小学生や中学生の未成年が会社設立して社長になったというニュースがTVやWEBメディアで流れることがあります。
未成年、子供なのにアイデア次第で会社設立し、経営者になることは可能で、実際に未成年で会社設立し活躍している方々がいます。
しかし、未成年ということは、20歳未満(令和4年(2022年)4月1日より 18歳未満 )で法律能力がないことになります。
法的に自分の意志で法律行為ができない未成年が果たして、大人と同等に会社設立が可能なのでしょうか?
未成年が会社設立し社長になっても、対外的にはその未成年が代表であり、代表を信じて交わした契約が未成年無効取り取消になってしまえばビジネスになりません。
未成年が会社設立し代表になることのリスクはどのくらいあるのでしょうか?
今回は未成年で会社設立することについてその可否や可能性、必要なこと、メリット、デメリットなどを解説します。
頭が柔軟な未成年のうちに事業を立ち上げるというのは、今後生きていくうえで大きな糧になるはずです。
未成年は会社設立できるのか?
まず大前提として、未成年でも会社設立をすることは「できます」「可能です」。
会社設立は成人だけではなく未成年も行うことができ、未成年でも代表取締役(社長)や役員になることができます。
事実、未成年時に会社設立をして有名企業まで経営を成功させた有名人も多いのです。
したがって、未成年でも画期的なアイデア次第では十分に事業を成功させることが可能なのです。
未成年が会社設立する場合の法律行為はどうなる?
未成年が契約や商取引など法律行為を自身の判断で行うことはできません。
携帯電話の契約も、中古ゲームソフトを売る際も、法的な代理人である親の署名捺印(同意書)が必要なのはそのためです。
20歳未満の未成年が何か法的行為をしようとする場合、たいていは代理人として親(どちらか)の同意が必要になります。
未成年が何か法的な行為をする場合、自分だけで行えないのは、身の回りの出来事で明らかです。
携帯電話の契約や中古ゲーム買取ですらそうなのに、会社設立や会社の代表、経営者として未成年自身の判断として行うことができるのでしょうか?
実は未成年でも会社設立し事業を開始すると、代理人(親)からの同意を得ないで契約ができるようになる民法の例外規定(※)があります。
第6条(未成年者の営業の許可) 1.一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。 2.前項の場合において、未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは、その法定代理人は、第四編(親族)の規定に従い、その許可を取り消し、又はこれを制限することができる。 |
民法6条第一項が根拠になっています。
大前提として、民法では、未成年が事業を行う場合(携帯の契約なども含む)には法定代理人の親からその事業を行うことについて許可を得る必要があります。
例外として、民法6条で定められた「一種又は数種の営業を許された」=親から許可を得た事業に関しては、成人と同じように未成年自身の判断で営業行為(事業にかかわること、経営上の決定)を行っても、成人と同じであり親の同意が不要になります。
民法上の規定は、子供と親との中の取り決めになりますが、会社設立して商業行為を行うので、商法の規定も考えなければなりません。
特に会社設立し、株式会社や合同会社を立ち上げる場合は注意が必要です。
商法5条では
第5条(未成年者登記) 未成年者が前条の営業を行うときは、その登記をしなければならない。 |
このような規定があります。
未成年登記とは、未成年であるが商法5条で営業行為ができる未成年であることを、法務局へ行き登記することです。
しかし、この未成年登記をしている未成年の人は非常に少なく、年間10件以下の年が多数なのです(※)。
0名の年もあります。2020年はここ20数年で最も多い22件の未成年登記がありました。
※『登記統計 商業・法人商業・法人登記(年次表) 種類別 商号,未成年者,後見人及び支配人の登記の件数 | 統計表・グラフ表示 | 政府統計の総合窓口)より
商法では未成年が商法上の事業を行う場合にその旨の登記が必要とされている点にも注意が必要ですが、この少なさは、未成年の会社設立や経営者が非常に少ない、あるいは、実際に会社設立しているのに未成年登記を怠っている(民法6条のみで事業)未成年が多いのか、いずれかの可能性がありそうです。
後者だとすると、一般の人がクライアントとして、未成年が経営している会社と取引をするのは、リスクと考えなければならないかもしれません。
成年年齢が2022年より引下げになり大学生は大人(成年)として同等に扱われる
現在「未成年」というのは、「20歳未満」であると民法で決められています。
つまり、18歳や19歳の大学生や社会人は未成年であり、自分だけで契約行為をすることができません。
もちろん、会社設立についても未成年の規定が適用されます。
しかし、2018年6月に「民法の一部を改正する法律」が成立し、成年(成人)年齢が現在の20歳から2022年4月から18歳に引き下げになりました。
同法により2022年4月1日時点で18歳の人は未成年ではなく、成年、成人となり大人として親の同意不要で法律行為ができるようになります。(ギャンブルや飲酒は民法ではなく別の法律の規定なので、18歳、19歳はNGのままです)。
2022年4月以降は18歳、19歳の人も自分の判断で会社設立ができるようになり、会社設立の経営も大人として自己判断で行えます。
しかし、責任も一人前の大人として求められるようになり、当然経営に失敗したときのリスク(借金返済や自己破産など)も未成年のように親が助けてくれません。
大人として会社設立した責任を取ることになります。
未成年が会社設立する場合にどうする?
