資本金を水増しする見せ金は合法なのか?合法なら、会社設立当初の資本金を多めに見せたい。
このような考えをお持ちの方もおられるのではないでしょうか。
資本金は会社の規模や信用度を表す重要な項目です。
できることなら資本金は少しでも多く確保して、創業時からいいスタートを切りたいですよね。
見せ金という方法を思いつく方もおられるかと思いますが、見せ金はメリットよりもデメリットのほうが多いので、やめておきましょう。
この記事では、資本金の見せ金について詳しく解説しています。
資本金の金額についてご検討の方は、ぜひ内容をご確認ください。
会社設立時の資本金見せ金とは?
どのような手法で資本金の見せ金を行うのか、具体的な方法について見ていきましょう。
設立時だけ資本金を用立てる行為
見せ金は資本金を誰かから一時的に借り入れし、会社設立後にすぐ同額を返済するという方法で資本金を多く見せます。
見せ金の方法を使えば、実際に持っている自己資金の何倍もの資本金を持っているように見せかけることができます。
見せ金は法律に反する行為
見せ金は実際にはないお金をあるように見せかけることで、債権者を騙す行為となり、やってはいけない違法行為とされています。
例えば、日本政策金融公庫などで創業時に融資を受ける場合、資本金の金額を自己資金と見て融資額を決定します。
したがって、見せ金で融資を得ると詐欺行為にあたるのです。
見せ金の資金の流れにより、決算書の印象が悪くなり金融機関からの評価が下がることで融資が受けにくくなるデメリットもあります。
資本金見せ金によるデメリット
資本金の見せ金を行い融資を受けると詐欺罪が成立することがわかりました。
その他に考えられるリスクを解説します。
虚偽の申告による罰則を受ける
見せ金による資本金の水増しは、会社法では罰則の取り決めはありませんが、嘘の情報で会社登記を行った場合は罰則が伴います。
具体的には、公正証書原本不実記載等罪に問われる可能性があり、5年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることがあります。
仮に罰則を受けなかったとしても、見せ金をしていると取引先や関係者からの信用が一気に落ちてしまいます。
信用力低下により融資が受けられない
前述のとおり、日本政策金融公庫やその他の金融機関で融資を受ける場合、自己資金の金額を見るために発起人の通帳を確認します。
その際に見せ金を行っていればすぐに分かりますので、金融機関からの信用が失墜し、融資を受けられなくなります。
見せかけで信用力を上げて、融資を受けようとしても意味がないのです。
見せ金への課税
見せ金を行った場合、役員貸付金という名目で出資した代表者等にお金を貸すという会計処理を行います。
見せ金なので、会社から代表へ貸したお金は提供元へ返済されます。
ここで、見せ金として借りたお金は、返済されますが会社から代表へお金を貸した状態と見られます。
これにより、会社設立直後に代表者へ大きな金額のお金を貸し付けていることとなり、会社自体の信用が大きく損なわれます。
役員貸付金として会計処理された金額は、そのまま返済されずにいると会社から役員へ報酬を支払ったとみなされ、代表者には所得税が課されます。
見せ金を行うと信用の毀損から、課税の問題にまで発展します。
会社の設立が取り消しに
会社法には見せ金に関する罰則はありませんが、裁判の判例では見せ金によって会社設立自体を無効とする判決が出されています。
会社に自己資本があるように見せかけて出資を受けた分は無効とされ、無効の資金を差し引くと会社法で定められた財産に満たない結果となり、設立自体が無効となってしまいました。
場合によっては、会社の設立自体が取り消しとなってしまう場合もあり得るのです。
資本金見せ金の判断基準
金融機関から見せ金と判断される基準は以下の通りです。
一時的な入金
一時的な入金があると、チェック対象となります。
給料のように毎月定期的に、おおよそ同じ金額の入金がある場合は自然で問題がありませんが、一時的にまとまった金額が入金されていると、審査対策の可能性ありと見られてしまいます。
合理的な説明ができる入金であれば問題ありません。
不定期な入金の説明がつくか
一時的なまとまった入金の合理的な説明ができるか?という点が、見せ金を判断する大事なポイントです。
親からの贈与を受けていて確定申告も済んでいるなど、整合性のある理由が求められます。
資本金見せ金と判断されない資金
