会社を新規に設立し創業したいという場合、まず考えるのが株式会社です。
一番ポピュラーな会社が「株式会社」であり、会社法ではそのほかにも「合同会社」などがありますが、対外的な信用度などを考えて、なじみのある、認知度の高い株式会社を設立したいという人が多いはずです。
今回は、他の種類の会社の設立(主に合同会社)との比較も交えながら、株式会社の設立、設立までの期間、設立にかかる費用などについて考えていきます。
会社設立には意外にお金や手間がかかることを知っていただき、事前にしっかりとした準備が必要なことをこの記事から学んでいただければと存じます。
それでは株式会社について多角的に見ていきましょう。
株式会社と合同会社の設立期間の違い
2006年の新「会社法」によってこれまであった「有限会社」の新規設立ができなくなり、その代わりに「合同会社」という形態の会社が設立できるようになりました。
株式会社の設立は引き続き新会社法の下でもできますが、この「合同会社」と株式会社ではどのような違いがあるのでしょうか?いくつかの見地から解説していきます。
株式会社の設立の標準的な期間
株式会社の標準的な設立までの期間は、いろいろ動き始めてから「約3週間」くらいです。
3週間、意外に長いですね。数日というわけにはいかないのでしょうか?
それは、会社設立までにいくつかのステップを踏む必要があるからです。
そのステップについて順を追ってみていくことにしましょう。
法人の名称(商号)を決める
まず、株式会社設立のためには「商号」(会社名)を決める必要があります。
「株式会社○○クリエーション」「△△デザイン株式会社」などの会社名(商号)です。
「株式会社」は商号の前(前株「株式会社」~)でも後(後株「~株式会社」)でも構いません。
せっかく名前を付けるのですから、将来にわたってお客様に愛されるような個性的なもので、かつ他社と名称が被らないものを付けた方がいいでしょう。
事業目的の策定
その会社でどのような事業を行うのか、事業内容を決めます。
これは定款に記載する重要なものです。創業時から行わない事業についても書いていただいて構いません。
例えば開業当初は不動産仲介業を行いますが、将来的には不動産を購入した人に保険などを販売したい場合は、「保険業」なども事業目的にしましょう。(もちろん、それぞれの資格は必要になります)
本店所在地の決定
株式会社の本店住所をどこに置くのか決めます。
実際に物件を購入したり、賃借したりしなくても自宅や家族の物件を本店とすることもできます。
事業が回りはじめ、新しく事務所を設置できるくらい稼げれば、その時、後日、そちらに移転登記をすればOKです。
暫定的でもよいので本店所在地を決めます。
資本金額を決める
会社にとって非常に重要な資本金額を決めます。
2006年の会社法の改正で、資本金の額は1円でもよくなり「1円会社」が生まれました。
1円資本でできる企業は少ないのですが、要は成立にあたって資本金を数百万円用意できなくても、株式会社が設立できるようになったということです。
その後、増資して資本金額を増やすことはできます。
出資者(株主)を募る
株式会社はご存知のように株式を発行して資金を調達します。
1円会社などでは問題になりませんが、資本金数百万円以上の場合、お金を出資する方もリスクがあります。
誰に出資してもらうのか、根回しも含めてしっかり決めてください。
役員の人数と構成
会社の経営を担う役員を選任します。
設立する代表者1名(代表取締役になる)だけでも問題ありませんが、規模が大きな会社を設立したい場合、平の取締役を選任した方が経営は安定します。
複数の役員を選任する場合、彼らの同意を事前に得ておくようにしてください。
役員は会社と「運命共同体」になります。
本当に信頼できる人、家族、親族などにした方がリスクは低いですが、経営センスがある第三者を選任するのもありです。
定款を作成する
会社の「憲法」と言われる定款を作成します。
おそらくこれに多くの時間を費やすことになるはずです。
定款の内容についてはここでは省きますが、「絶対的記載事項」と呼ばれる必須事項については必ず定款に盛り込んでください。
絶対的記載事項は以下の項目となります。
- 商号(会社名)
- 目的(事業の目的)
- 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額(資本金の金額)
- 本店所在地
- 発起人の氏名及び住所
- 発行可能株式総数
定款にこれらの記載がないと、不備であり、法務局に会社設立の登記申請をしても受理されません。
法務局、あるいは公証役場で不備があれば指摘されるはずですが、事前によくチェックしておいてください。
定款の認証
株式会社の成立で、時間がかかる重要ポイントです。
作成した定款は、会社設立届に添付する前に、公証役場で認証されることが必要になります。
公証役場で定款の認証を受ける場合、定款原本以外にも、手数料納付のための収入印紙や発起人の印鑑証明と実印、本人確認書類などが必要になります。
