かつて「有限会社」という会社組織形態がありました。
それと入れ替えるように誕生したのが「合同会社」です。
両者は同じようなもので、ニーズが重なるため、入れ替わるようになったのでしょうか?
そもそも両者に違いはあるのでしょうか?
それとも、有限会社のニーズが終わり、新しく合同会社のニーズが生まれたのでしょうか?
今回は有限会社と合同会社の違いについてお話します。
以前ならば有限会社を設立していたケースは、今の時代合同会社の設立になるのでしょうか?
有限会社と合同会社の違いを知り、会社設立についてこの記事から考えてみて下さい。
有限会社廃止と合同会社制度の新設
まずかつて存在した有限会社廃止と合同会社制度の新設について理解しておきましょう。
今でも「有限会社○○」という会社はありますが、それは大丈夫なのでしょうか?
合同会社と有限会社の違いは何なのでしょうか?
有限会社廃止の経緯
有限会社とは、以前存在した「有限会社法」(1938年~2006年)に基づいて設立が認められていた会社形態です。
株式会社は会社法に基づいて設立されていたので、同じ会社でありながら設立根拠が違いました。
しかし、2006年の法律の改正に伴って、株式会社の柔軟性が広くなり、有限会社でなくても株式会社でその機能を内包できるようになったため、有限会社法であえて規定しなくても同じ機能を持つ株式会社の設立が可能になりました。
株式会社と有限会社の違い、垣根がなくなりました。
その結果、2006年の新会社法以降新規に有限会社を設立することは不可能になりました。
それまで存在していた有限会社は「特例有限会社」として存在しています。
かつての有限会社と特例有限会社に違いはほとんどありませんが、新規の有限会社が不可能になっています。
合同会社制定の経緯
有限会社制度が廃止されるタイミングで新しくできたのが「合同会社」です。
合同会社制度は、合同会社とはアメリカのLLC(Limited Liability Company)をモデルとした作られたもので、アメリカの現地では株式会社とほぼ同数のLLCが設立されています。
LLCは少数派ではなく、「当たり前」の存在としてLLC(≒合同会社。違いは少ない)があります。
合同会社と株主と経営者という従来の会社(有限会社も含む)との違いとして、出資者と経営者が同じ組織で、迅速な意思決定ができるという特徴があります。
有限会社でも株式を発行するため、中途半端な位置づけとなっていて、合同会社ができた以上、有限会社の特徴やメリット、株式会社との違いはなくなり、そのため有限会社制度が廃止されたのです。
合同会社で有限会社が持っていたメリットを、これまで以上に享受できるようになったのが大きな理由です。
合同会社は最近設立数が増え、新規に設立される会社の4分の1を占めるようになりました。
株式会社と比べて少数派に違いはないのですが、年々設立割合が増えています。
株式会社と合同会社の違いがわかり、かつ合同会社を許容する人が増えてきました。
有限会社があった最大の理由は「最低資本金制度」、合同会社はそれがない
改正前の有限会社、そして株式会社には、「最低資本金制度」というものがありました。
会社設立に際しては資本金が必要ですが、その金額がとても高かったのです。
株式会社と有限会社の最低資本金には違いがあり、有限会社の方が安く設立できました。
有限会社を設立できた2006年まで、そして合同会社が設立できるようになった2006年以降、会社設立に必要な資本金の金額は以下のように推移します。
違いを知ってください。
設立に必要な最低資本金 | 有限会社 | 株式会社 | 合同会社 |
---|---|---|---|
~1990年 | 10万円 | 35万円 | – |
1990年~2006年 | 300万円 | 1000万円 | – |
2006年~ | 設立不可 | 1円 | 1円 |
株式会社を設立する場合1000万円の資本金が必要(2006年の会社法改定前まで)でした。
しかし、個人で設立する場合や家族経営で資本金1000万円を調達するのは非常に大変で、そのため、小規模企業向けに資本金が少なくて済む有限会社がありました。
事業の拡大を目指さないのであれば、有限会社を立ち上げても、大きな違いはありませんでした。
しかし、株式会社と有限会社ではやはり「株式会社」の方が世間的な通りがいい、というのが違いとしてありました。
最低資本金額の違い、つまり、資本金調達のハードルが高ければ、新規の会社設立、創業を阻害する要因になってしまいます。
しかし、なかなか会社設立に1000万円を調達するというのはハードルが高く、新規開業を阻害する要因にもなっていました。
これを解消するため、2006年の新会社法制定の際に最低資本金額を1円とし、実質資本金によるハードルをなくしました。最低資本金の違いどころか、資本金そのものはほとんど設立に際して不要になったので、最低資本金が安い有限会社が不要になりました。
その後は、会社の機能の違い、権限の違いとして、株式会社にするのか合同会社にするのかの判断になりました。
資本金を用意できるかどうかで、会社設立判断に違いが生じることがなくなりました。
有限会社と合同会社の違い
最低資本金額が1円になったことや、新しくより少人数、気心が知れた仲間と会社運営ができる同号会社制度ができたことで、有限会社はその使命を終えて、新規設立ができなくなりました。
もちろん、当時の有限会社は「特例有限会社」として残っていますが、有限会社と比べて合同会社はどのような違いがあるのでしょうか?
