日本の化粧品は海外観光客や海外からの通信販売で好評です。
化粧品はその品質に精微さと緻密さが求められます。
人の肌に直に触れる化粧品は、時に肌の健康を害することもあり、その品質や成分には細心の注意が求められます。
誰でも簡単に化粧品会社を起業できないのはそうした事情もあるからです。
逆に考えると、化粧品会社の企業はライバルが少なく、競争相手もいないため、飲食店などの起業と比較して「脅威」がない事業であり、チャンスでもあります。
今回は化粧品に関する事業を起業したい方向けに情報提供します。
敏感な人の肌に関係する事業の起業だけに責任も重大ですので、安易な気持ちではなく、人の美や健康に対して積極的に改善するという意志をもって起業してください。
起業する前に確認!「化粧品」とは何?
「化粧品とは何ですか?」と聞かれて「肌をきれいにするもの」という答えはNOです。
化粧品にかかわる事業を起業したいみなさんは、まず化粧品の法的定義を確認しておきましょう。
化粧品は「薬機法」((医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)によって以下のように規定されています。
「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌ぼうを変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。ただし、これらの使用目的のほかに、第一項第二号又は第三号に規定する用途に使用されることも併せて目的とされている物及び医薬部外品を除く。
薬機法抜粋
これが化粧品です。
薬機法では化粧品以外にも、医薬品や医薬部外品とは別に規定されています。
つまり、化粧品は何かを治療する薬ではないのです。起業の際は注意が必要です。
- ニキビを治す:医薬品
- ニキビを防止する:医薬部外品
- ニキビ跡のある肌をきれいに見せる:化粧品
こういうイメージです。
化粧品事業の起業は薬を製造販売するわけではないので注意してください。
薬を売るのは薬局であり、それを無許可無資格で販売したら大変なことになります。
化粧品事業を起業したい場合、どのような形態がある?
一言で「化粧品事業を起業する」と言っても、化粧品事業の内容、形態によって差があります。
化粧品の起業は以下のような形態があることをまず知ってください。
化粧品事業起業その1 国内他社製造の化粧品を仕入れて売る
国内の既存メーカーの化粧品を仕入れて「化粧品販売店」として起業、販売します。
自社オリジナル製品は含まず、どちらかというと、既存化粧品の魅力をアピールして、お客さんに使用してもらい、納得の上で買ってもらう営業活動が中心になります。
起業難易度としては低いです。
化粧品事業起業その2 海外メーカーの化粧品を仕入れて売る
国内メーカーの化粧品だけでは、なかなかプレミアムな価値は生まれにくいです。
当然欧米の有名メーカーの化粧品ニーズは高く、それを輸入して販売します。
輸入商社として起業します。
日本の化粧品と比べて高額であり、また使用法についても注意が必要です。
もともと香水などはヨーロッパ生まれであり、ブランド品以外にも種類は豊富です。
それぞれの海外化粧品の違いなどについて、起業した場合丁寧な説明ができるスキルが求められます。
化粧品事業起業その3 自社オリジナルブランド化粧品をOEMで製造して売る
上の2つは化粧品販売に力点を置いた起業でしたが、こちらは自社ブランドの開発、製造も含めて事業を行うために起業するパターンです。
化粧品製造は、必ずしも自社工場を所有する必要はなく、OEMの仕組みを利用して、実績のある化粧品メーカーに自社ブランドの開発、製造、生産をお願いするパターンです。
起業しても自社工場で生産はしません。
OEMとは「他社ブランドの製品を製造すること」「納入先(委託者)商標による受託製造」を指します。
実績と開発力があるメーカーに自社ブランドの化粧品製造を委託し、委託メーカーが製造した化粧品に自社のラベルを貼って、起業した自社化粧品として販売します。
この場合
- 納入先(委託者):化粧品起業をする側
- 受託側:実績のある化粧品製造ができるメーカー(起業側が製造を頼む)
になります。
起業の際、工場を建て、機械や原材料を購入する手間も省けます。
また、OEM受託メーカーの中には、企画も一緒に行い、化粧品製造のコンサルティング的なことを行ってくれる会社もあり、初めての起業の場合、失敗リスクを減らせるメリットもあります。
スーパーやコンビニのプライベートブランド(安いオリジナルのお菓子やレトルト食品など)は、有名メーカーに製造を委託したOEM商品です。
