板金業の先行きは明るい!?独立開業の際の注意点や事業形態について徹底解説します

建物を建設するときに、板金(金属の板)を加工してさまざまな場所に貼り付け、溶接することが不可欠です。

板金があることによって、その建物は補強され、雨漏りもなくなり、自然災害に強い丈夫な作りになります。

そうした板金を加工するのが「板金屋」(板金工、建物板金)です。

板金屋は建物に欠かせない仕事を行う職人で、木造住宅、鉄筋住宅関係なく需要があります。

しっかりした腕のある板金屋は独立しても十分にやっていくことができます。

今回は、板金屋で独立を考えている方向けに情報提供します。

独立までの道のりなどについてご理解いただければ幸いです。

会社設立の代行費用0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

板金屋として独立する前に確認しておきたいこと

まず板金屋として独立開業する前にチェックしておきたいことをいくつか確認します。

みなさんの板金屋としてのスキル、技能を振り返ってみましょう。

板金屋の仕事とは?

板金屋はどのような仕事をするのか、みなさんが行っているのか確認します。

板金屋の仕事内容

板金屋の仕事を表にしてみました。

みなさんはどのような仕事内容でしょうか?

仕事の工程

仕事内容

雨樋(あまどい)の修理

雨樋(あまどい)は屋根から雨水を集めて、地面に流す、パイプのようなものでどの家にもあります。
現在の雨樋は既製品を組み立てるだけなので、板金屋は関わらないのですが、昔の雨樋は板金屋が修理しながら使い続けます。
金属製の古い雨樋は神社や仏閣などで使われており、その修理需要は根強いものがあります。

金属屋根工事

日本の屋根といえば瓦ですが、瓦ではなくトタン屋根が使われているところもあります。
今では、耐久性を考え、成形ガルバリウム鋼板やガルバリウム瓦棒を使用し屋根を作って取付工事をします。

金属の外壁工事(サイディング)

「金属サイディング」という金属製の外壁を取り付けていきます。
現在は、新築住宅でもリフォーム住宅でも金属の外壁(サイディング)が多く使われています。

水切り板金

屋根で補助的に使われている工事です。
棟板金や天窓の水漏れを防ぐ天窓板金、外壁や土台に使われる土台水切り板金などの工事を行います。
目的は、水をきれいに流して雨漏れなどをなくしていきます。

板金屋の仕事は屋根の工事と水回り(雨水)の導線を確保し、確実に地面に流すルートを作ること、および住宅の外壁工事になります。

建築板金と自動車板金

「板金屋」というと、この「建築板金」のほかに、「自動車板金」という仕事があります。

今回は、建築物の板金ということで対象外ですが、自動車板金のスキルも身に着けておくと、総合的な板金屋として活躍できるかもしれません。

自動車板金の仕事は

  • 物損事故などで凹んだボディを直す
  • 自動車のボディに塗装をする(傷などがついたなど)

この2つがメイン業務になります。

自動車板金の場合「板金」ではなく「鈑金」(同じ「ばんきん」読み)と呼ばれることも多く、これで求人などを見分けることもできます。

建築板金とはスキルの内容が違うので注意してください。

板金屋として取得しておきたい資格、技能

板金屋(以下「建築板金」についての内容)として独立開業する場合、取得したい資格を紹介します。

建築板金技能士

他の建設系職人にも対応するものが「技能士」です。

板金職人向けの技能士もあり、これは確実に取得しておきましょう。

建築板金技能士は各都道府県が実施している「技能検定」=技能士の1つで、厚生労働省認定の公的資格であり信頼があります。

1級~3(or1級、2級)級があり、独立開業にあたってはぜひ1級の取得を目指したいです。

建築板金技能士はさらに「内外装板金作業」と「ダクト板金作業」の2種類に分けられます。

「内外装板金作業」は1級~3級、「ダクト板金作業」は1級と2級になります。

試験概要は以下の通りです。

【試験内容】 
学科試験と実技試験を併用します。
 <実技試験・実地試験> 
建築板金(内外装板金作業)
1級:板金工具及びはんだ付け工具を使用し、溶融亜鉛めっき鋼板(亜鉛鉄板)厚さ0.35mmを加工して、落し口のついた谷どい状の製品を製作する。試験時間:5時間