違いがあまりなく、有限会社が持っていたメリットが合同会社にもあるならば、現在、株式会社ではなく合同会社の設立も視野に入れていただければと存じます。
有限会社と合同会社の機能面の違い
有限会社と合同会社の機能面での違いを表にしてみました。
違いの内容 |
有限会社 |
合同会社 |
代表者の名称 |
『代表取締役』(任意) |
『代表社員』 |
資本金 |
300万円以上 |
1円以上 |
出資者と経営者 |
ほぼ同じ |
同じ |
重要事項の決定 |
社員総会の議決 |
社員全員の同意 |
意思決定方法 |
取締役の議決 (経営者は『取締役』) |
社員の過半数の同意が必要 (経営者は『社員』) |
最高意思決定機関 |
社員総会 |
社員総会 |
業務執行者 |
取締役 |
業務執行社員あるいは社員全員 |
責任の範囲 |
有限責任 |
有限責任 |
役員の任期 |
なし |
なし |
定款の認証 |
必要 |
必要なし |
社員数制限 |
50名まで |
|
決算公告 |
不要 |
不要 |
株式の譲渡 |
自由 |
「持分」譲渡には社員全員の同意が必要 |
社会的な認知度 |
やや低い |
低い |
株式の公開 |
できない |
できない(「株主」がいない) |
有限会社は株式会社と違い、「株主」がいません。資本金を出資した人たちが経営に参画することが多く(参加しない人も出資は可能です)、上場して、市場を通じて資金調達することは予定されていません。
つまり、株式会社のように証券取引所などで株の売買ができません。
これは合同会社も同様で違いがありません。
大きな違いは、重大事項の決議について、有限会社は一応多数決ですが、合同会社は全員の同意が必要なことです。また、有限会社は「代表取締役」を名乗れますが、合同会社は「代表社員」という肩書となります。
肩書の違いは対外的には結構重要です。
社員数については、有限会社の場合50名までという制限があり、それ以上になると株式会社とならざるを得ませんでした。
しかし、合同会社の場合はそのような制限がありません。
有限会社が株式会社まではいかないものの、それなりの信頼感があったのは「代表取締役」と名乗れたことが大きく、これにより普通の人は「会社社長だ」とイメージできました。
合同会社の場合「代表社員」という肩書になるので、社長というよりも、社員のリーダー?と思われる可能性があります。
ただし、今や合同会社の成立は全会社設立の25%を占めるため、マイナーな存在ではなくなっています。
有限会社と合同会社の費用面の違い
次に有限会社と合同会社の会社設立にかかる費用の違いを比較してみましょう。
合同会社は株式会社と比較して、安く会社設立できるというメリットがありますが、当時の有限会社と比較して何か違いはあるのか表にしてみました。
現行の株式会社も違いを理解していただくために合わせて記載します。
違いの内容 |
有限会社 |
合同会社 |
株式会社 |
|
会社設立にかかる費用 |
||
定款印紙代 |
4万円(電子定款は当時なし) |
紙の定款:4万円 |
紙の定款:4万円 |
定款認証代
|
5万円 |
0円 |
5万円 |
謄本代 |
2,000円 |
なし |
2,000円 |
登録免許税 |
最低6万円 |
最低6万円 |
最低15万円 |
資本金 |
最低300万円 |
最低1円 |
最低1円 |
|
|
|
|
合計 |
最低15万2千円+資本金 |
最低6万円+資本金 |
最低20万2千円+資本金 |
|
支払う税金 |
||
|
同じもの |
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法人税 |
