法人登記にあたって、会社所在地の表記は必須事項です。
オフィスの住所以外にも、自宅やバーチャルオフィスを会社所在地に設定できますが、法人登記の住所の設定にはルールやマナーがあります。
設定住所によって、それぞれのメリット・デメリットがあり、一長一短です。
この記事では、法人登記の住所について詳しく解説しています。
会社設立時の住所についてお悩みの方は、ぜひ内容をご確認ください。
法人登記に会社の住所は必須
定款には会社の所在地を必ず記載しなければならず、会社所在地は必ず設定しなければいけません。
法人登記の会社住所は個人の住所と同じ
近代日本では戸籍性が導入され、個人の名前や住所は役所にて管理、把握されてきました。
戸籍が存在するおかげで、家族構成が証明でき、行政からの援助や教育が滞りなく受けられるのです。
会社の住所も同じく、新しく会社を設立する場合は誰が見てもわかるように、法務局で会社情報を登記し管理しています。
会社のルールを関係者で共有できるように、定款を作成し承認を受ける必要があります。
法人の住所設定は、さまざまな施策の恩恵を受けたり、公に会社の存在を明らかにする際に欠かせない項目なのです。
法人登記の会社住所は番地まで
法務局で会社登記を行う場合郵便物が確実に届くように、本店所在地の住所は番地の末尾やマンション名、部屋番号まで記載しなければいけません。
定款の場合、末尾まで書かなくても承認されますが、法務局への登記は最後まで記載が必要な点に注意が必要です。
法人登記の住所の重要性
法人登記の際の住所記載は、会社を運営していくにあたってとても重要なものです。
その理由を以下に、解説します。
会社の信用力に直結する
業種にもよりますが、会社の所在地は信用度を見るためのものさしとされています。
東京都内でいえば、老舗の金融機関は大手町周辺、IT企業は渋谷や六本木、アパレル関連は表参道など、ブランディングとともに信用力アップを狙い、オフィスを構えている企業が多く見られます。
あえて地価の高いエリアへオフィスを構えることで、安定した経営基盤をアピールできるのです。
変更しても履歴は残る
登記簿謄本は、古い情報は抹消事項として下線がついていますが、下線がついていても内容の確認はできます。
法人番号公表サイトでも履歴を確認できるのです。
したがって、過去は抹消できませんので、あとから変更するからといって、公にしにくいような住所を会社登記に使うのはやめましょう。
訝しげな住所の一例として、業種と全く関係のない繁華街の住所や、郊外の山の中の住所などです。
バーチャルオフィスを使う時に、おかしな住所で登記しないように気をつけましょう。
法人登記の会社住所のルール
法人登記の住所を設定するには、いくつかのルールがあります。
3つの重要なポイントをピックアップしました。
自宅兼事務所について
商業登記簿法という法律では、会社設立時の本店所在地について、特別な制限は設けられていません。
したがって、法人登記の住所は、自宅や知人のオフィス、住んでいる賃貸マンション、倉庫など、どこの住所でも申請できます。
賃貸契約中の賃貸物件では、登記できないケースがありますので、注意が必要です。
「マンション標準規約」内では自宅兼事務所は問題ない
国土交通省では公式サイトにてマンション標準管理規約を公開し、規約の標準的な内容を公に共有しています。
この中で、マンションを住宅として利用するには、以下の2つの条件が必要とされています。
- 居住者の生活の本拠がある
- 生活の本拠であるために必要な平穏さを有すること
この要項に従えば、基本の住居スペースを確保し、平穏さを維持できれば事業所として使うことに問題はありません。
自宅マンションを拠点とすることで、騒音や何かの迷惑行為となってしまう場合は、近隣住民とのトラブルにより契約解除を言い渡される可能性があります。
集合住宅を事務所として使う場合は、周辺住民の方への配慮が必要です。
国土交通省:マンション標準管理規約(単棟型)
賃貸住宅の契約書に居住用と書かれている
国土交通省が公表しているマンション標準規約はテンプレートで、賃貸物件それぞれのルールが存在します。
大家さんが独自のルールを決めている場合、それに従わなければいけません。
契約書に居住用と書かれているのに別の使い方をしていると、契約違反と指摘される可能性があります。
事業用不可と書かれていれば確実に登記不可です。
賃貸物件を住宅用として借りる場合、消費税はかかりませんが、事業用として借りる場合、消費税がかかります。
