自分で事業を始めたい場合、新会社を設立するという方法を思い浮かべる人が多いはずです。一方で、新会社を設立せず、個人事業主としてやっていくというやり方もあります。新会社を設立する場合も、合同会社なのか株式会社なのか、それぞれにメリットがあり、どちらを設立すべきなのか見極める必要があります。
今回は新会社の設立についてさまざまな方向から検証し、よりよい起業について考えていきます。新会社設立は一大事業であり、大きな選択になるのでぜひ正しい選択をしてください。
今回は会社設立、一から新会社を設立したい場合の選択について解説します。
新会社設立と個人事業主それぞれの特徴を比較
創業、開業にあたり新会社設立と個人事業主、どちらを選ぶべきなのか、まず比較表にしました。会社設立ではない選択肢もあることを知ってください。
新会社設立(法人) | 個人事業主 | |
---|---|---|
事業の主体 | 法人 | 個人 |
資本金 | 1円以上 | 不要 |
出資者 | 1名以上 | 本人 |
責任 | 有限責任 | 無限責任 |
決算日 | 自由に決められる | 12月31日固定 |
確定申告 | 事業年度末から2か月以内 | 翌年3月15日前後 |
代表者の所得 | 給与所得 | 事業所得 |
設立費用 | 最低60,000円 | 無料 |
印鑑作成 | 必要 | 個人の印鑑でOK |
設立期間 | 数日~最短即日も場合によっては可能 | 即時即日 |
社会保険 | 強制加入 | 従業員4名位以下は任意加入 |
社会的信用 | 株式会社>合同会社 | あまりない |
金融機関からの借入 | 比較的容易 | 結構大変 |
新会社設立(法人) | 個人事業主 | |
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所得税 | 代表個人の役員報酬を「給与所得」として算出し、その5%~45% | 事業の売上から「事業所得」を算出してその5%~45% |
個人住民税 | 代表個人の役員報酬を「給与所得」として算出し、その約10% | 事業の売上から「事業所得」を算出してその約10% |
消費税 | 課税売上1000万円以上の場合支払う | 課税売上1000万円以上の場合支払う |
法人税 | かかる | なし |
法人住民税 | かかる | なし |
法人事業税 | かかる | なし |
個人事業税 | なし | かかる |
新会社設立には手続きが必要ですが、個人事業主として開業する場合、設立のための資本金や、設立登記、設立に必要な書類などは必要なく、新会社設立ではなく、開業届を税務署に提出するだけでOKです。
新会社設立にかかる費用を大幅にカットできるというのは個人事業主の強みになります。
社会的信用、責任の有無、税金などに大きな違いがあります。年間売上が数百万円規模であれば、まず個人事業主として開業し様子を見て、売上が上がっていくようであれば新会社設立に切り替えるという方法でいいでしょう。
最初に新会社設立をして法人開業して、ダメだったから法人を廃業して個人事業主としてやっていくというのは手間もかかりおすすめできません。
新会社設立は合同会社と株式会社どちらがいいのか~機能面
新会社を設立しようと思った場合、現状では合同会社か株式会社の選択になります。合名会社や合資会社もありますが、年間の設立件数はそれぞれ1%未満であり、ほとんどないのが現状です。
合同会社の設立が約25%、株式会社の設立が約75%となります。両者はその機能面で以下のような違いがあります。
合同会社 | 株式会社 | |
---|---|---|
代表者の名称 | 『代表社員』 | 『代表取締役』 |
資本金 | 1円以上 | 1円以上 |
出資者と経営者 | 同じ | 異なる |
重要事項の決定 | 社員全員の同意 | 株主総会の議決 |
意思決定方法 | 社員の過半数の同意が必要(経営者は『社員』) | 取締役の議決(経営者は『取締役』) |
最高意思決定機関 | 社員総会 | 株主総会 |
業務執行者 | 業務執行社員あるいは社員全員 | 取締役 |
責任の範囲 | 有限責任 | 有限責任 |
役員の任期 | なし | 2年ごとに更新(最大10年) |
定款の認証 | 必要なし | 必要 |
決算公告 | 不要 | 毎年必要 |
出資者への利益分配 | 社員間の合意で自由に配分 | 株式の保保有割合に応じて配分 |
株式の譲渡 | 社員全員の同意が必要 | 自由 |
社会的な認知度 | 低い | 高い |
株式の公開 | できない(「株主」がいない) | できる |
