があります。

1級~3級の3種類があり、1級が上位資格になっています。

木造建築の工事を担う上で必要な技術を証明するための国家資格です。

学科試験に加えて、実技の試験も含まれており、実際に木材の加工や組み立てを行います。

【試験内容】 
学科試験と実技試験を併用します。
 例えば実技試験は 
1級:振隅木小屋組の平面図、振隅木及び配付たる木の現寸展開図を作成し、木ごしらえ及び墨付けをした後、加工組立てを行う。
試験時間=5時間30分
 2級:柱建て片四方転びの平面図、正面図、側面図及び柱の現寸展開図を作成し、木ごしらえ及び墨付けをした後、加工組立てを行う。
試験時間=5時間30分 
3級:材料に直接墨付けした後、桁・梁・束・棟木及び垂木・隅木の加工組立てを行い、寄棟小屋組の一部を製作する。
試験時間=2時間45分
と違いがあります。 

【受験資格】
1級:実務経験7年or「2級合格+2年以上の実務経験」or「3級合格+4年以上の実務経験」
2級:「3級合格」or「実務経験2年」
3級:誰でも受験できる 
学歴によって実務経験が短縮できることがあります。

試験は年2回あります。

3級は誰でも受験できるので、3級に合格し翌年2級に合格すれば、最短で1年かからずに建築大工技能士2級まで取得可能です。

2級あれば、大工として最低限の知識と技能をアピールできるので、なるべく早く独立したい人は、この2級取得を目指してがんばってください。

もちろん、1級を取得できれば、独立後ご自身のスキルをアピールできます。

建築施工管理技士

建築施工管理技士は、建築工事にかかわる管理監督者のスキル向上のための資格です。

最初に述べたように、建物建築では、大工のほか、とび職や足場職人、屋根屋など多種多様な職人を束ねて仕事をします。

建築施工管理技士は、それら工事各分野の職人を総合的にまとめる「施工管理」を行う人、つまり現場監督や統括者になる人のための資格です。

1級と2級があり、特に1級は、工事現場に置かれる主任技術者又は監理技術者や、建設業許可に必要な専任技術者になることができます。

つまり工務店などを開業する場合に(特に1級建築施工管理技士は)必要であり、一人親方の場合はこの資格の優先順位はそれほど高くありません。

1級建築施工管理技士になると、大工、建築、左官、とび、石工、屋根、タイル、レンガ、鉄筋、ガラス、塗装、防水の各工事の監督ができるようになります。

工務店を立ち上げる際には必ず取得しておきたい資格です。

建築士

大工とは一見すると離れている資格に思えますが、建築物の設計や工事計画を担う建築士資格を取得できれば、建物のデザインの段階から総合的に仕事を引き受けることができます。

デザインや設計のスキルも必要になります。

一人親方でも建築士をもっていれば、簡単でおしゃれな工事を請け負うことができるようになるかもしれません。

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大工独立にかかる費用

大工として独立するためにかかる費用、開業費用についてまとめました。

一人親方と工務店では異なるので注意してください。

独立開業費内訳

金額

 

一人親方

工務店

工具備品

30万円

700万円

車両(移動、工具運搬)

100万円~150万円

350万円

事務所物件取得(保証金・敷金・礼金等)

なし(自宅兼事務所の場合)

300万円

事務所改装施工費

なし

200万円

合計

130万円~180万円

1500万円超

 

 

 

(法人の場合)法定設立費用

6万円~20万円+資本金

 

建設業許可をとる場合

財産要件 500万円(資本金と重複可能)
許可申請費用 30万円

一人親方の場合、自家用車を移動や工具運搬用の車両に兼用できれば開業費はほとんどかかりません。

しかし、工務店開業の場合、1500万円を超える開業費用が必要になります。

全然違いますし、リスクも大きく異なります。

工務店の場合、創業融資などを受けることになり、返済も大きな負担になります。

開業資金については日本政策金融公庫や自治体の創業窓口、あるいは「経営サポートプラスアルファ」などの資金調達のプロフェッショナルに相談してください。

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独立した大工の平均年収は?

