一人親方とは、建設業や運送業などで自分一人、もしくは家族のみで事業を行う個人事業主のことを指します。多くの一人親方が抱える課題として、個人事業主のままで活動するのか、それとも法人化するのかという選択が挙げられます。法人化には多くのメリットがありますが、同時にデメリットや手続きの煩雑さも存在します。
この記事では、一人親方が法人化する際のメリットやデメリット、法人化の具体的な手順について詳しく解説します。
一人親方の法人化とは?
一人親方は、雇用契約ではなく業務委託契約に基づき、自分の技術やサービスを提供する事業主です。法人化とは、この一人親方が個人事業主としての地位から会社(株式会社や合同会社)を設立して、法人として活動を開始することを指します。
法人化することで、個人事業主時代とは異なる税務や法務の取り扱いを受けることになり、社会的信用度や税制面での優遇措置を受けることが可能です。
法人化のメリット
1. 節税効果
一人親方が法人化する最大のメリットは、税制面での優遇措置です。個人事業主の場合、所得税は累進課税方式で、所得が多くなるほど税率も高くなります。しかし、法人税は一律課税のため、所得が一定額を超えると法人化することで税率を抑えることができます。特に年収が800万円を超える場合、法人税を適用することで節税効果が期待できます。
さらに、役員報酬として自分に給与を支払うことで、給与所得控除が適用され、法人化による節税効果が高まります。
2. 社会的信用の向上
法人化することで、社会的な信用度が向上します。法人として活動することで、個人事業主では得られない取引先からの信用を得ることができ、大規模な取引や金融機関からの融資も受けやすくなります。
3. 責任の限定
個人事業主は無限責任を負うため、事業に失敗した場合、個人の財産まで差し押さえられるリスクがあります。しかし、法人化すると有限責任となり、出資した資本金の範囲内でしか責任を負いません。これにより、リスクを限定的にすることができます。
4. 退職金の支給が可能
法人化することで、自分に対して退職金を支払うことが可能です。退職金は税制上優遇されており、他の所得と比べて低い税率で課税されます。この制度を利用することで、老後の資金を効率的に準備することができます。
5. 赤字の繰り越しが可能
法人の場合、赤字が出た年度にそれを繰り越して、翌年度以降の利益と相殺することができます。これにより、事業が不安定な初期段階でも、長期的に法人化のメリットを享受することが可能です。
法人化のデメリット
一方で、法人化にはいくつかのデメリットも存在します。
1. 設立・運営コストがかかる
法人を設立するには初期費用が必要です。株式会社の場合、設立費用は約20万円、合同会社でも6万円以上のコストがかかります。さらに、法人運営には決算報告や税務申告などの事務作業が発生し、税理士などのサポートが必要になる場合があります。
2. 赤字でも法人住民税がかかる
法人化すると、赤字であっても毎年約7万円の法人住民税を支払う義務があります。個人事業主であれば、赤字の場合は税負担が免除されることが多いですが、法人ではこの固定費用が発生するため、特に収益が不安定な事業には負担となることがあります。
3. 社会保険の加入が義務
法人化すると、役員や従業員は社会保険に加入しなければなりません。これは個人事業主の時には任意だったものが、法人化によって強制加入となるため、社会保険料の負担が増えることになります。
4. 手続きの煩雑さ
法人化することで、毎年の決算報告や税務申告の手続きが煩雑になります。個人事業主の場合は、比較的簡単な確定申告で済むことが多いですが、法人の場合は財務諸表の作成や税務署への詳細な報告が求められ、税理士に依頼することが一般的です。
一人親方で法人化するメリット・デメリットまとめ
一人親方を法人化する(会社設立) |
一人親方は個人事業主のまま |
メリット |
|
社会的信用がある |
簡単に設立できる |
経費の範囲が広い |
定款などの作成義務がない |
責任の範囲が有限 |
自由な働き方ができる |
赤字繰り越しが10年である |
廃業手続きもすぐにできる |
売上が多くなれば個人事業主よりも税率が下がる |
社会保険に加入できないため、国民健康保険と国民年金では老後が不安 |
最高税率が23.2%と所得税の約半分 |
|
デメリット |
|
設立までの手間がかかる |
社会的信用がない |
設立後の帳票作成や税務申告が大変 |
最大税率45%と法人税よりはるかに高い |
赤字でも法人住民税がかかる |
無限責任で経営失敗のマイナスはすべて自分が負う |
社会保険へ加入しなければならない |
赤字繰り越しが3年までしかできない |
会社の廃業手続きが煩雑 |
経費で落とせる範囲が狭い |
新しく許認可が必要 |
|
個人事業主と法人化の違い
|
法人化(会社形態) |
個人事業主 |
開業方法 |
商号(社名)や事業目的、資本金、役員等を決める |
開業届を税務署に提出する |
定款を作成する |
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定款認証(合同会社は不要) |
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社印を作成する |
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資本金を振り込む |
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法務局へ行き会社設立登記の申請をする |
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設立登記後社会保険や年金の手続きをする |
個人事業主と法人化した場合の組織形態の違い |
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事業の主体 |
法人 |
個人 |
資本金 |
1円以上 |
不要 |
出資者 |
1名以上 |
本人 |
責任 |
有限責任 |
無限責任 |
決算日 |
自由に決められる |
12月31日固定 |
確定申告 |
事業年度末から2か月以内 |
翌年3月15日前後 |
代表者の所得 |
給与所得 |
事業所得 |
設立費用 |
最低60,000円 |
無料 |
印鑑作成 |
必要 |
個人の印鑑でOK |
設立期間 |
数日~最短即日も場合によっては可能 登記完了までに2週間 |
即時即日 |
社会保険 |
強制加入 |
従業員4名位以下は任意加入 |
社会的信用 |
株式会社には劣るもののある |
あまりない |
借入 |
比較的容易 |
結構大変 |
経費として認められる範囲 |
比較的広い |
狭い |
個人事業主と法人化した場合の税金面の違い |
||
所得税 |
代表個人の役員報酬を「給与所得」として算出し、その5%~45% |
事業の売上から「事業所得」を算出してその5%~45% |
個人住民税 |
代表個人の役員報酬を「給与所得」として算出し、その約10% |
事業の売上から「事業所得」を算出してその約10% |
消費税 |
課税売上1000万円以上の場合支払う |
課税売上1000万円以上の場合支払う |
法人税 |
かかる(15%~23.2%) |
なし |
法人住民税 |
かかる |
なし |
法人事業税 |
かかる |
なし |
個人事業税 |
なし |
かかる |
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