未成年が会社設立をしようとして、なおかつ事業について親の同意や未成年登記の見通しが立った場合、法的にも現実的にも会社設立や経営が可能になります。
その際のポイントについていくつか押さえておきましょう。
未成年が会社設立する際に必要な書類
未成年が会社設立する際に必要な書類は、15歳以上(15歳~)と15歳未満(~14歳)で若干異なるので注意してください。
15歳未満の未成年が別途必要な書類
15歳未満(14歳まで)の未成年が会社設立に際して、通常の書類(会社設立登記申請書、定款、社印等)に加えて、独自に必要なものは以下になります。
- 親権者の印鑑証明書
- 戸籍謄本(親子関係がわかるもの)
15歳以上の未成年が別途必要な書類
15以上の未成年が会社設立に際して、通常の書類(会社設立登記申請書、定款、社印等)に加えて、独自に必要なものは以下になります。
- 親権者の同意書
- 戸籍謄本(親子関係がわかるもの)
- 「本人」の印鑑証明書
- 親権者の印鑑証明書
※未成年者が発起人になることに親権者が同意する
15歳未満の未成年が会社を設立する場合に生じる困難
必要書類を見ると15歳未満の方が書類が少なくて済むので、未成年の会社設立に有利だと誤解されがちですが、全く違います。
15歳未満の未成年は、会社設立の発起人にも取締役にもなれないのです。
つまり、個人事業主として15歳未満の未成年が事業を始めることはできますが、会社設立してその役員として(社長も含む)自分の判断で経営を行うことはできないのです。
ただし例外があるので、それについては後述します。
一方、15歳以上の未成年の場合、親(親権者)の同意が得られれば、同意した範囲において、民法の定めによって自己の判断で経営ができ、取締役にも社長にもなることができます。
その違いは「実印」「印鑑証明書」にあります。
会社設立に際しては「印鑑証明書」が必要になり、実印を印鑑登録しなければなりません。
15歳未満の人は印鑑登録できないので、印鑑証明書を取ることができず、会社設立の際の必要書類をそろえることができないのです。
可能なのは親が会社設立の発起人になり、親が法定代理人として経営を行います。
つまり、名目上15歳未満の未成年を役員にすることはできても、実際の経営は親のひも付きになるのです。
15歳以上の未成年は会社設立もその後の経営も(民法の範囲で)可能です。
また、法人設立の際は法人名義の銀行口座が必要になります。それについても、印鑑証明書が必要であり、15歳未満で会社を設立する場合は、親が会社の代表者として法人口座の開設の手続きを行うことになります。
15歳以上の未成年のケースと15歳未満の未成年のケースでは、印鑑登録、印鑑証明書の取得の有無が大きな違いとなります。
しかし、15歳以上で印鑑証明書などがあっても、最近は法人口座開設について、銀行側のチェックが厳しくなっています。
振り込め詐欺などの犯罪も多発しているため、未成年が法人口座を開設しようとする場合、審査が必要以上に厳格になっています。
ひょっとすると、書類がそろっていても、審査に落ちる可能性もあり、親との付き合いがある金融機関にするなど、なるべく信用を得やすいところで、法人設立のための口座開設をした方が無難です。
取締役未成年は原則15歳以上。15歳未満がなれる裏技はないのか?
未成年の会社設立、取締役就任について、印鑑証明書が取れる15歳が分かれ目になり、15歳未満は原則厳しいということを述べました。
しかし、会社法では取締役(役員)の年齢について、未成年不可とか「〇歳以上」という規定はありません。
法律上は12歳でも取締役になれるのですが。なるための運用として15歳以上しか取れない印鑑証明書を求めていて、同じ未成年でも年齢でフィルタにかけています。
それでは、15歳未満は100%会社設立後取締役になれないのでしょうか?
実は裏技というか「抜け道」があります。
会社設立をして、取締役など役員の登記する際には本人の印鑑証明書が必要となり、印鑑登録ができない15歳未満の人は、取締役にはなれないのが原則です。
しかし、会社に取締役会を設置する場合は、役員を登記する際に印鑑証明書は「代表取締役」のもののみでOKです。
したがって、15歳未満の未成年が代表取締役以外の取締役になる場合、印鑑証明書が不要なので、未成年(15歳未満)であっても取締役になり経営に参画し、必要な意思決定を行使することができます。
つまり、1人会社(代表取締役しかいない)会社設立は、15歳未満の未成年は厳しいのですが、取締役会が置かれる、複数の取締役がいる会社の役員ならなれるのです。
15歳未満の未成年1人で会社の経営について意思決定することはできませんが、複数役員、取締役がいるなら、会社設立後、経営を行うことができるかもしれません。
あくまで例外的な規定になるので注意してください。
やはり、15歳未満の未成年が会社設立して経営というのは、なかなか現実のシステムも予定していないということになるでしょう。
未成年が会社設立するメリットとデメリット
そもそも社会人経験がない(ことが多い)未成年が会社設立をするメリットはあるのでしょうか?