以下の調達方法や対応をを行えば資本金の見せ金という判定は下されません。
資金調達の方法は以下の通りです、
株や債券、不動産の売却益
自分で所有している株や不動産、債券などを売却し、資本金に充てることは正当な資金調達方法であり見せ金にはなりません。
自己資産を売却した場合、証拠の書類がありますので指摘を受けたとしても書類を提出すれば良いのです。
売却のタイミング次第では、売却益に差が出ますでの不確実性に注意しましょう。
タンス預金の入金
地道に貯金箱に貯めてきたお金を自己資金として、資本金にしたいと考える方もいらっしゃると思います。
実際に、500円玉貯金を資本金に組み込んで開業した方もいますので、タンス預金を資本金に組み込むことは可能です。
資本金に組み入れることに問題はありませんが、タンス預金はお金の出所を証明するのが難しいので一括入金を避けたほうが良いでしょう。
月1回程度の入金を行い、通帳に記帳されることで、タンス預金としての妥当性を説明できます。
一時的な入金には証明資料を添える
金融機関の融資担当者から高額な入金の理由を聞かれた時に、宝くじの当選金や親からの支援金ですと説明しても説得力に欠けます。
一時的な入金であることを証明するには、証拠となる資料が必要です。
見た目不自然な入金であっても、裏付ける資料や書類があれば問題ありません。
会社設立時に有効な資金調達方法
見せ金を使っても融資を受けることはできず、バレてしまうことがわかりました。
以下、見せ金とならない資本金の正当な調達方法について、詳細を解説します。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は100%、政府が出資している金融機関で、日本政策金融公庫からの融資は創業時の資金調達方法としては最も基本的な方法です。
政府系の金融機関で、経済振興の目的を持っていますので低金利で融資を受けることができるのです。
日本政策金融公庫には、国民生活事業、中小企業事業、農林水産事業の3つがあります。
創業者向けの融資は国民生活事業の扱いとなります。
融資は条件次第ですが、上限金額が高く設定されている点がポイントです。
会社設立時に活用できる融資は以下の3つです。
新規開業資金
新規開業資金は多くの創業者が該当する融資制度で、対象は新規開業もしくは開業後7年以内の方です。
融資の限度額は最大で7,200万円(運転資金は4,800万円以内)となります。
返済期間は運転資金の場合7年間、設備資金の場合は20年以内、となっています。
創業時の借入先としては、とても心強い金融機関となるでしょう。
女性、若者、シニア起業家支援金
対象は、女性、35歳未満の若者、55歳以上のシニアで新規開業もしくは開業7年以内の方です。
融資限度額は最大7,200万円、(運転資金は4,800万円)です。
返済期間は、運転資金の場合は7年、設備資金の場合は20年です。
中小企業経営力強化資金
こちらの融資を申し込むためには、以下の2つの条件を満たす必要があります。
中小企業経営強化資金の申込みを行う場合、以下の2つの条件をクリアしなければいけません。
市場の創出
経営革新または異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓等による市場の創出・開拓を行うこと(新規事業を行う場合を含む)。
認定支援機関の指導
自ら事業計画の策定を行い、認定を受けた税理士、金融機関などの認定経営革新等支援機関、いわゆる認定支援機関による指導および助言を受けること。
中小企業経営強化資金の融資限度額は7,200万円(運転資金は4,800万円以内)、返済期間は、運転資金の場合で7年以内、設備資金の場合は20年以内です。
まとめ 見せ金に頼らず真っ当な資金調達を
資本金の見せ金は、信用失墜や詐欺罪に問われたり、会社の設立そのものが無効となるなど多くのデメリットが考えられ、メリットはありません。
金融機関で融資を受ける時にほとんどがバレてしまいますので、見せ金を行うと実質融資をうけられない、といっても過言ではないでしょう。
創業時の資金調達は日本政策金融公庫から融資をうけましょう。
低金利で、融資の上限も高いため、創業時の心強い味方です。
経営サポートプラスアルファでは、創業時の資金調達について積み重ねてきたノウハウにより適切なアドバイスを差し上げています。
資本金や資金調達についてお悩みの方はぜひ、ご相談ください。