定款の認証自体は、書類にミスがなければ30分~1時間程度で終了しますが、必要書類を準備するのが結構大変です。
実際に公証役場に定款を持ち込まなくても「電子認証」というオンラインで定款認証が完結する方法があります。
こちらの方が費用は安く済むのですが、公証役場で紙ベースの定款認証を行うよりも、さらに数日かかることがあり、急いでいる場合はあまりおすすめできません。
様々なことを考えると、事前にしっかり定款関連は準備しておきましょう。
資本金の振込
定款が認証後、発起人個人名義の銀行口座に資本金の振り込みを行います。
1円会社の場合は「1円」としっかり印字されるように1円を振り込みます。
銀行口座に確かに資本金が払い込まれた「払込証明書」を作成します。
通帳のコピーに指定の様式を組みあわせ綴じます。
法務局で株式会社設立登記を行う
定款、払込証明書など必要書類が揃ったら、いよいよ法務局へ行き、株式会社設立の登記申請を行います。
この受理をもって株式会社の設立となります。
準備をしっかりしておけば1週間以内の期間で株式会社設立をすることは可能ですが、特に定款回りのステップについて時間がかかるため、瑕疵のないようしっかり取り組んでください。
合同会社の設立の標準的な期間
合同会社の場合、成立までの期間約2週間程度と言われていて、株式会社設立よりも設立期間は短くなっています。。
基本的な合同会社の会社設立までのスケジュールは
- 絶対的記載事項、重要事項の策定(商号、目的、資本金、取締役、発起人、本店所在地)
- 定款の作成
- 資本金の振込
- 法務局で設立の登記申請
とあまり変わりません。
変わるのは、定款認証の手続きが不要であることです。
株式会社の場合、会社の定款を公証役場、ないし電子認証にて認証される必要がありますが、合同会社の場合、定款認証義務がなく、そのステップを省略できるため、設立までの期間が短くなります。
もちろん、定款そのものについては合同会社の場合も作成義務があり、設立の際には定款をつけて法務局に提出します。
その前段階の認証がないので、法務局段階で不備や瑕疵を指摘されるリスクがあり、差し戻されると再作成まで時間がかかってしまうかもしれません。
株式会社設立にかかる費用
株式会社設立手続きにかかる費用は以下になります。
これは、公証役場での定款認証や登記の際の印紙代など、事務手続き上必要な費用になります。
個人事業主の場合、印鑑は普段使っているものでも構いませんが、会社設立の場合、会社の社判(実印)を新規に作成することになります。
定款印紙代 40,000円(公証役場で紙の手続きの場合)
0円(電子認証の場合は定款に貼る印紙代は無料)
登録免許税 150,000円
定款謄本代 2,000円
会社の実印等 約20,000円
資本金 1円以上
合計 約260,000円+資本金
株式会社設立にかかる法定費用
上記の費用のうち「法定費用」、つまり法で定められていて、行政機関に支払わなければならない費用は以下になります。
紙での認証 | 電子定款認証 | |
定款認証代 | 50,000円 | 50,000円 |
定款印紙代 | 40,000円 | 0円 |
登録免許税 | 150,000円 | 150,000円 |
定款謄本代 | 2,000円 | 2,000円 |
電子定款の場合、定款認証の際に定款に貼付する印紙代40,000円がかかりません。
電子認証はソフトのインストールなど手続き的に難しいこともありますが、40,000円を削減できるのは会社設立にあたっては大きいですね。
株式会社設立にかかるその他の費用
株式会社設立の際には、法定手数料以外にも費用が発生します。
- 新しく設立する会社の実印作成代 20,000円程度
- 設立時に必要な個人の印鑑証明取得費 約300円×必要枚数
- 新しい会社の登記簿謄本の発行費(印刷費) 約500円×必要枚数
これで約25,000円。もし個人(発起人)の実印登録をしていない場合、さらに個人の実印作成費がかかります。
印鑑登録は自治体にて行いますが、その費用は掛かりません。
そして、最後に資本金がこれに加わります。
ご存知のように資本金は1円以上ですが、実際には「1円会社」は少なく、100万円~300円を設立時の資本金とする会社が多いのが現実です。
とにかく期間を短く株式会社を設立したいなら
株式会社はオーソドックスな会社設立のステップを踏みますが、定款の認証過程が難しく、時間がかかってしまいます。
しかし、新しい会社形態である合同会社と比較し、社会的な信用度も高く、費用面や設立までの期間に問題がなければ、株式会社のほうがメリットが大きいでしょう。
とはいえ、自分一人で設立まで行おうとすると、手続きに瑕疵が見つかるなどして、実際の法人登記に手間取ってしまう可能性があります。
そうしたリスクを避ける意味では、専門家のアドバイスや会社設立代行サービスを利用するのも1つの方法です。
経営サポートプラスアルファでは、経験豊富な専門家が株式会社の設立をサポート、場合によっては代行までいたします。
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