課税でも扱いが異なりますので、自宅で事業を行う場合正しい登記が必要です。
株主名簿や株主総会議事録を本店に据え置く
株式会社を設立した場合、本店所在地は株主が株主名簿の閲覧請求ができる場所になります。
取引相手が請求書を郵送する宛先ともなり得ます。
したがって、本店所在地は実際に事業の一部を行っている場所であることが望ましいです。
所在地変更は手数料3万円
登記している住所を変更する場合、法務局であらたに登記の変更手続きを行います。
その際、手数料として登録免許税3万円を支払います。
何も考えずに法人登記の住所を設定するとあとで、余計なお金と手間がかかる可能性がありますので、変更は最小限に収まるように心がけておきましょう。
法人登記ができる住所
法人登記ができる住所ごとに特徴を解説していきます。
賃貸オフィス登記
実際にオフィスを借りて、事務所として運用します。
会社運営において最も一般的な住所設定で、特別な理由がない限り事務所を借りて会社を運営したほうが無難です。
設立後、会社の規模に合わせて事業を拡大しやすく取引先からの信用を得やすいメリットがあります。オフィスを借りるには、契約に際して審査を通過しなければいけません。
この点でも、取引先から信用を得ることができるのです。
また、人の雇用や来客対応にも賃貸オフィスは適しています。
デメリットは費用がかかることです。
初期費用の項目は以下の通りです。
- 敷金
- 保証金
- 礼金
- 仲介手数料
- 保証委託料
賃貸オフィスは住居用の賃貸と異なり、ある程度の自己資金や信用力がないと貸してもらえません。
初期費用もそれなりにかかります。
開業間もない時期のオフィスを借りる費用は、思いの外デメリットとなるでしょう。
レンタルオフィス登記
レンタルオフィスは一時的な仮のオフィスという意味合いが強く、専有面積は少し狭いですが、一通りの事務用品が揃っていますので、入居後すぐに事業をスタートできます。
保証金は安く初期費用を抑えられ、郵便物対応もできるので、ビジネスのスタートには最適です。
レンタルオフィスとはいえ、住所は都会の立派な場所が多いので信用を毀損することもありません。
中には法人登記対応していないレンタルオフィスもあり、人の雇用も難しいため、事業が軌道に乗り始めたら賃貸オフィスに移行したほうが良いでしょう。
自宅登記
自宅兼事務所のメリットは費用を大きく抑えることができる点です。
賃貸オフィスやレンタルオフィスを借りる費用がいらないことや、家賃を経費にできるので節税の面でも効果があります。
家賃を経費計上するには、家賃按分という計算方法を使って計算します。
税務署には、計算の根拠となるものも合わせて提出しなければいけません。
デメリットは会社と自宅が混在しているため、取引先からの信用を得にくく、来訪者の対応が難しい点です。
住宅ローンを組んでいる場合、住宅の按分次第では控除の対象から外れる可能性があります。
大きな事業展開には適していませんので、事業拡大を考える場合、早めにオフィスを借りたほうが良いでしょう。
法人登記と賃貸契約、どちらが先か
法人登記を計画する場合、先にオフィスを契約したほうがいいのか、法人としてオフィスを契約したほうがいいのか悩みどころです。
それぞれのケースをみていきましょう。
個人契約→法人登記→法人契約
最初に個人としてオフィスを契約し、法人登記が終わってから法人として契約し直します。
この方法は、連帯保証人が2人必要となります。
個人宅を法人登記→法人契約でオフィスを借りる→本店の登記変更する
代表者が個人として連帯保証人になれるメリットがあります。
すでに法人格が出来上がっているため、他の人に連帯保証人になって貰う必要がなく、結果的に登記と賃貸契約を一人で完結できます。
オフィスやレンタルオフィスを借りる場合は、この流れのほうが良いでしょう。
まとめ 法人登記の住所は信用力を表す重要なもの
法人登記の際に設定する住所は、信用力を表し今後、事業を拡大するにあたっても重要な要素です。
住所の設定に制限はありませんが、事業拡大を目指す場合は早めにオフィスを借りる事を目指すべきでしょう。
自宅券事務所は費用を抑えたり、家賃を経費にできるメリットがありますが、事業を展開するにあたっては適していません。
経営サポートプラスアルファでは、法人登記の際の住所の設定から、設立時に発生するさまざまな問題の相談に応じています。
設立時のお悩みはぜひ、経営サポートプラスアルファへご相談ください。