世間慣れしておらず、いろいろ未熟でデメリットしかないように思えますが、実際はどうなのか、未成年の会社設立についてメリット、デメリットをまとめてみました。
未成年が会社設立するメリット |
未成年が会社設立するデメリット |
未成年の若さを生かした事業内容 |
社会経験が乏しい |
社会的に注目される「未成年」という宣伝効果 |
学力、基本的な知識が不足している(特に15歳未満の未成年の場合) |
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信用力がない(取引先、銀行等) |
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資金力(預金、自己資金)がない |
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経営に失敗した場合将来へのダメージが大きい |
法的に親の庇護のもとにある未成年が、例外的に会社設立して事業の部分だけ、民法の規定で成人と同様のことができるようになったとしても、やはり経験不足はどうしようもありません。
学力的にも大卒社会人が起業、会社設立した場合に比べるとディスアドバンテージが多く、そもそも、未成年ということで社会的信用がありません。
「ガキが生意気なこと言ってそんなことできるか」
「おままごとじゃないんだよ」
こういう認識の人も多く、社会的世間的にも「尖がった奴」と思われるかもしれません。
それでもやりたいならば大いに進めるべきですが、失敗したときのリスクは今後の人生で背負っていくことになります。
未成年の経営者、「こども社長」としてうまくいくのは、メディアを巻き込んでいるケースが多く、社会的に注目されるよう周囲の大人がおぜん立てしてあげることも必要です。
本当の意味で「未成年が独力で会社設立」するのは、15歳以上、高校生になってからだと思われます。
会社設立には資本金が必要です。
1円会社の設立も可能になりましたが、実際にまともに事業を行うためには、100万円以上の資本金や会社設立の法定費用が必要です。
高校生になればバイトもできますが、これだけ貯めるのは至難の業で(中学生ならさらに厳しい)、親なり家族親族の資金的援助は不可欠でしょう。
未成年が自分だけで会社設立というのはなかなかハードルが高いことをご理解いただけたはずです。
未成年で会社設立した有名人を紹介
参考までに、未成年で会社設立した有名人を表にしました。
未成年という若さを武器に会社設立を成功させています。
名前 |
何歳で会社設立したか |
社名 |
事業内容 |
椎木里佳 |
15歳 |
株式会社AMF |
女子中高生向け向けサービスのマーケティング |
三上洋一郎 |
高校生 |
株式会社GNEX |
中高生向けクラウドファンディングサービス |
塙佳憲 |
高校生 |
株式会社飛脚堂 |
名刺デザイン業 |
大関綾 |
高校生 |
株式会社ノーブル・エイベックス |
ネックウェア、ループタイなどの製造販売 |
ハヤカワ五味 |
18歳 |
株式会社ウツワ |
ランジェリーショップ、ファッションウェアショップ |
吉田拓巳 |
15歳 |
株式会社7sense |
WEBデザイン。家入一真氏の出資による |
小幡和輝 |
19歳 |
合同会社和一なごみ |
学生と社会人の交流サービス。 |
さすがに中学生(15歳未満)で会社設立した人はこの中にはいません。
未成年でも15歳未満の会社設立およびその成功は難易度が高いのでしょう。
それでも未成年で会社設立したい場合・・会社設立プロフェッショナルの「経営サポートプラスアルファ」に相談を
ハードルがいくつもあり、「修羅の道」ともいえる未成年が会社設立することですが、それでもトライしてみたい場合、リスクを極小化することが不可欠です。
信用度アップのための方策や会社設立後の仕掛け、プロモーションなど、未成年の会社設立には戦略と戦術が不可欠です。
そのためには専門家の「軍師」が必要です。
軍師として、当社「経営サポートプラスアルファ」をぜひご利用いただければ幸甚です。
「経営サポートプラスアルファ」には会社設立についての専門家が揃っており、未成年の会社設立についても有効なアドバイスができます。
資金調達の方法や金融機関との付き合い方、顧客の開拓等総合的にコンサルティングいたしますので、未成年の志をかなえるためぜひ「経営サポートプラスアルファ」に協力させてください。
土日祝日なども対応しますし、遠隔地の方はLINEやZoomでも大丈夫です。
疑問点を解消して、未成年の方の志や思いを「会社設立」というカタチにできればと考えております。
せっかくの若い想像力やインスピレーションを無駄にするのはもったいないです。
それを実現するのは未成年の今かもしれません。
ぜひ会社設立について少しでも考えているならば「経営サポートプラスアルファ」にご相談ください。