多くの準備をしてようやくこぎつけた法人化ですが、うまく軌道に乗らないこともあります。
3年で3割廃業すると言われている飲食店を筆頭に、法人化しても10年後残っている会社はそこまで多くありません。
法人化をして後悔してしまう場合もあります。
リーマンショック級の不況や自然災害、新型コロナウィルスなどの疫病など、事業計画の段階では到底予想しえないリスク要因によって、法人化が失敗し、事業の継続ができず、後悔してしまうこともままあります。
後悔しないためにはどのようにすればよいのか、リスクヘッジの方法や、後悔しないための心構えなどについてここでは解説していきます。
法人の1年生存率、3年生存率、5年生存率は?
日本における法人の生存率、つまりどのくらい法人設立から生き残るのか、公的資料をもとにみてみましょう。
グラフは、『中小企業のライフサイクル|中小企業のライフサイクル 平成29年版』という中小企業庁発行資料に基づきます。
創業時 | 1年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 | |
生存率 | 100.0% | 95.3% | 91.5% | 88.1% | 84.8% | 81.7% |
『中小企業のライフサイクル|中小企業のライフサイクル 平成29年版』
言われるほど悪くないと思われるかもしれません。
5年で退場を余儀なくされる企業は5分の1、20%ほどになります。
(なお、紹介するメディアによっては、生存率がさらに低く、5年で50%と指摘するものもありますが、当方ではこのデータを用いります)。
この数値は、個人事業主の開業と、法人設立を双方含んだものであり、法人だけに限定すると、もう少し生存率(企業存続率)は高くなります。
3年で3割というのはあくまで特定の業種であり、法人全般を俯瞰するとそこまでではないことがわかります。
しかし、それでも5年で2割近い会社が退場を余儀なくされる世界であり、一度法人化をしてしまうとそれを畳むのも大変です。
個人事業主であれば、税務署に廃業届を提出するだけで事業を畳むことができますが、法人の場合は、
- 営業終了日の決定
- 株主総会にて廃業について3分の2以上の承認を得る
- 解散決議から2週間以内に解散登記を法務局で行う
- 解散決議から2週間以内に清算人選任登記を法務局で行う
- 清算人が財産目録・貸借対照表を作成し廃業について承認をもらう
- 廃業・解散の届け出
- 官報にて解散公告を行う
- 清算人による清算の実施
これだけのことをしなければなりません。
設立の際の定款作成や登記も大変でしたが、廃業もそれに負けず劣らず大変そうです。
しかも、設立時は前向きなエネルギーの中で作業できますが、廃業の際は後ろ向き、ネガティブな感情の中で行いますので、余計きついです。
正直、手続きなど投げ出してしまいたくなるような中でも、廃業ステップを踏んでいかないと、法人税などの納税義務が残りますし、必要な申告を行わないことで脱税などを指摘されるリスクもあります。
廃業届1枚で簡単に事業を畳める個人事業主とは違い、相当なエネルギーを必要とします。
そうしたリスクも踏まえ、後悔しないような法人化を考える必要がありそうです。
また、当然、新型コロナウィルスの影響によって、生存率が悪化しているかもしれないことも踏まえてください。
法人化で後悔しないためにコストを知っておこう
法人化による手続き、あるいは廃業のための手続きは個人事業主と比べてかなり大変です。
後悔しないために、法人設立登記の前に法人化に伴う具体的なコストを知っておきましょう。
法人化のための設立コスト
会社設立、法人化を行うためには金銭的なコストがかかります。
実際に必ずかかる費用が以下になり、これに加えて、専門家に手続き代行やコンサルティングを依頼した場合、10万円単位での出費となります。
やはり、開業届を出せばOKの個人事業主とは違います。
株式会社 | 合同会社 | |
---|---|---|
定款印紙代 | 紙の定款:4万円電子定款:0円 | 紙の定款:4万円電子定款:0円 |
定款認証代 | 5万円 | 0円(認証手続きそのものが認証不要) |
謄本代 | 2,000円 | なし |
登録免許税 | 最低15万円 | 最低6万円 |
資本金 | 最低1円 | 最低1円 |
合計 | 最低20万2千円+資本金 | 最低6万円+資本金 |
金銭的なコストだけではなく、定款作成や定款認証、法人登記の諸手続きについて専門知識が必要になります。
専門家に依頼すればその部分は丸投げできますが、その分専門家報酬が増えます。
しかし、自分で行おうとすれば、知識を身につける時間と労力がかかります。
設立の労力と金銭コストはトレードオフの関係になり、楽をしようとするとお金がかかります。
しかも、自分でがんばって手続してもそれがそのまま審査に通る保証はありません。
法的手続きは、かなりの知識や技術が必要になり、再提出、やり直しになれば法人化までのスケジュールが崩壊してしまいます。
法人維持のための専門家報酬
法人化後、99%の会社が顧問税理士と契約すると言われています。
法人の会計処理や税務処理は、個人事業主のそれよりもかなり難しく、自分たちで行おうとすると相当な時間を取られます。
また、税務調査が来た場合(個人事業主よりも法人の方が3倍来るというデータ(※)もあり)、税務調査官の監査に耐えうる決算書や説明をできる人は少ないでしょう。