2級:板金工具及びはんだ付け工具を使用し、溶融亜鉛めっき鋼板(亜鉛鉄板)厚さ0.35mmを加工して、落し口のついた角どい状の製品を製作する。試験時間:4時間30分

3級:板金工具及びはんだ付け工具を使用し、溶融亜鉛めっき鋼板(亜鉛鉄板)厚さ0.35mmを加工して、落し口の付いたホッパーを製作する。試験時間:3時間 

建築板金(ダクト板金作業)
1級:
溶融亜鉛めっき鋼板を加工して、長方形の曲りダクトに長円形の短管を取り付ける。試験時間:4時間

2級:溶融亜鉛めっき鋼板を加工して、正方形の曲りダクトに円形の短管を取り付ける。試験時間:4時間 

【受験資格】 
1級:「3級合格者+実務経験4年」or「2級合格者+実務経験2年」or実務経験7年

2級:3級合格者or実務経験2年

3級:誰でも受験できる 学歴によって実務経験が短縮できることがあります。 
合格率は約50%でそこまで難関資格ではありません。

そのほか板金屋として取得したい資格

板金屋として直接スキルを証明できる資格は「建築板金技能士」のみですが、そのほかにも取得しておくとプラスになる資格が存在します。

余裕があるならばぜひ取得を目指してみましょう。

資格名

内容

施工管理技士

建設業許可を得る場合にはぜひ取得しておきたい資格です。
建物工事の際の責任者として、部下の職人に指示を出すスキルを証明します。

高所作業車運転技能講習

雨樋など屋根と地面との間にあるものの板金工事の際、はしごではなく高所作業車を使用するケースでは、この講習の受講が不可欠になります。

玉掛技能講習

とび職の基本的スキルである「玉掛け」を学ぶことで、高所での作業の際、クレーンなどで荷物や材料を高いところに上げる際に、この講習受講が必須になります。

屋根屋としても活躍できると仕事の幅が広がります

板金屋として直接役に立つ資格は以上ですが、板金屋の仕事を見ていただくとわかりますが、屋根に関する工事が多いです。

当然、瓦屋根や茅葺屋根に関するスキルがあった方が、屋根全般の仕事を請け負うことができます。

板金屋は稼げるのか

板金屋の平均年収は約420万円で、ほぼ日本の平均年収と同額です。

雇用契約の板金屋社員も含めての年収なので、独立開業した場合、みなさんの活躍次第でもっと稼ぐことができます。

年収700万円、800万円を稼ぐ独立板金屋も珍しくありません。

建築板金の仕事は、今後も安定した需要が期待できます。

新築物件についてはそこまで増えない、という見通しもありますが、リフォームや修理需要は確実に残ります。

瓦屋根や茅葺屋根を金属屋根にリフォームするケースが増えていて、しっかり修理スキルを身につければかなり先行きは明るいと言っていいでしょう。

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板金屋して独立するまでの道のり

板金屋の資格や将来についてご理解いただいたので、続いて板金屋として独立開業するまでのロードマップについて考えます。

独立までに5年!板金屋独立のロードマップ

板金屋として独立して活躍するには、少なくとも5年程度の修行期間が必要です。

5年の間に板金スキルと、可能な限り「建築板金技能士」の資格を取得しましょう。

確かな技術とその証明を持ち、独立開業します。

板金屋として独立するまでの流れをまとめました。

開業後の事業形態

法人化(会社形態)

個人事業主

開業前
修業期間

板金屋として実務経験を積む(訳5年)

「建築板金技能士1級」(「内外装板金作業」と「ダクト板金作業」両方、最低でも2級)に合格する

「管工事施工管理技士2級」(可能なら1級)に合格する

屋根屋としてのスキル、資格も取得できると心強い

独立、開業

商号(社名)や事業目的、資本金、役員等を決める

開業届を税務署に提出する

定款を作成する

定款認証(合同会社は不要)