新会社は、自分1人や気心の知れた友人、知人、家族で開業するならば合同会社の方が機動性はありメリットがあります。
一方、将来的な事業拡張や広く出資を募りたい場合は株式会社の方がいいでしょう。圧倒的に株式会社の方が設立数は多いので、世間的な知名度や信用度は株式会社の方が高い傾向にあります。ただし、年々合同会社も増えているので、今後は両社の信用度や認知度の差異は狭まっていくことが予想されます。
「代表取締役」と名刺に名乗れるのは株式会社です。新会社を設立するにあたり、顧客がどの層なのか、事業展開の方法なども考えて、合同会社か株式会社かを決めてください。
新会社設立は合同会社と株式会社どちらがいいのか~費用面
続いて新会社設立にかかる費用、および税金面で合同会社と株式会社を比較します。
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合同会社 |
株式会社 |
新会社設立にかかる費用 |
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定款印紙代 |
紙の定款:4万円 |
紙の定款:4万円 |
定款認証代 |
0円(認証手続きそのものが認証不要) |
5万円 |
謄本代 |
なし |
2,000円 |
登録免許税 |
最低6万円 |
最低15万円 |
資本金 |
最低1円 |
最低1円 |
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合計 |
最低6万円+資本金 |
最低20万2千円+資本金 |
支払う税金 |
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同じもの |
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法人税 |
税率は共通 |
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法人住民税 |
税率は共通 |
|
法人事業税 |
税率は共通 |
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消費税 |
税率は共通 |
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違うもの |
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登録免許税 |
6万円 |
15万円 |
新会社設立にかかる法定費用は「株式会社>>合同会社」で、合同会社の方が安く設立できます。一方、税金面では合同会社も株式会社も差異がありません。
開業費用の差15万円をケチるために合同会社にするという選択肢はおすすめできず、将来を見据えて、合同会社と株式会社、どちらの形態での新会社設立にするのか判断してください。
新会社設立のメリットとデメリット
このように新会社設立の場合にも合同会社と株式会社で差異があることがわかりました。また、新会社を設立して事業を営むのか、個人事業主として行うのかでも、その内容に違いがあることもわかりました。
それらを踏まえ、新会社設立をすることのメリットとデメリットを簡単にまとめてみました。
新会社設立のメリット |
新会社設立のデメリット |
社会的信用が大きい |
法人住民税の均等割が発生する |
売上によっては節税になる |
設立、移転、解散等に費用が掛かる |
金融機関からの融資を受けやすい |
社会保険への加入義務、費用の折半 |
決算月を自由に選べる |
経理処理等が複雑になりコストがかかる |
赤字の繰り越しが10年まで可能 |
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相続税がかからない |
|
会社を設立する最大のメリットは、「○○会社△△」と名乗れるので、社会的信用が個人事業主とけた違いに上がります。取引先も新会社を設立していれば、信用してくれます。また、金融機関も個人事業主と比べて新会社の方が融資を行いやすいです。
新会社を設立する際に、法人登記をし、第三者へ自分の会社について閲覧できる状態にするため、社会的な信用が得られます。
その信用があるからこそ、赤字の繰り越しが個人事業主の3年分に対して、10年と非常に長い期間恩恵を得ることができます。
また、個人事業主の場合、代表者が亡くなり、相続が発生すると大事になりますが、新会社に事業を移しておけば、相続税や相続にかかわるごたごたも解消できます。