2006年以前と比較できないので割愛 |
税率は共通 |
|
法人住民税 |
税率は共通 |
||
法人事業税 |
税率は共通 |
||
消費税 |
税率は共通 |
||
|
違い |
||
登録免許税 |
6万円 |
6万円 |
15万円 |
有限会社も合同会社も、設立にかかる法定費用はあまり変わりません。
有限会社は定款認証が不可欠であり、その部分が合同会社と違います。
また、有限会社の設立ができた2006年までは電子定款の制度がありませんでした。
電子定款制度ができたのは2007年4月からになります。
したがって、当時はすべて紙の定款なので、公証役場にて定款認証が必須になります。
登録免許税などを比較すると、合同会社は有限会社からコンバートされる存在だったことが分かります。
合同会社は有限会社の後継なのか?違いを比較して考察してみた
有限会社制度が廃止されと同時に新しい合同会社制度ができましたので、両者が併存していた期間はありません。
しかし、ここまで有限会社と合同会社の違いを比較すると、ほぼ合同会社は有限会社の後継的な位置づけであることが分かります。
違いではなく共通点として
- 設立にかかわる初期費用が安い
- 株式上場を前提としない
- 家族など親しい人の合議で会社を運営する
- 資金調達は株式発行によらない
- 会社拡大を目的としない
- 役員など中核メンバーはずっと同じ人たちでやっていく
と言ったことが挙げられます。
- 最低資本金の違い
- 会社代表の呼称の違い
- 社員数制限の違い
などは違いとして挙げられますが、2006年以前に有限会社を設立していたようなケースでは、今、合同会社を設立しても大きな違いはなさそうです。
合同会社と株式会社の違いは、会社法の改正や有限会社法の廃止によって、有限会社と株式会社の違いを理解し、会社設立できた時代と似ています。
対外的な呼称の違い(代表社員、代表取締役)はかなり重要です。
現在は合同会社と株式会社の違いを認識し、その違いによるメリット、デメリットを理解し、違いを活かす方向で株式会社にするのか有限会社にするのか決めていただくことになります。
ただし、合同会社が「代表取締役」という肩書が使えないことは、有限会社と合同会社の大きな違いで、合同会社の大きなデメリットになり得ます。
世間が受けるイメージの違いをよく理解して、本当に適切な会社設立につなげてください。
合同会社設立を考えている方は「経営サポートプラスアルファ」までお問い合わせください
有限会社の設立はもうできませんが、それに代わるもの+αの存在として、合同会社が選択肢となります。
株式会社と比較しても、旧有限会社に近い性質を持つため、将来的な上場や社員の拡大を目指さないのであれば、合同会社を設立するのも1つの選択肢に入ります。
株式会社と合同会社は意思決定過程などに大きな違いがあり、その違いを理解して設立しないと後で困ります。
合同会社だけではなく、株式会社のほうがいいケースもあるため、自分だけでは判断がつきません。
有限会社はもうないので、選択肢の違いをしっかり知って悔いのない会社設立を目指しましょう。
そのためには、専門家のアドバイスを受けることも必要です。
経営サポートプラスアルファでは、会社設立に詳しい専門家が、有限会社のことも踏まえて、合同会社と株式会社の違いから、どちらを設立すべきかなども合わせてアドバイスします。
相談は年中無休、土日祝日夜も対応します。
遠隔地の方はLINEやZoomでもOKです。
まず疑問点を解消し、どういう規模でどのような事業計画を持っているのか聞かせてください。
すばらしい会社設立についてともに考えていきましょう。
よろしくお願いいたします。