社印を作成する

資本金を振り込む

法務局へ行き会社設立登記の申請をする

設立登記後社会保険や年金の手続きをする

開業資金の準備

法定設立費用6万円~20万円+資本金

開業資金不要

役物(やくもの)加工工場の準備

役物を作る作業場を準備する

独立するには、最低「建築板金技能士2級」(「内外装板金作業」と「ダクト板金作業」)両方取得したいところです。

独立にあたっては、親方との関係を維持し、かつ、リフォーム会社や建設会社とのコネクションをしっかり作り上げるようにしましょう。

神社仏閣関連の板金リフォームを取りたい場合、自治体などとの連携も必要になります。

職人スキルだけではなく、コミュニケーション能力も重要です。

板金屋独立には工場での「役物」加工が必要

他の建設系職人は、身一つ、スキルさえあれば、自宅兼事務所として開業でき、初期の準備はあまり必要ありませんが、板金屋は異なります。

「役物(やくもの)」と言われる小さな部材を加工する工場(こうば)、ないし工場(こうじょう)が必要になります。

屋根やサイディングの材料は現場に直接搬入されますので、そのまま取り付け作業を行うのですが、役物は事前に加工する必要があります。

自宅庭などでできればいいのですが、集合住宅住まいの場合、別の場所に作業場、工場を借りる必要があります。

もちろん、役物作りも外注(下請けに出す)ことはできますが、職人として役物は自分で作るという雰囲気があるようです。

板金屋の必要な開業資金や工場

板金屋として開業する際、何が必要なのか表にまとめてみました。

独立開業費内訳

金額

工具備品

40万円

役物加工工場

敷金礼金等初期費用 50万円

車両(移動、工具運搬、高所作業)

120万円~150万円

合計

210万円~240万円

 

 

(法人の場合)法定設立費用

6万円~20万円+資本金

建設業許可をとる場合

財産要件 500万円(資本金と重複可能)

他の建設系職人の開業と比較して「役物加工工場の取得、維持費」と「車両は高所作業も念頭にする」ことで、費用が掛かります。

高所作業を行える高所作業車やクレーン車は、自家用車の転用ができませんから、新たに購入することになります。

したがって、自宅開業ができず、車両の購入も必要なので、開業資金は他の建設系職人とは違い、しっかり200万円超かかることになります。

そのため、日本政策金融公庫や自治体の創業窓口、あるいは開業に強い専門家集団「経営サポートプラスアルファ」に相談をし、資金調達について考えてください。

自己資金(預金)があればいいのですが、そうでない場合、融資を受けての開業となります。

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板金屋独立にあたりお金や道具以外に考えたいこと

板金屋として独立開業するにあたり、資金面や設備面だけではなく、事業形態をどうするのかも決めなければなりません。

具体的には「会社組織か個人事業主か」と「建設業許可を取るか」の2点です。

法人か個人事業主か

独立にあたり、法人化(株式会社や合同会社)としてスタートするのか、個人事業主で進めるのかで大きな違いがあります。

基本的には個人事業主で構いませんが、年間売上1000万円を見込めるのであれば、法人化した方が税金面などでメリットがあります。

法人化、個人事業主双方のメリットとデメリットをまとめてみました。

板金屋として独立し法人化する(会社設立)

板金屋を個人事業主として行う

メリット

社会的信用がある

簡単に設立できる

経費の範囲が広い

定款などの作成義務がない

責任の範囲が有限

自由な働き方ができる

赤字繰り越しが10年である

廃業手続きもすぐにできる

売上が多くなれば個人事業主よりも税率が下がる

社会保険に加入できないため、国民健康保険と国民年金では老後が不安

最高税率が23.2%と所得税の約半分

 

デメリット

設立までの手間がかかる

社会的信用がない

設立後の帳票作成や税務申告が大変

最大税率45%と法人税よりはるかに高い

赤字でも法人住民税がかかる

無限責任で経営失敗のマイナスはすべて自分が負う

社会保険へ加入しなければならない

赤字繰り越しが3年までしかできない

会社の廃業手続きが煩雑

経費で落とせる範囲が狭い

法人化して社会的信用を重視するのか、個人事業主として会計や申告の簡便さを選ぶのかの選択になります。

また、売上、所得によって支払う税額が異なります。

事業主体

法人化(会社設立)

個人事業主

所得税

代表個人の役員報酬を「給与所得」として算出し、その5%~45%

事業の売上から「事業所得」を算出してその5%~45%

個人住民税

代表個人の役員報酬を「給与所得」として算出し、その約10%

事業の売上から「事業所得」を算出してその約10%

消費税

課税売上1000万円以上の場合支払う(2年間は支払い義務がない特例もあり)

課税売上1000万円以上の場合支払う

法人税

かかる(15%~23.2%)

なし

法人住民税

かかる

なし

法人事業税

かかる

なし

個人事業税

なし

かかる

年間売上1000万円前後で、支払う税金額が「法人税>所得税」→「法人税<所得税」に変わります。

つまり、売上1000万円超の場合、法人化した方が支払う税金が安くなります。

さらに、法人化直後、2年間は消費税の納税義務がないという特例もあります(個人事業主の場合は売上1000万円超の場合、開業直後の申告でも消費税納税義務があります)。

建設業許可は必要?