実際は誰でも知っているメーカーの製造ラインを使った商品ですが、そのメーカーのものとは意識せず食べているはずです。
(例えばコンビニのスナック菓子はカルビーや東鳩、湖池屋といった有名企業がOEM受託者として製造していますが、その会社のお菓子を食べるという意識はなく、〇〇コンビニのお菓子という意識のはずです)。
化粧品事業起業その4 自社オリジナルブランド化粧品を自社工場で製造し売る
本来の化粧品起業のイメージを具現化したものです。
自分で企画し、自分で工場を作り、自分で化粧品の製造法を考え、自分で化粧品の材料を購入し、自分で製造し、自分で梱包し、自分で流通に乗せ(自社の店舗だけなら不要)、自分の化粧品店で販売する、起業のすべてです。
「起業フルコース」になりますが、越えなければならないハードルも多く、売れなかった場合の失敗リスクもあります。
また、化粧品への異物混入や健康被害があった場合、会社は大変なことになります。
自分の思うような化粧品製造販売の起業ができますが、リスクも大きく大きな賭けになります。
起業する化粧品事業の形態ごとの許認可をチェック
化粧品は人の肌に触れる商品であり、化学反応如何では人の肌を傷つけてしまうため、誰にでも起業できる分野ではなく許可が必要です。
医薬品のように命にかかわるケースはまれですがゼロではありません。
化粧品事業の起業には形態ごとに許認可が必要になります。
化粧品事業起業その1 国内他社製造の化粧品を仕入れて売る場合の許可
国内メーカーの化粧品を仕入れて売るだけであれば、通常の小売店と変わりません。
特別な許可がいらない単なる小売業です。
化粧品は食品でもないので、食中毒などのリスクも低いです。
化粧品事業起業その2 海外メーカーの化粧品を仕入れて売る場合の許可
海外化粧品の場合は、国内メーカーのものとは少々異なります。
「化粧品製品販売業許可」を持っている問屋や輸入販売会社から仕入れれば許可は不要ですが、自分で直接輸入して販売する場合は許可が必要となります。
その許可とは「化粧品製造販売業許可」です。
「化粧品製造販売業許可」を申請する際には、
- 薬剤師の資格のある方
- 高校、高専、大学で薬学又は化学の専門課程を修了した方
のいずれかが、「総括製造販売責任者」になることが必要です。
「総括製造販売責任者」にも「安全管理責任者」と「品質保証責任者」の設置も必要となりますが兼務も可能です。
そのほか「外国製造業者届出」「輸入届出」も必要になります。
なお、「海外で販売されている化粧品を輸入して自社で保管・販売する」場合は「化粧品製造販売業許可」」に加えて「化粧品製造業許可」も必要になります。
保管行為は製造にあたるのです(確かに保管=寝かせることで品質が変化するかもしれません。お酒やみそ、しょうゆのように)。
化粧品事業起業その3 自社オリジナルブランド化粧品をOEMで製造して売る場合の許可
他社が製造するので、「1」のケースと同じでよいかと思いますが違います。
OEMで化粧品を製造販売する場合、「化粧品製造販売業許可」が必要となります。
要件は「2」のOEMのケースと同様です。
他社が製造したものとはいえ、その品質については、起業した側が責任を負うことになるため、単なる小売りとは違い、「化粧品製造販売業許可」が必要になるのです。
化粧品事業起業その4 自社オリジナルブランド化粧品を自社工場で製造し売る場合の許可
自社で製造まで行う場合は「化粧品製造業許可」と「化粧品製造販売業許可」の両方が必要になります。
「化粧品製造販売業許可」の要件は「その2」「その3」と同じです。
「化粧品製造業許可」は実際に化粧品製造に携わるので、審査もより厳格に行います。
「責任技術者」の設置が必要で、責任技術者になれるのは、次のいずれかを満たす方です。
- 薬剤師の資格のある方
- 高校、高専、大学等で、薬学又は化学の専門課程を修了した方
さらに5年ごとの更新や実地調査も必要となります。
化粧品事業起業に必要な許可まとめ
以上、化粧品事業起業を目指す場合、必要な許可についてまとめました。
化粧品事業起業の方法 | 化粧品事業起業に必要な許可 |
日本メーカーの化粧品販売のみ(小売店として起業) | なし(通常の小売り) |
外国メーカーの化粧品を輸入販売(輸入商社として起業) | 化粧品製造販売業許可外国製造業者届出輸入届出(「保管」もする場合さらに化粧品製造業許可 |
OEMで自社化粧品を製造販売 | 化粧品製造販売業許可 |
自社工場を作りそこで化粧品を製造販売 | 化粧品製造業許可化粧品製造販売業許可 |
化粧品事業を起業する際の注意点は何?