もちろん、新会社を設立し法人化することで、会計処理が煩雑になり、自分たちだけではできなくなります。税理士などにお願いし、会計や税務申告をお願いすることが多く、社会保険加入義務など費用面でも出費が多くなります。
信頼とコスト・出費をどう天秤にかけるのか、新会社設立をして法人化するメリットとデメリットをよく見極めてください。
新会社設立までの流れを解説
新会社を設立すると決めた場合、どのような流れになるのでしょうか?個人事業主の場合は、税務署に開業届を出して(可能ならば青色申告承認申請書を合わせて提出して)終わりですが、新会社設立の場合は勝手が違います。
新会社設立について、大きな流れとして以下を抑えておいてください。
新会社の発起人や本店の所在地を決定する
誰が新会社を設立するのか、その中心となる発起人を決定します。1人会社の場合は自分で良いのですが、数人で会社を立ち上げる場合、発起人も決めます。
その後、本店所在地を決定します。自宅なのか、あるいはどこか事業所を借りるのか、登記事項にもなるのでしっかり決めてください。
新会社の機関設計
代表取締役(合同会社の場合代表社員)を誰にするのか、取締役や監査役は誰にするのかなど新会社の機関を決めていきます。
1人会社の場合は、代表取締役=自分でいいのですが、そうでない場合は話し合いが必要です。
新会社の目的決定や類似商号のチェック
新会社の目的を決めます。どういう事業を目的として新会社を設立するのか、登記事項にもなるので、しっかりこちらも決めてください。
また、設立する新会社の商号(新会社名)に似たものがないのかも調べましょう。近所に同じ社名の会社あるといろいろ大変です。また、同業他社とネーミングが被るのも避けましょう。
さらに、社会的イメージの悪い社名と同じにするのもよろしくないです。
「当社は○○事件を起こした△△とは関係ありません」とHPに記載するのは本当にばからしいです。新会社早々躓いてしまうことになります。
会社や代表の印鑑作成
新会社の社印や代表者印を作成します。個人事業主のように自分が使っている印鑑は不可です。新しく「○○株式会社代表取締役▼△」といった印鑑を作り、登記時に押す必要があります。
新会社には社印と代表社印が必要だと憶えておいてください。
定款の作成 定款の認証(★合同会社は不要)
設立する新会社の「憲法」ともいわれる定款を作成します。法的にも重要になるので、弁護士や司法書士のアドバイスを聞きながら行うのが普通です。専門家に代行してもらうこともできます。定款作成後株式会社などの場合、公証役場に行き定款認証が必要になります。定款認証は合同会社の場合不要で、ここが株式会社と合同会社の大きな違いになります。
金融機関に対する手続きと資本金の払い込み
新会社の資本金を口座に振込みします。2006年の新会社法によって、これまで300万円~1000万円だった最低資本金額が1円になり、実質資本金がなくなりました。
しかし、形式的にも最低資本金額の振込みが必要です。もちろん、本当に新会社の事業遂行に必要な資本金であればしっかり設定してください。
この新会社設立に伴う資本金振込みに意外と手間取る可能性があります。
新会社の設立登記
最後は新会社の設立登記です。書類を揃え、法務局に行き設立登記をします。弁護士や司法書士に手続き代行を依頼することもできます。
ここで設立登記が受理されてはじめて新会社がこの世にお披露目されることになります。登記後、第三者も登記簿を取得することができるようになり、社会的信用度も得られることになります。
新会社設立についてお悩みの場合「経営サポートプラスアルファ」に相談を!
新会社を設立すれば万事うまくいくというわけではなく、そもそも法人として新会社を設立すべきなのか、それとも個人事業主としてやっていくのかでまず1つ目の選択となります。
続いて、新会社設立となった場合、株式会社と合同会社のいずれかにすべきなのか、2つ目の選択をしなければなりません。
この選択を間違えると、創業後の事業継続に大きな影響があるかもしれません。そうはいっても、自分だけで決めるのは怖い、そういう方は、ぜひ専門家を頼ってください。
「経営サポートプラスアルファ」では、新会社設立のノウハウを持つ税理士などがたくさん在籍していて、適時適切なアドバイスをいたします。新会社設立でお悩みの方、ぜひなんでも聞いてください。
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よろしくお願いいたします。