大工の年収は高めで、平均すると450万円前後になります。

日本人の平均年収よりもやや高く、しっかり稼ぐことができます。

独立し、一人親方になると、800万円以上稼ぐ人もいて、スキル次第でかなりの収入が期待できます。

建設業許可は取った方がよいか?

一人親方として独立する場合は、建設業許可は取らなくても大丈夫です。

しかし、工務店を開業する場合は、建設業許可は必須だとご理解ください。

建設業許可は工事1件当たりの請負費用で決まります。

建築一式工事

次のどちらかに当てはまる工事の場合建設業許可が必要

①1件の請負代金が1,500万円超の工事(消費税込み)
②延べ面積が150㎡超の木造住宅工事

建築一式工事以外

1件の請負代金が500万円超の工事(消費税込み)

この条件を満たす建設工事の場合、建設業許可が必要です。

工務店で家を1棟立てる工事を請け負えば、当然1500万円を超えるので建設業許可が必要になります。

逆に一人親方の場合、1軒1500万円を超える工事は請け負うことはないので、原則として建設業許可が不要になります。

  • 一人親方:建設業許可はまず不要
  • 工務店:建設業許可がないと仕事にならない

とお考え下さい。

建設業許可を申請する場合、以下の条件を満たしてください。

条件

内容

経営業務の管理責任者

経営に携わる管理責任者の設置です。
個人事業主の場合は本人、法人の場合は役員(代表取締役)などを管理責任者とします。

専任技術者

実務経験3年~10年(学歴や大学の専攻によって異なる)を積んだ人。
一級建築施工管理技士、二級建築施工管理技士(種別:仕上げ)、一級建築士、二級建築士、木造建築士

安定した財政基盤

貸借対照表の純資産の部合計額が500万円以上。
新規会社設立の場合は資本金500万円以上。
個人事業主の場合は預金残高が500万円以上であること。

欠格事項に相当しない

暴力団構成員や彼らと関係ある人間、元犯罪者(禁固以上で執行後5年以内の人)。
建設業で罰金刑を受けて5年以内の人、成年被後見人および被保佐人や破産手続き開始の決定を受けた人は
建設業許可が下りません。

建築施工管理技士(建築士)の資格はここで役に立ちます。

ご自身がこれらの資格を持っていない場合、有資格者を常勤として(つまり役員か正規社員)として採用することが必要です。

建設業許可申請については、ご自身で行わず、専門家が代行することもできますので、「経営サポートプラスアルファ」に相談をしてください。

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独立した大工の働き方

雇われの身から独立した場合、大工は法人化(会社設立)と個人事業主という働き方があります。

基本的に

  • 一人親方:個人事業主
  • 工務店:法人化(会社設立)

でよいと思われますが、一人親方で法人化してもいいですし、工務店でもあえて個人事業主としてやる(社員は数名にしてあとは外注)という方法もあります。

それぞれのメリットやデメリットについて考えてみましょう。

法人と個人事業主のメリット、デメリット

大工として独立したい場合の、法人と個人事業主のメリットとデメリットを見てみましょう。

大工仕事を法人化する(会社設立)

大工を個人事業主として行う

メリット

社会的信用がある

簡単に設立できる

経費の範囲が広い

定款などの作成義務がない

責任の範囲が有限

自由な働き方ができる

赤字繰り越しが10年である

廃業手続きもすぐにできる

売上が多くなれば個人事業主よりも税率が下がる

社会保険に加入できないため、国民健康保険と国民年金では老後が不安

最高税率が23.2%と所得税の約半分

 