もう一点、板金屋も立派な建物工事なので、建設業許可が必要なケースがあります。

建設業許可はすべての建物にかかわる事業者に必須なものではなく、下記の条件を満たした事業者に取得義務があります。

建設業許可が必要なケースは

建築一式工事

次のどちらかに当てはまる工事の場合建設業許可が必要

①1件の請負代金が1,500万円超の工事(消費税込み)
②延べ面積が150㎡超の木造住宅工事

建築一式工事以外

1件の請負代金が500万円超の工事(消費税込み)

であり、板金屋は「建築一式工事以外」に該当します。

1件当たり500万円を超える板金工事を一人親方とて請け負う可能性は低く、当面、建設業許可がいらない可能性が高いです。

将来的に、職人の弟子を抱えて大規模な板金工事を行いたい場合や、信頼度を高めたい場合(500万円未満の工事でも建設業許可があると信頼されます)建設業許可を取得する戦略もあります。

建設業許可は「建設業許可(板金工事業許可)」になります。

同じ屋根でも、瓦屋根の工事は「建設業許可(屋根工事業許可)」で違う建設業許可になるので注意してください。

条件

内容

経営業務の管理責任者

経営に携わる管理責任者の設置です。
個人事業主の場合は本人、法人の場合は役員(代表取締役)などを管理責任者とします。
 

専任技術者

実務経験(学歴や大学の専攻によって年数が異なる)を積んだ人。
一級管工事施工管理技士、二級管工事施工管理技士、「建築板金技能士」

安定した財政基盤

貸借対照表の純資産の部合計額が500万円以上。
新規会社設立の場合は資本金500万円以上。
個人事業主の場合は預金残高が500万円以上であること。

欠格事項に相当しない

暴力団構成員や彼らと関係ある人間、元犯罪者(禁固以上で執行後5年以内の人)。
建設業で罰金刑を受けて5年以内の人、成年被後見人および被保佐人や破産手続き開始の決定を受けた人は
建設業許可が下りません。

建設板金技能士2級の場合、3年以上の実務経験が必要です。

独立開業時すぐに建設業許可を取得しなくても、将来的に取得を考えるという事でも構いません。

個人事業主でも建設業許可を取得できます。

法人化の可否とは別の判断になります。

会社設立の代行費用0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

板金屋独立にあたって「経営サポートプラスアルファ」にぜひ相談を!

以上、板金屋の独立開業について説明しました。

板金屋は今後も修理やリフォーム需要が期待でき、しっかりした技術があれば稼げる分野です。

他の建設系職人の独立開業と違うのは、役物の加工工場が必要になり、そのための資金が必要になることです。

つまり、初期費用(敷金礼金他)も維持コスト(家賃)も、自宅兼事務所で独立開業できる職人とは異なることを理解してください。

そのため、事業計画や毎月の返済計画をしっかり立て、損をしない、返済能力に余裕がある事業展開が求められます。

法人化や建設業許可もその観点も含めて考えないといけないので、他の建設系職人以上にしっかり戦略を持つことが重要です。

そのため、ぜひ独立開業にあたっては専門家の意見も聞いてください。

素人判断は道を誤る可能性があります。

「経営サポートプラスアルファ」では、開業、資金調達、返済計画などについて詳しい専門家スタッフがそろっています。

板金屋として独立するためのステップを確実にクリアできるよう適切にアドバイスします。

わからないことは何でも聞いてください。

土日祝日夜間も対応しますし、遠隔地の方は、LINEやZoomを使っての相談ができます。

せっかく将来性のある技術を持っている板金屋なので、それを独立開業して、さらにステップアップを目指されてはいかがでしょうか?

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