税理士が処理を作り、確定申告をして、税務調査の際には同席する、これが法人経営を行う上では不可欠になり恒常的に税理士(ないし公認会計士)と顧問契約を結ばないとそれに対抗できません。
※税務調査に来る確率(税務調査率)は法人約3%、個人約1%
それ以外にも、会社の規模を大きくして、就業規則の策定対象となれば、社会保険労務士との付き合いも必要になります。
社会保険、雇用保険など恒常的な費用の発生
個人事業主の場合、従業員が5人未満であれば社会保険は加入しなくてもよいのですが、法人化すると、代表取締役1人会社でも社会保険に強制加入となります。
社会保険労務士との接点を持たざるを得ないのももちろんですが、会社負担で社会保険料を折半しなくてはならなくなります。
ひょっとすると個人事業主のまま、国民年金、国民健康保険を支払い、iDeCoや小規模企業共済などで足りない部分を補った方が節約できるかもしれません。
- 個人事業主の場合:社会保険料は個人で支払う
- 法人化した場合:社会保険料は法人と個人で折半
最近はフリーランスの人が加入できる職域の健康保険なども増えてきたので、(例:フリーライターが加入できる文化美術国民健康保険)、市区町村の国民健康保険に加入せず、かつ法人化して社会保険に加入もしない、しかも健康保険料を抑えられる道も生まれています。
社会保険料は法人の財政を悪化させる要因にもなるので、そのコストについてしっかり考えてください。
会計のコスト、事務のコスト
個人事業主の場合は青色申告の届出は任意であり、単式簿記さえしていれば、現金出納帳や預金出納帳、総勘定元帳などは必須ではありません(もちろん、それらを作成し青色申告した方が得です)。
しかし、法人の場合は、これらの帳票は必須であり、しかも複雑になるので、個人事業主向け会計ソフトでは無理な部分が出てきます。
やはり、専門家(税理士等)に年単位で顧問契約をすることが不可欠で、会計にかかわるコストも大きくなります。
それ以外にも、毎年開催する定時株主総会の準備や取締役会などの準備も必要になります。
気ままにできる個人事業主とは違い、会社組織として決められたことを行わなければなりません。
法人を畳む廃業コスト
上述のように、法人を畳む場合、廃業にあたり、株式総会、廃業登記の手続き、公示などいくつものステップを踏まなければなりません。
精神的にも肉体的もきつく、また法的手続きになるので費用もかかります。
廃業にかかる費用は
各種登記費用 | 41,000円 |
証明書の取得費用 | 1,294~1,534円+郵券代 |
設備処分費用、店を畳む諸経費 | 数万円~ |
物件の原状回復費用(借りている場合) | 数十万円~ |
専門家(司法書士等)への報酬 | 数十万円 |
合計で100万円を超える可能性もあります。
経営状態が悪くて廃業せざるを得ない場合、このお金は痛すぎます。
開業以上に廃業についても費用面で考えておかなければなりません。
廃業時に費用面でも後悔してしまうのはとても悲しいことです。
法人化がよいか個人事業主がよいか自分だけで判断しない!
このように法人化をすると、なかなか後戻りできないことになります。
後悔しないために、事前にしっかり疑問点を整理して、解決しておくことが必要です。
とはいえ、ネットや本の情報だけでは、疑問点が解消されないおそれがあります。
一度、法人設立登記をすれば、データベースに登録され、全国の第三者に設立した会社の情報が公開されます。
対外的な信用度もこれで段違いに高くなりますが、逆に、事務所の住所や事業内容なども閲覧されるため、悪質商法や詐欺ビジネス等からの営業がかかるなどのリスクもあります。
廃業して抹消登記をしないと、第三者から閲覧できるのに、営業実態がないという困ったことになります。
法人化しても利益が上がらなければ、税理士等の固定費ばかりがかかり、個人事業主のままで行くべきだと後悔することになります。
自社の事業計画を的確に客観的に俯瞰し、法人化する場合は株式会社と合同会社どちらがよいのか、それとも個人事業主として当面やっていくべきなのか、経験豊かな専門家の指示を仰ぐ場面が出てきます。
アドバイスを聞くことで後悔しない法人化を実現します。
後悔しないために税理士専門家集団のアドバイスを積極的に聞いてみよう
法人化の可否や後悔しない会社設立を聞く専門家は、司法書士や行政書士、弁護士ではなく税理士がおすすめです。前者の場合、制度には詳しいですが、経営の実務を知りません。
税理士ならば、経営そのもののプロフェッショナルであり、税務、会計等法人化後に求められるスキルを網羅しています。
「経営サポートプラスアルファ」はそうした会社設立、法人化を得意としている税理士集団です。
後悔しない法人化のため、事前にしっかりとお話を伺い、納得をしていただいたうえで法人化の代行まで行います。
会社設立後は、経営について税務、財務面からも適切なアドバイスを行い、資金繰り相談にも乗り、後悔ではなく、法人化してよかったという会社設立を応援いたします。
経営サポートプラスアルファは24時間、土日祝日も対応します。
LINEやZoomで遠隔地の方も対応します。ご安心ください。
法人化を無理にすすめることはなく、適切な開業をアドバイスさせていただきます。
「法人化して後悔した」ということはないように最大限お手伝いさせていただきます。
ぜひご相談ください。