デメリット

設立までの手間がかかる

社会的信用がない

設立後の帳票作成や税務申告が大変

最大税率45%と法人税よりはるかに高い

赤字でも法人住民税がかかる

無限責任で経営失敗のマイナスはすべて自分が負う

社会保険へ加入しなければならない

赤字繰り越しが3年までしかできない

会社の廃業手続きが煩雑

経費で落とせる範囲が狭い

法人化すると、登記簿謄本を法務局でとれるようになるので、第3者に自社の情報を公開することになります。

嘘をつけないので、信頼を得やすくなり、高い工事も請け負うことができます。

一方で日々の会計や税務申告では手間がかかります。

工務店の場合、法人化は避けられないものと思い、しっかりした税理士に会計等を依頼すべきです。

一人親方の場合は、個人事業主のままでも構いません。

法人と個人事業主の税制面の違い

法人と個人事業主で大きく違うのが税金面です。

法人は法人税他を納税し、個人事業主は給与所得者と同様、所得税を納めます。

事業主体

法人化(会社設立)

個人事業主

所得税

代表個人の役員報酬を「給与所得」として算出し、その5%~45%

事業の売上から「事業所得」を算出してその5%~45%

個人住民税

代表個人の役員報酬を「給与所得」として算出し、その約10%

事業の売上から「事業所得」を算出してその約10%

消費税

課税売上1000万円以上の場合支払う

課税売上1000万円以上の場合支払う

法人税

かかる(15%~23.2%)

なし

法人住民税

かかる

なし

法人事業税

かかる

なし

個人事業税

なし

かかる

年間売上1000万円前後で、支払う税金の金額が「法人税>所得税」から「法人税<所得税」になり、法人化した方が税金は安くなります。

工務店の場合、年間売上が1000万円に満たないということは考えづらく、その意味でも法人化をすべきだということになります。

労災に加入し事故に備えよう

大工のケガのリスクは高く、特に一人親方の場合は、雇用関係にないので、労災に入れない、労災の保証がないのでは?と危惧されることがあります。

雇用関係がある大工(工務店や建築会社の社員)ならば労災がありますが、独立後は一人親方であっても、経営者、個人事業主であり、原則として労災の対象外です。

しかし、職業柄、一人親方の個人事業主でも入れる労災があります。

一人親方労災保険組合

というもので、ケガの治療費無料、休業補償(1日4000円)、障害が残った場合の一時金、ご不幸があった場合の葬儀費用や遺族への年金支援などもあります。

国の制度なのでご安心ください。

会社設立をした工務店の場合は、社員の方は通常の労災に加入できます。

また、経営者の方も「特別加入」という制度があるので、そこでリスクを減らすことができます。

大工の仕事はケガと隣り合わせであり、そのような事業形態であっても労災(や傷害保険)には加入しましょう。

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大工の独立開業でお悩みの方は「経営サポートプラスアルファ」に相談を!

大工仕事は、今後もなくなることがなく、腕のいい大工さんは重宝されます。

収入も高めであり、技術を磨けば独立して十分にやっていくことができます。

ただし、ケガのリスクは付きまとうため、労災や保険で可能な限りリスクヘッジをします。

独立後は「一人親方」と「工務店」という2つの道があります。

それぞれ望ましい事業形態が異なります。

 

一人親方

工務店

法人化(会社設立)

しなくてもよい

すべき

建設業許可申請

する必要がない

必須

開業資金

自己資金でもなんとかなる

融資などが必要

労災

一人親方労災保険

法人化し労災加入

必要な資格

建築大工技能士

建築大工技能士
建築施工管理技士

目指す独立開業後の形態でかなり異なることを知っておきましょう。

開業資金や建設業許可、労災への加入など準備や諸手続きも多く、専門家のサポートをぜひ受けてください。

資金調達や許認可申請は経験豊富な専門資格を持つ人間が行ったほうがうまくいきます。

「経営サポートプラスアルファ」は会社設立、許認可申請、資金調達、経理処理、確定申告など、独立開業~開業後の諸手続きすべてにかかわれるスタッフをそろえています。

なんでも聞いていただき、大工として最適な独立開業の選択をしてください。

一人親方希望なのか、工務店希望なのかでも手続きや事業計画、資金調達は大きく変わります。

ここは、ぜひ専門家に頼ってください。

「経営サポートプラスアルファ」は土日祝日夜間も相談を受け付けています。

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大工としての未来をぜひ「経営サポートプラスアルファ」も一緒に歩ませてください。

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