化粧品事業を起業する場合、他の業種以上に注意すべき点があります。
これが難しいようならば化粧品事業起業ではなく、別の業種の起業を考えるべきです。
薬機法の規定を守って販売する
化粧品は人の肌に触れるものであり、その成分管理、品質チェックに細心の注意が必要なため薬機法で規定されていますが、「薬」ではないことに注意してください。
薬機法の規定を守った化粧品のアピールをしてください。
化粧品は、「人の体を清潔にして美化し」「魅力を増し容貌を変える」「皮膚や毛髪をすこやかに保つ」です。
医薬品、医薬部外品のように疾病を「治療」「予防」するものではなく、広告宣伝の際にはその表現に注意しないと、薬機法違反で摘発されます。
効果、効能を示すキャッチコピーはNGです。
「ニキビが治るクリーム」
「肌荒れを予防します」
「夏場にシミができないようにします」
これらの表現はNGです。
ニキビを治すのはアクネ菌を殺す抗生物質であり、当然薬です。
医師の診察、処方が必要なものも多いくらいです。
こうした表現をする化粧品は薬機法違反で、起業してもすぐに摘発されてしまいます。
小規模な起業からスタートする
化粧品は人の肌という繊細な部分に対応する商品であり、起業し、いきなり大量製造、販売して、化粧品に問題があった場合のリスクが大きくなります。
まず、少量、小ロットからはじめて、使用者の反応や口コミをチェックしてください。
化粧品は人から人への評判で広がります。
まず、いい商品を評価してくれる人に使用してもらいましょう。
起業の際は小規模からのスタートが望ましいです。
起業当初は大量の在庫を抱えない
外国製化粧品の「保管」が「化粧品製造業」に該当することからわかるように、化粧品は繊細で、日時が経過するとその成分や効能が大きく変わります。
長期間保管すると、発酵などで成分が変わり別の商品を「製造」してしまいます。
お茶の葉でも、発酵具合で「緑茶」(発酵なし)→「ウーロン茶」(発酵中)→「紅茶」(発酵大)と変わるのと同様、化粧品も同じようなイメージです。
化粧品には使用期限がある製品も多く、起業後すぐに、大量に製造、保管してしまうと、期限が過ぎて、破棄するしかなくなります。
期限切れを安く売ることは薬機法でできません。捨てるしかなくなります。
起業後、事業拡大したいのはやまやまですが、大量在庫を抱えないのが起業当初は求められます。
化粧品事業の起業にはノウハウが必要!豊富な経験を持つ「経営サポートプラスアルファ」に聞いてみよう!
化粧品は薬機法で規制される、非常に繊細でナイーブな商品です。
容器の体積を取らず、高額で売れるので、倉庫代なども節約できますが、その管理には慎重さと法的な許可が必要であり、安易に起業すると困ったことになります。
化粧品事業の起業にあたっては、専門家の知識も不可欠であり、許可申請なども必要です。
「経営サポートプラスアルファ」では、化粧品事業の起業に際しい専門家をそろえています。
また、化粧品製造業許可、化粧品製造販売業許可の申請について有資格者による代行も可能です。
細かい手続き面は「経営サポートプラスアルファ」に任せていただき、みなさんは優れた化粧品開発に注力していただいて構いません。
ぜひ化粧品事業の起業についてご相談ください。
土日祝日、夜間も対応します。
また、遠隔地の方は、LINEやZoomを利用しての相談も可能です。
化粧品事業の起業は許可事業になるので先手先手で動くことが大切です。
ぜひ「経営サポートプラスアルファ」にご相談ください。